ホーム AZE 別冊付録 Virtual Human & Analysis No.12座談会 近未来予測: 画像診断ワークステーションの行方
DISCUSSION
近未来予測:画像診断ワークステーションの行方—激増する医用画像データの管理・活用の戦略とは—
似鳥 俊明 氏(杏林大学医学部放射線医学講座教授)
大友 邦 氏(東京大学大学院医学系研究科放射線医学講座教授)
陣崎 雅弘 氏(慶應義塾大学医学部放射線診断科准教授)
CTやMRIをはじめとするモダリティの技術革新は,医療の進歩に大きく貢献し,研究,診断,治療のさまざまな場面で多くの恩恵をもたらしている。さらに近年,医用画像処理ワークステーション(WS)も飛躍的な進歩を遂げ,いまや画像処理・解析にとどまらず,診断・治療も含めた幅広い場面で有用性を発揮している。一方,モダリティから発生し,増加の一途をたどっている膨大なボリュームデータについては,臨床現場でいかに管理・運用するかということについてのコンセンサスは得られておらず,各医療機関がそれぞれ独自に模索を続けているのが現状である。医用画像データを取り巻く多くの課題の解決に向け,WSの役割や進むべき方向性が問われていると言える。そこで今回,画像診断のエキスパートである3名の先生方に,画像医学の現状と課題を浮き彫りにした上で,これからの画像診断WSのあり方について展望していただいた。
RSNA 2010から読み解く診断技術の方向性ーCT,MRI,WSを中心に
● MRIは3Tの時代へ
(司会)2010年11月に行われた北米放射線学会(RSNA 2010)では,新しい知見や技術が多数発表されました。そこで,まずはMRIの最新技術や開発の方向性について,先生方の見解をお聞かせください。
似鳥:MRIに関する話題は,最近では完全に,1.5Tから3Tへと全体の流れが移ってきました。3T MRIは物理学上の制約が強く,特に躯幹部で画像の歪みが生じるなどの理由から,なかなか1.5T MRIを凌駕するには至りませんでした。しかし,ここへ来ていくつかの解決策が開発されたことで,各社ともに第二世代の3T MRIを発表しています。
具体的には,約2年前にフィリップスが,RF磁場を均一に保つ新技術である“MultiTransmit”を発表し,それが実用化されたことで,画像の歪みの改善や3T特有のSARの低減が図られ,フリップ角を大きくすることも可能になって,さまざまなシーケンスに応用できるようになりました。ごく最近,東芝が開発した国産初の3Tでは,2チャンネル4ポートという最高のスペックを有しており話題となっています。また,最近のMRIの開発動向を見ると,新製品はいずれも,ガントリ開口径が70cm強のラージボアの製品が発表されています。これには多くのメリットがあり,例えば,手や足をまっすぐに伸ばせない患者さんや,救急患者の撮像なども可能になると考えられます。
そのほかにも,各社がそれぞれ新技術を発表していますが,フィリップスは新たに,SNRが約40%向上するというアナログ/デジタル変換技術を発表しており,いよいよMRIの開発は新しい段階に進みつつあると感じています。
一方,PETとMRIをフュージョンした装置も大きな話題となりましたが,それについては大友先生はどのようにお考えですか。
大友:シーメンスがwhole-bodyのMR-PETを発表しましたが,その技術力の高さには感心しています。ただ,臨床的な観点から見ると,PET/CTに対してどれだけのアドバンテージがあるかを考えた場合,トレーサーがFDGではMR-PETがあまり生きないと思います。FDGは,すでにPET/CTで十分な成果が得られますので,特にニューロなどで新しい特異的なトレーサーの登場が待たれます。
陣崎:シーメンスの装置は,PETとMRIのデータが同時収集できるというのがすごいですね。CTでの情報量が少ない骨盤領域や骨軟部領域などでも有用かもしれません。
また,先ほど似鳥先生がおっしゃった,フィリップスが発表したADコンバーター(アナログ/デジタル変換器)をコイル内に統合して,コイルからデジタル信号をダイレクトに送信する技術(dStream技術)もすばらしいですね。アナログケーブルで送信する際の信号の減衰がなくなって,SNRが向上すれば,画質も大幅に向上します。
似鳥:ただ,困ったことに,3T MRIのSNRの高い,ノイズの少ないデータをthin sliceで再構成すると,例えば頭部の長期のフォローアップの際に,1.5Tでは見えなかった転移がたくさん見えてくることがあります。しかし,次にまた1.5Tで撮像すると,今度はそれが消えてしまっている。何台かの装置の内の一部が3Tの場合,装置を選ぶことになってしまうので,それは現実的な課題です。
(司会)今後,3Tのシェアはどのように推移していくとお考えですか。
似鳥:装置自体もコンパクトになっていますし,価格がもっと安くなれば,どんどん3Tに移行していくと思います。もし今後,保険点数が現状の1.5Tから3Tの磁場強度で差別化されるようになれば,3Tへの移行は加速するのではないでしょうか。
陣崎:仮に,3Tが標準になった場合に,1.5Tでは何をするのかという問題がありますが,腹水のある患者さんなど,3Tの弱点となる症例に使用することになるのでしょうか。
似鳥:いえ,すでにその問題は解決していると思います。腹水症例や腎嚢胞がたくさんある症例は,3Tでは以前は歪みが出ていましたが,最近はあまり問題ないようです。
● 被ばく低減技術の進歩が著しいCT
(司会)CTについては,特に米国では被ばくの問題がかなりシビアになっていますが,一方で,被ばく低減技術がかなり進んでいるようですね。
陣崎:CTは,多列化競争の時代から被ばく低減の時代へと大きく移行しています。RSNA 2008では,GEが最初に逐次近似法を応用した被ばく低減技術を発表しましたが,RSNA 2010では,それが各社から出そろいました。メーカーによっては,より被ばく低減が図れる新しい逐次近似法を発表しており,例えばGEのVeoの場合,従来の約80%の被ばく低減が可能になるだろうということです。これは,被ばくが制約となるCTの問題が,1〜2年で消えてしまうかもしれないほどの大変革です。
また,こうした技術の登場は,単に被ばく低減という事実を超えて,CTの適応そのものを広げていく可能性もあります。例えば,肺の低線量撮影が可能になり,また,何相もの撮影が必要だったCTパーフュージョンが,従来と同じ線量で撮れる可能性が出てきますので,形態にプラスして機能的な情報を得る方向に大きく進んでいくかもしれません。
(司会)米国食品医薬品局(FDA)は,CTによる過剰照射を問題視し,自然放射線レベルの被ばく線量を目標に掲げたと聞いていますが,それは実現可能なのでしょうか。
陣崎:自然放射線による1年間の被ばく線量の平均値は2.4mSvですが,例えば現在,腹部を1相撮影した場合の被ばく線量は10mSvを切っています。もしこれを,最新の被ばく低減技術を用いて撮影すれば,理論的には1/5の約2mSvになります。心臓CTでも,Step and Shoot法を用いれば2mSv程度で撮影可能になると各社とも言っていますので,将来的には可能なのではないでしょうか。
(司会)CTのもうひとつのトピックスであるdual energy imagingについては,どのような状況でしょうか。
陣崎:今回のRSNAでも発表しましたが,dual energy imagingのアルゴリズムには,2つの異なるエネルギーによるmaterial decompositionという石灰化などの物質を弁別する技術と,monochromatic imagingという単色X線画像を作る技術があります。monochromatic imagingは,同じ線量で撮影した120kVの画像よりも,コントラスト/ノイズ比(CNR)が向上するので,造影剤量が減らせる可能性もあります。また,理論的には120kVでの撮影を置換できるかもしれないという高いポテンシャルがあります。将来的には,dual energy imagingは特殊検査ではなく,標準検査になるかもしれません。
ただし,実際にdual energy imagingが普及するためには,すべてのCTが対応している必要があります。dual energy imagingによってもたらされる情報は非常に多いので,CTの開発が進むべき方向だと考えています。
大友:dual energy imagingで腎結石を鑑別するとか,石灰化とヨードを分離するという話はあまりインパクトがないと思っていたのですが,monochromatic imagingで全体の底上げが図れるということになれば,普及するかもしれませんね。
● 自動化,高速化が進むWS
(司会)モダリティの進歩と切り離せないのが画像処理および解析ですが,WSの最新動向についてはどのようにとらえていらっしゃいますか。
陣崎:WSの方向性は,さらなる高速化と,ボタンを押せば心臓などでも1〜2分で解析が終了するといった自動化の進歩が望まれていると思います。診療放射線技師の負担を軽くするということにもつながりますし。
篠原(AZE):今年の国際医用画像総合展(ITEM 2011)では,当社の心臓解析ソフトウェアは,データ転送速度をさらに高速化し,バックグラウンドでの自動処理後に,ストレッチCPR像やVR像が表示されるまでの間,オブリーク画面を見ていることができる製品を発表する予定です。先生方のストレス軽減と高速化の両面からアプローチしています。
(司会)各社とも非常に高速化していますが,当社の場合,秒間100枚の転送を実現しています。通常は20〜30枚ですので,かなりの高速化となっています。また,画像処理速度も現在,当社比で約10倍にまで高速化しています。
陣崎:先日行われた日本心血管動態画像学会では,あるメーカーが形態認識機能を用いて,例えばステントを認識するなど,特定の構造を自動的に抜き出すという技術を発表していました。過去画像との比較の際に,どこが変化したか,また,その変化率がWSで認識できるようになればとても便利ですが,そうした開発はいかがでしょうか。
(司会)当社をはじめ,他のWSメーカーも同様の機能をすでに実装しています。われわれはアトラス法と呼んでいますが,もともとは,画像同士をフュージョンするために開発しました。当社では,変化率についても,肝臓,肺,心臓をターゲットとして,どちらの方向にどれだけ動いたかをベクトル表示する機能を開発中です。変化率の解析精度についての評価はこれからですが,ITEM 2011で発表する予定です。
増え続ける医用画像データと臨床現場での管理・運用の現状
ー データクライシスの解決策とは
(司会)CTやMRIなどモダリティの進歩に伴って画像のデータ量は膨大になっています。WSですら,TBレベルのHDが必要になっているのが現状です。このようなデータクライシスとも言える状況下で,WSメーカー各社はこれまで,画像処理および転送速度をより高速化する方向で開発を進めてきましたが,実際の臨床現場では,どのようなWSが求められているのかということについて,お考えをお聞かせください。
大友:これはとても難しい問題です。技術の進歩によって,以前は何分もかけて1枚の画像を撮影していたのが,いまでは1秒間に1000枚もの画像が発生するようになりました。しかし,人間の能力は短時間では変わりませんから,当然,実は見ていないデータというのが膨大にあります。例えば肝臓がんなら,肝臓以外のどこに転移する頻度が高いかを考えて読影する範囲を判断していますが,それ以外の見ていない範囲に何かあれば見逃す可能性もあります。
また,医療情報の世界でも,激増する画像データの問題はかなり深刻にとらえられています。例えば,他院からの紹介患者さんは,その気になれば過去10年分の画像データを持ってくることができます。そして,もし,受け入れ側の施設がそのデータをすべてサーバに取り込むと,誰も見ていない画像が膨大に生じてしまうというような問題が考えられます。
これらの問題に対しては,技術的に解決すべきことと,社会全体の法律も含めて解決すべきことの,2つに分けて考える必要があります。つまり,見落としたら必ず責任は生じるけれども,主となる病変と予期しない病変については切り分けて考えるべきだという,社会全体のコンセンサスが大切だということです。一方で,WSなどの技術を用いて,予期せぬ病巣をいかに指摘するかという方向での可能性もあり,その2つの流れが必要であると考えています。
似鳥:もう1つ,踏まえておくべきことがあります。実際の臨床現場では,CTやMRIから発生した生データを元に,画像再構成エンジンを用いてthin sliceやthick sliceを作り,thin sliceをすべてWSに転送しますが,読影医はthick sliceで読影するのが一般的です。
そこで問題になるのは,他科の医師がthin sliceを使って自分たちで三次元再構成し,手術のシミュレーションやモニタリングに使用したいという要望が,これからどんどん増えていくということです。そうなったときに,読影医の方はthin sliceをまったく見ないでレポートを書いていますので,後でトラブルの元になるのではないかと危惧しています。thin sliceをあまりにもたくさん保存していることの是非については,早めに考えた方がいいと思います。
陣崎:当院での画像データの運用はまったく逆で,PACSにはthin sliceを転送し,thin sliceで読影しています。そして,他科に送るのはthick sliceと三次元再構成画像だけですが,自分たちで三次元再構成をしたいという場合には,データをCDで渡しています。thin sliceで読影できれば病変検出能の向上につながりますし,MPRで読影できますので,マルチスライスCTのメリットを生かすには,この方法が一番良いと思っています。そこで当院では,PACSを導入するときに,サーバのデータ容量のシェアの6割をCTに割り当てました。
いずれにしても,何を読影するかという観点で考えたときに,私はやはり,thin sliceで読影した方がいいように思います。ただ,先ほどの大友先生のお話にもありましたが,見落としがあった場合には訴訟のリスクを負いますので,読影医の負担は大きくなります。つまり,マンパワーがないとマルチスライスCTは維持できませんので,実際に当院では,CTに割く人員が明らかに増えています。
(司会)こうした問題への対策として重要なのは,広範囲の膨大なデータの中からいかにして病変を拾い上げるかということだと思います。そこで当社では,ある標準的なデータを用意して,CT値や形状が違うところにフラッグを立てる,あるいは色を変えるといった方法で,何か印をつけてみたらどうかと考えていますが,そういう機能についてはどのようにお考えでしょうか。
大友:問題は,誰も注目していないような死角をどうなくすかということで,それをわかるようにすることは,ひとつの方向性として必要です。ただ,フラッグがあまりに多くて確認作業で疲れてしまったということになると逆に困ります。
(司会)例えば,同じ患者さんを経時的に見ていって,変化したところを指摘するというのはいかがでしょうか。
似鳥:見る範囲の広い肺野領域では,非常に役立ちそうです。単純X線写真については,Fuji Film Medical社が経時的差分法(Temporal Subtraction)の技術を製品化しており,当院では検診のために導入しましたが,とても楽ですね。
大友:少なくとも,悪性腫瘍のある患者さんでは,肺と脊椎は必ず見なければなりません。転移の頻度が高いがんや,その転移が患者さんのQOLに大きな影響を及ぼすような病変の見落とし防止にフォーカスが絞られている機能なら,非常に助かると思います。
(司会)WSの使い勝手についてはいかがでしょうか。
似鳥:WSにしてもPACSにしても,いかに合理的に効果的に速くデータを配信するかというコンセンサスで作られていますが,すべて一方通行ですね。そのため,スタッフ同士のコミュニケーションが不足することが,最近の医療界では非常に大きな問題になっています。技師にしても,画像データを送っておしまいという感じで,読影医からの反応や意見がフィードバックされる機会がほとんどありません。ですから私は,これを絶対に双方向の動きにしてもらいたいと考えています。
遠隔画像診断におけるWSベンダーの役割
(司会)遠隔読影診断についても,もう一度考えなければならない時期に来ているように思います。ITとネットワークに関係するすべての分野で進行する変化に,どのように対応していくのかが問われる分岐点に差し掛かっていますので,われわれも,新しいシステム構築や運用環境の提案を行っていかなければならないと考えています。
そこで当社では,医用WSへのクラウドコンピューティング導入を試みています。ユーザ様はさまざまな場所のインターネットに接続されているコンピュータからクラウドサーバに接続するだけで,従来と同等の画像解析処理をご利用いただけます。このサービスを利用していただければ高価なハードウェアへ投資する必要がなく,少ないコストで高機能なWSの導入を実現できます。
似鳥:セキュリティの面で,データを不正使用する人がいたら問題です。ストレージだけにしても,不正使用によってデータが破損することも考えられますし,大勢がアクセスできるシステムというのは,思いもかけないことが起こるという可能性を,常に考慮していなければなりません。
阪本(AZE):おしゃるとおり,セキュリティやシステムの保全性について多くのユーザ様からご要望をいただきます。われわれも,設計段階からその点に重点を置き,セキュリティガイドラインに基づいて検討しています。
このシステムはインターネット上のコンピュータから画像解析,読影が行えるので,遠隔読影などを運用されているご施設にもご提案できると思います。
似鳥:遠隔画像診断が普及して最近問題になっているのは,誰が発信し,誰が読影しているのかがお互いにわかる相手に依頼したいということで,非常に根源的なところに問題点が戻ってきています。つまり,知らない人や,不特定多数の人には読影されたくないということです。
(司会)当社が考えている遠隔画像診断は,実を言うと,医局員が不足している大学病院から,医師が自宅でも読影できるようにしたいという要望があり,その解決をめざしたというのが開発の発端です。そういう意味では当然,顔の見える遠隔画像診断ということになると思います。
大友:顔の見える遠隔画像診断ということで成功しているモデルは,岡山画像診断センター,神戸画像診断支援センター,北陸画像診断支援センターなどがありますが,例えば神戸のモデルでは,常勤医を派遣しきれなくなった病院に対象を限定し,かつ,価格競争にも巻き込まれないようにするということで,それは良い方向性かと思います。また,そこにAZEのシステムが加わることで,単にレポートが行き交うだけでなく,画像処理まで行ってもらえるのであれば,熟練した技師がいなくても,常にきれいに再構成された3D画像が治療に生かせるというメリットもあります。
しかし,遠隔画像診断の最大の問題は,人手不足は絶対に解消しないということです。つまり,マンパワーが限られていれば,いままで病院で8時間読影していた医師が,自宅であと2時間読影することになるだけです。もちろん,潜在的な人材を掘り起こすことはできますが,それも限られています。
現在,日本ではCTとMRIで月間300万件の検査が行われていますが,そのうち100万件を常勤の放射線科医が,100万件を遠隔やアルバイトがそれぞれ読影し,残り100万件はレポートされていないという状況です。その残り100万件まで遠隔画像診断が担うことはできません。地域格差を埋めたり,資源の有効利用にある程度は役立ちますが,その伸びしろは非常に限られていると言わざるを得ません。
篠原(AZE):地域格差を埋めるという点について,もうひとつ当社が考えている新しい仕組みが“従量課金制”です。これは,基本的に当社のすべてのソフトウェアが使用可能で,かつ,使った分だけ費用をお支払いいただく仕組みです。
(司会)従来,WSは一度導入すると,古いソフトウェアを使用し続けるか,バージョンアップをするかという選択だったわけですが,この従量課金制を導入することで,常に新しいソフトウェアを使用し続けることができます。
大友:WSへの投資が,単に買い切りで発展性のないものではなくなるということですね。
似鳥:これだけ急激な進歩がある分野ですから,いい方法ではないでしょうか。
JRC 2011のトピックス
(司会)最後になりますが,今年のJRC 2011では,大友先生が第70回日本医学放射線学会総会会長を務められますので,見所と抱負をお聞かせください。
大友:学会発表は大きく臨床,教育,研究などに分けることができますが,研究は日常的な接点が少なく,非常にハードルが高いので,今回は演者を国内に絞り,基礎的な内容についてよりわかりやすいものとなるよう考慮しました。一方,臨床は,ワールドワイドに目標を高く持っていただきたいとの考えから,海外のエキスパートを招聘し,フィルムリーディングなどを行います。具体的には,Radiologyクイズで好成績を収めた方のうち,アメリカ,タイ,トルコからそれぞれ1名ずつ来ていただき,それを近畿大学医学部の下野太郎氏が迎え撃ちます。また,核医学のフィルムリーディングも企画しています。核医学は,特異性が低く読影が難しいので,アンサーパッド方式を採用し,会場にいる方にも回答に参加していただけるようにしました。このほか,放射線治療の先生方にももっとご参加いただけるよう,治療関連のシンポジウムも2題用意しています。
このJRCという仕組みは,日本医学放射線学会,日本放射線技術学会,日本医学物理学会と日本画像医療システム工業会(JIRA)の合同開催ですが,放射線医学全体が手を携えて発展していくという意味では,先輩方が非常によく考えて作られたシステムだと感じています。それを今回きちんと受け継ぎ,次の年へとつないでいきたいと考えています。
(司会)本日,先生方に画像診断の現状や課題を浮き彫りにしていただき,WSの開発の方向性についても多くのヒントをいただくことができました。最近では,PACSとWSのコラボレーションが重要となっています。当社WSの優れた機能をビューワで活用できるようにしていくことが,ますます重要になっていくと確信しています。今後もたくさんの声に積極的に耳を傾けながら,より優れた製品作りに取り組んでいきたいと思います。
(2011年1月24日,東京・丸の内AZE本社にて)