臨床診断に役立つモバイル活用事例—ziostation2による緊急時の画像配信ソリューションを救急医療に活用 石川県立中央病院 放射線診断科

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ziostation2を用いた肝臓解析

肝腫瘍における肝切除術前の検査は、動脈・門脈・肝静脈および胆管の詳細な解剖、さらに腫瘍との関係を把握するうえで重要であり、主にMDCTを用いた3DCTが行われている。最近では、腹腔鏡補助下の手術や、重度肝硬変症例における亜区域切除など高度な技術を要する術式も積極的に行われており、術前にできるだけ詳細かつ正確な情報の取得が求められている。MDCTの発展もさることながら、画像解析に欠かせないワークステーションもまた進化の一途をたどり、2011年2月にはziostation2のアプリケーションとして肝臓に特化した解析ソフトがリリースされた。本稿ではziostation2による肝臓解析について、当院における肝臓の撮影法と合わせて紹介する。

s 札幌医科大学病院におけるziostation2の構成

当院では、ziostation2の肝臓解析の新しいアプリケーションが2011年2月に導入され、5月にバージョンアップされた。当院では、CT装置は3台(Lightspeed VCT vision:GEヘルスケア、Aquilion ONE、Aquilion 64 CX:以上東芝メディカルシステムズ)が設置されているが、ziostation2はネットワーク型ワークステーションを、CT検査室に3台、MR検査室に2台、画像処理室に7台(2011年3月号参照)設置し、さまざまな検査に対応できるように構成されている。

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s 肝切除術前におけるMDCTの撮影法

MDCTによる肝臓の撮影時相は、数種類に分けられ、肝切除術前における撮影法は通常の肝スクリーニング検査とは大きく異なる。動脈後期相は撮影せず、動脈早期相を撮影する。また、門脈優位相を、門脈相・肝静脈相の2つに分け、最も門脈のCT値が高いフェーズと最も肝静脈が優位に濃染されるフェーズにて撮影し、最後に平衡相を撮影する(図1)。使用造影剤はヨード量を600mgI/kgとし30秒間で注入後、生理食塩水を30ml後押しする。呼吸停止は呼気停止とし、撮影開始前に数回の息止め練習を行う。撮影タイミングはボーラストラッキング法を用いている(表1)。さらに、別の日にDIC-CTを行い、合わせて3D画像を作成する。

図1  肝腫瘍術前精査の撮影法 術前精査は黒字で示した4フェーズ、肝スクリーニング検査は動脈後期相、門脈優位相、平衡相の3フェーズにて行っている。
図1 肝腫瘍術前精査の撮影法
術前精査は黒字で示した4フェーズ、肝スクリーニング検査は動脈後期相、門脈優位相、平衡相の3フェーズにて行っている。

表1 肝切除術前MDCTの撮像条件
表1 肝切除術前MDCTの撮像条件

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s ziostation2の肝臓解析ソフトを用いた3D画像作成

ziostation2では、最大4フェーズを同時に3Dに構築することが可能で、当院では、主に最も3D画像作成に必要な動脈早期相、門脈相、肝静脈相、DIC-CTを用いている。肝臓解析ソフトを立ち上げると、右側に肝臓抽出、門脈抽出、肝臓分割、マスク作成、測定・表示の項目が並び、肝臓分割はさらに2分割モードと8分割モードに、マスク作成は動脈・静脈・下大静脈、胆管、腫瘍に分かれている(図2)。

図2 肝臓解析の初期画面
図2 肝臓解析の初期画面

1.肝臓抽出
まず、一番上の肝臓抽出であるが、『自動抽出』をワンクリックすることで門脈相の画像をベースに肝臓を自動的に抽出する。自動抽出は、最低2相のデータが必要(最初に動脈相・門脈相と定義づけた画像)であり、 3相の場合は3相目の画像も解析して適正に肝臓を抽出する。抽出精度は他のソフトウェアと比べても満足できるレベルにある。完全に抽出されない場合は、画面左側にマスク表示された断面をもとにさらに補正する。さまざまなツールを使用して余分な箇所を削る作業や、足りない箇所を追加する。血管や腫瘍は、最後にボリューム減算するため、周囲に付着している他の臓器などを適切に削除する。この作業は血管などを作成した後にもできるため、他の作業を行ってからでもかまわない。最終的に、血管や腫瘍をすべて減じた状態を有効肝実質としてマスク登録すると、画面左下の体積に登録される。

2.門脈抽出
門脈抽出では、Auto Portalボタンがあり、ワンクリックで門脈を自動抽出することができる。補正が必要な場合は、門脈用エクステンダーで血管を追加させることが容易にできる。門脈抽出が完成したら門脈本幹を指定する。

3.その他のマスク作成
動脈、肝静脈、下大静脈、胆管、腫瘍は、このパートで作成する(図3)。ziostation2では自分専用のパレットを作成することができる。よく使用するツールやプリセットなどをパレットに登録することで、これらの補正処理などを効率良く行うことが可能となった。筆者も、色やオパシティカーブはカスタマイズし、各種ボタンもパレットに登録することで潤滑に処理できるよう工夫している。

図3 各種マスクの作成 動脈、門脈、肝静脈、腫瘍、下大静脈、胆管を別々に作成する。
図3 各種マスクの作成
動脈、門脈、肝静脈、腫瘍、下大静脈、胆管を別々に作成する。

4.肝臓分割
肝臓分割は、2分割モードと8分割モードがある。2分割モードは切除肝と残肝に分けるモード、8分割モードは複数のセグメントと残肝に分けるモードで、最大7セグメントと残肝に分けることができる。領域抽出は抽出目的の門脈の血管をクリックしていくだけで、自動分割ボタンによりコンピュータが自動的に領域を抽出する。抽出目的の門脈は、3D上でも原画上(Axial、Coronal、Sagittal)でも選択することができる。解析結果は画面左下のテーブルに表示される。3D上に色分けされた領域と同一色で、原画像もマスク像として色分けされる(図4)。

図4 肝臓分割モード a:2分割モード、b:8分割モード、c:8分割モードにおけるマスク画像、d:解析結果表示
図4 肝臓分割モード
a:2分割モード、b:8分割モード、c:8分割モードにおけるマスク画像、d:解析結果表示

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s 手術支援に役立つ3D画像の組み合わせ

作成した3D画像をどのように組み合わせ、提出用の画像を作成するかが重要である。外科的手術では、腫瘍が含まれた領域を支配している門脈、またその区域の境界を走行する肝静脈が最も重要な血管である。また、肝門部における動脈・門脈・胆管の走行形体は何種類もあるため、これらをフュージョンした画像を作成することが望ましい(図5)。ziostation2ではこのようなフュージョン画像作成機能が優れているので、3D画像作成はこのプロトコル(ソフト)だけで完結することができる。3Dは、さまざまな角度から画像を観察するため、水平回転と垂直回転の2方向の画像を作成する。門脈・肝静脈を主体とした画像は、肝臓の表面が確認できるように肝実質を半透明にしている(図6)。また、門脈のみと肝静脈のみの画像も作成している。最後に肝臓のボリューム計測画像と、そのマスク画像(Axial)を作成する(図7)。肝臓は、門脈・肝静脈・腫瘍を除外した肝実質を有効肝とし、ボリューム計測値を表示し提出している。

図5  フュージョン画像(動脈・門脈・胆管・肝実質、腫瘍) 肝門部の情報は手術時重要となる。
図5 フュージョン画像(動脈・門脈・胆管・肝実質、腫瘍)
肝門部の情報は手術時重要となる。
図6  フュージョン画像(門脈・肝静脈・肝実質・腫瘍) a:正面から見た画像、b:足側から見た画像 術前検査では門脈・肝静脈の走行が最も重要な情報となる。実際は360℃回転した画像をそれぞれ作成する
図6 フュージョン画像(門脈・肝静脈・肝実質・腫瘍)
a:正面から見た画像、b:足側から見た画像
術前検査では門脈・肝静脈の走行が最も重要な情報となる。実際は360℃回転した画像をそれぞれ作成する。
図7 肝臓ボリューム計測画像(a)とマスク画像(b)
図7 肝臓ボリューム計測画像(a)とマスク画像(b)
 

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s まとめ

近年、肝切除術も進化を遂げ、腹腔鏡補助下や完全腹腔鏡下の切除術も頻繁に行われるようになった。狭い視野にて高度な技術を要する術式を選択していく中で、3DCTによる事前情報の取得がますます重要視されている。肝臓領域抽出ソフトウェアの利点は、グリソンを元に領域抽出を自動で行ってくれることである。これは肝臓シミュレーションには不可欠であり、マニュアル作業で置き換えるのは不可能に近い。高度なシミュレーションが可能になってきた現在、肝臓ボリューム計測においてもその精度の向上が求められる時代になるだろう。失われる肝実質の体積が相対的な割合で計算されているうちは、全体の計測誤差はさほど問題とはならない。しかし、肝臓のボリュームを絶対量で評価する場合、正確性が必要となってくると思われる。この肝臓解析ソフトもユーザーの使用経験を生かし、さまざまな要望に応えるべく今後もさらなる開発が進められることを期待している。

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(インナービジョン2011年7月号掲載)

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