放射線部と診療科が協力して理想の3D画像の提供方法を求めた北海道初の3Dラボーziostation2が担う3D処理の中核業務 札幌医科大学附属病院 放射線部

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放射線部と診療科が協力して理想の3D画像の提供方法を求めた北海道初の3Dラボ

  平野 透 主査
平野 透 主査
熊谷亜希子 技師
熊谷亜希子 技師
本間修一 技師
本間修一 技師

札幌医科大学附属病院では2008年、放射線部内に、院内からの三次元画像作成のオーダに対応する“3Dラボ”を立ち上げた。3D画像処理に組織をあげて集中的に対応し、精度の高い3D画像を診療科に提供するほか、北海道における画像処理のトレーニングや教育、情報提供の拠点となっている。この3Dラボにおける画像処理の中核を担っているのが、ザイオソフトの3D医用画像処理ワークステーション「ziostation2」である。 診療科からの3D画像処理の要求に高いレベルで対応する3Dラボの運用について、責任者である平野 透主査と、“ラボ長”を務める熊谷亜希子技師、本間修一技師にziostation2の役割を中心に取材した。

s 3D画像処理に特化した“3Dラボ”で、診療科からの依頼に対応

表 年間の画像処理件数(2010年) 札幌医科大学附属病院の3Dラボは、 2008年にスタートした。CTの3D画像処理を中心に対応し、放射線部の一角には、ザイオソフトのワークステーション(以下WS)4台(ziostation2が3台、ZIOSTATIONが 1台)を中心に、WS6台を導入した専用スペースが設けられている。3Dラボ立ち上げの時から携わってきた熊谷技師は、そのねらいを次のように説明する。
「診療科からの3D画像へのニーズが高まる中で、増え続ける依頼に対応するために、放射線部内の担当を超えて、組織全体で3D画像作成業務をバックアップするための組織、体制を構築しました。3D画像処理のみを扱う組織として、放射線部全体のパワーを集結して業務にあたると同時に、診療科とのカンファレンスや連携などを含めたオープンな環境で、若手スタッフなどの教育の場としても機能しています」
2010年の3D画像処理の件数はのとおりだが、循環器科、胸部外科、脳神経外科、消化器外科・内科からのオーダが多く、そのほとんどが手術前のシミュレーションが目的だという。胸部外科では大動脈瘤、脳神経外科では脳腫瘍や血管障害、消化器外科では肝がん、膵がん、胃がん、大腸がんなどで、術前の3D画像を作成している。平野主査は「実際の術野に合わせた3D画像を提供し、病巣と血管や腫瘍との関係を明確に表現することで、手術時間の短縮や安全性の向上に貢献しています。診療科からのオーダに最大限応えられる体制をとるために組織したのが3Dラボです」と語る。

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s 一般撮影のスタッフを中心に、組織をあげた画像処理体制を構築

3Dラボのスタッフは、普段は一般撮影を担当する診療放射線技師6名で、午前は一般撮影の検査業務を行い、検査が少なくなる午後にラボで3D作成にあたる。画像処理が必要な検査のうち、MPRや骨3Dなど比較的短時間で処理が可能なものはCT室のZIOSTATIONでCT係が行い、そのほかの複雑な処理や専門的な作業が必要な検査をラボが担当する。
3Dラボでは、画像処理の分野を“共通”と“専門”に分けており、共通分野は大動脈と下肢、専門分野は、頭頸部、心臓、胃・大腸の上腹部領域となっている。共通分野は初心者を含めて全員が担当し、専門分野は担当制としている。大動脈・下肢が共通分野となっているのは、依頼件数が多いことと、画像処理の入門には適した領域だからだと熊谷技師は語る。「大動脈・下肢の血管系の画像は、3D画像処理の核となるスキルを習得するのに最適です。こういったスタッフの教育を含めて、経験豊富なラボ長2名が中心となって、3D画像のオーダの振り分けや進行の管理を行い、ラボとして最適な3D画像が提供できるように運用しています」
3Dラボでは、各診療科からのオーダに対して、複数のスタッフが3D画像の作成に携わることから、完成した3D画像の仕上がりの統一を図るために、最終画像のマニュアルを作成している。マニュアルでは、各部位の3D画像について、骨の処理、画像の回転方向、彩色、背景処理から特定の血管の同定方法まで、細かい指示を決めている。
本間技師は、3D画像作成のポリシーについて、「ラボでの画像処理の原則は、作成する時に目的とする血管や腫瘍には手を加えないことです。3D作成での問題は、作成者の未熟さから血管や臓器を削除していまい、本来ある情報が失われてしまうことです。骨などの3D画像描出に必要でない部分を削除する処理だけを行い、そのほかには一切手を加えないことを徹底しています」と説明する。

3Dラボ
3Dラボ
CT室
CT室

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s 3Dラボの中核となるワークステーションにziostation2を採用

3Dラボの中核WSとなっているのがziostation2である。同院では、2000年に4列のマルチスライスCTと同時にザイオソフトのM900 QUADRAが導入されたのをきっかけとして、現在は、3Dラボ以外でCTに3台、MRIに3台のZIOSTATIONを導入し、3D画像用の一次サーバ(ZIO BASE)を導入した3Dネットワークを構築して運用している。平野主査は「ネットワークタイプのWSを検討した際に、スタンドアローン型と機能の差がなかったのが唯一、ZIOSTATIONでした。従来からのワークローを変えることなく、同じクオリティの情報がすべての端末で提供できることが、ZIOSTATIONを画像処理業務の核となるWSとして評価したひとつの要因です」と述べる。さらに、ZIOSTATIONでは、CT画像とMRI画像のフュージョンの際に任意の角度での画像作成が可能な点など、より高いレベルでの要求に応える技術力があったという。「複雑な処理を簡単に使えるツールとして、外科医が求める画像を、もっとも効率良く忠実に作成することができます」
2010年には、バージョンアップされたziostation2が導入された。ziostation2の使い勝手について熊谷技師は、「自動前処理機能によって、当院のマニュアルで指定した背景や骨除去などの条件で、ある程度の画像処理が事前に行えるようになりました。また、ユーザーのスキルの向上に伴って操作性に対する要求も高くなってきますが、ziostation2ではカスタムパレット機能によってユーザーの操作手順に合わせたカスタマイズが可能です。そのため、初心者から上級者まで変わらない操作性が実現できます」と語る。腹部を専門領域とする本間技師は、ziostation2の機能として、大腸解析のアプリケーションが改良され、2体位同時表示によって効率の良い作業が可能になったことを評価する。さらに、「自動骨除去と自動抽出の精度が大きく向上したことで、精度の高い画像をより早く臨床側に提供できるようになりました」と語る。
3Dラボのもうひとつの特色は、診療科とのコミュニケーションを積極的に行っていることだ。2008年から、脳神経外科とは3D画像の作成だけに絞った“3DCTカンファレンス”を月1回行っているほか、胸部外科、消化器外科の通常のカンファレンスには、画像処理に携わっているスタッフが積極的に参加している。本間技師は、「カンファレンスに参加することで、診療科が本当に必要としている画像は何かを理解して、それに応える画像作成に力を入れることができます。レベルが上がれば上がるほど、3D画像に要求される条件も厳しくなりますので、臨床医の意見を聞くことは、独りよがりにならずに的確な画像を作成するために重要なことだと実感しています」と語る。
3DCTカンファレンスでは、作成した3D画像について脳神経外科医と、実際の手術と同じだったか、役に立った画像はどれか、画像の色使いはどうか、といった評価やディスカッションが行われている。熊谷技師は、「3Dラボの持つ高い技術を本当に生かすには、依頼科とのコミュニケーションが重要です。スタッフには向学心を持ってカンファレンスに参加してもらっています」と言う。
さらに、2011年の春からは、対象を道内の医療機関に広げた“3DCTカンファレンス”を立ち上げて、より多くの脳神経外科医や診療放射線技師に向けて、最適な3D画像作成のための技術や情報を共有する取り組みをスタートさせている。

■3Dラボで作成し、提供された三次元画像症例

症例1 マルチデータフュージョンを生かした下垂体腫瘍における術前シミュレーション画像 (赤:動脈、青:静脈、緑:腫瘍、黄:視神経と動眼神経、オレンジ:正常下垂体)。CT(plain&3D-CTA)とMRI(FIESTA&SPGR)の合計4つのデータをフュージョンすることで、腫瘍により圧迫された視神経や正常下垂体を立体的に把握できる。
症例1 マルチデータフュージョンを生かした下垂体腫瘍における術前シミュレーション画像 (赤:動脈、青:静脈、緑:腫瘍、黄:視神経と動眼神経、オレンジ:正常下垂体)。CT(plain&3D-CTA)とMRI(FIESTA&SPGR)の合計4つのデータをフュージョンすることで、腫瘍により圧迫された視神経や正常下垂体を立体的に把握できる。

症例2 S状結腸がん術前の大腸3D-CT画像(赤:動脈、青:静脈、紫:腫瘍、緑:リンパ節、半透明:大腸)である。血管(3D-CTA)と大腸(Air3D-CT)をフュージョンした。腹腔鏡補助下S状結腸切除術+D3郭清の術前シミュレーションに役立った。
症例2 S状結腸がん術前の大腸3D-CT画像(赤:動脈、青:静脈、紫:腫瘍、緑:リンパ節、半透明:大腸)である。血管(3D-CTA)と大腸(Air3D-CT)をフュージョンした。腹腔鏡補助下S状結腸切除術+D3郭清の術前シミュレーションに役立った。

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s 北海道のザイオユーザーの拠点としてレベルアップを図る

平野主査は、同院の3Dラボが、北海道における3D画像作成の教育・普及の拠点となることをめざしているという。
「3Dラボの充実した設備や大学病院の豊富な症例を生かしてセミナーやトレーニングなどを行って、近隣や北海道内の施設に対しての情報共有や教育の場としての役割を担っていきたいと考えています。多くの施設に参加していただいて、地域全体として診療技術の向上に貢献していければいいですね」
3月からは、3台のCTが64列2台とAquilion ONEという体制にバージョンアップされることから、3Dラボの役割はますます大きくなっていくだろう。

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(インナービジョン2011年3月号掲載)

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