ホーム AZE 次世代の画像解析ソフトウェアAZE VirtualPlace Plusの当院における使用経験
【月刊インナービジョンより転載】
■AZE VirtualPlace Plusの当院における使用経験
水上 省一
がん・感染症センター 都立駒込病院放射線診療科
●はじめに
近年,MSCTの多列化により発生する膨大な画像を活用し,血管構造や内腔評価,病変と正常組織の位置関係をより詳細な情報として提供できる3Dワークステーションは必要不可欠な存在となった。
当院では,64列CT装置を導入して以降,心臓CT検査や,肝臓の術前シミュレーション用検査などの増加に伴った大量の3D画像処理が発生した。2011年4月より,「AZE VirtualPlace Plus」(AZE社製:以下,Plus)の導入をきっかけに,3D画像処理をPlusにて行うこととした。導入にあたり,クライアント/サーバ方式を採用したネットワークシステムを構築した。これは,肝臓の術前シミュレーション用画像の処理や確認を,主治医が病棟カンファレンス室でも行えるようにするためである。また,クライアントを数台用意することで,画像処理時に端末使用の待ち時間を発生させないことや,画像処理のトレーニングも行えることなども考慮した。
●画像処理について
1.心臓CT
当院では,64列CT装置の導入前は,心臓CT検査は他病院に依頼して行っていた。導入後は院内で検査を行っているが,画像処理時間に個人差が出てきている状況であった。しかし,今回導入したPlusの冠動脈解析における自動抽出機能を活用することにより,従来と比較して大幅な処理時間短縮や,個人差のない均一的な画像を作成することができ,良質な画像提供が実現されている。
また,クライアントを複数配備することにより,職員が各種画像処理のトレーニングにも活用し,スキルアップできる環境でもある。当院での画像処理はVR(volume rendering:図1),AGV(angiographic view:図2),CPR(curved multi-planar reconstruction) を基本としている。
図1 心臓VR像 |
図2 心臓AGV像 |
2.肝臓CT
当院はがん診療拠点病院であるため,肝臓の術前3Dシミュレーション画像も多く扱っている。Plus導入前には,DICOMデータを肝臓外科医が専用のソフトにて画像処理を行っていたが,そのために検査後,各時相のデータを処理しやすいようにDICOM化しなければならなかったため手間がかかっていた。しかし今回,クライアントを病棟カンファレンス室に配備することにより,検査後すぐに収集データをPlusに転送し,肝臓外科医が必要に応じて術前シミュレーション用に画像処理している(図3)。肝臓外科医は,Plusの3D画像解析アプリケーションを使用することにより,(1) 肝実質・脈管・病変の立体的な形態・位置関係を把握できる:肝内の脈管・病変の位置関係(図4),(2) 切除に際して露出が必要な脈管が把握できる:surgical marginの確保,(3) 切除予定容積(切除予定グリソンの支配領域)がわかる:残肝機能の温存などの事前情報を得ることができるようになった。
そのほかにも,頭頸部(図5),胸腹部(図6)のCTAや,整形領域での骨3D画像にも積極的に活用している。
図3 肝臓全体像 |
図4 腫瘍と脈管構造 |
図5 頸部CTA像 |
図6 腹部CTA像 |
●まとめ
CT,MRI,PETなど放射線診断装置の臨床診断における画像数や処理は,今後も増え続けるだろう。3Dワークステーションは,この膨大に発生した画像を短時間で処理し,患者の診察時や手術時の説明には必要不可欠なツールとなっている。われわれ診療放射線技師も,ただ画像を処理するのではなく,患者にもわかりやすい画像提供や手術時にどのように使用されるのかをイメージしながら作成していくことが必要である。また,Plusのようにアプリケーションの種類も豊富であれば,どのツールを選択するかによって処理時間の短縮も図ることができる。
当院では,2012年3月よりPET/CTが稼働し,また,放射線治療部門においてはサイバーナイフなど3台の高精度放射線治療装置が稼働し始めたことから,今後は各種画像のフュージョン画像などを積極的に活用していく予定である。
【使用CT装置】LightSpeed VCT(GE社製)
【使用ワークステーション】 AZE VirtualPlace Plus(AZE社製)
(2012年5月号)