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次世代の画像解析ソフトウェア

【月刊インナービジョンより転載】

■当院におけるAZE VirtualPlaceの使用経験 ─ “肝臓解析”と“新・大腸解析”について

高林  健
北海道消化器科病院放射線科


●はじめに

近年,MDCTやワークステーションの目覚ましい進歩により,3D画像は診断の一助として欠かせないものとなっている。そのため,当院においても3D画像の作成依頼が増加し,現在3台のワークステーションを使用し業務を行っている。3台のワークステーションは,それぞれ最大処理可能枚数,処理速度が異なるため使用目的により使い分けを行っている。その中で「AZE VirtualPlace」(AZE社製)の使用目的は,肝切除術前に残肝および切除肝の体積計測を行うこと,また,大腸がんのスクリーニング検査として施行されるCT colonography(CTC)の解析が中心となっている。
本稿では,当院で主に使用している“肝臓解析”と“新・大腸解析”の使用経験について紹介する。

●肝切除症例に対する肝臓解析の使用経験

図1 症例1:PTPE前後の残肝容積比較(68歳,女性)
図1 症例1:PTPE前後の残肝容積比較(68歳,女性)
肝右葉+尾状葉切除予定。PTPE前(a)は残肝31.1%,PTPE後(b)は39.5%となる。

肝切除を施行するにあたっての問題の1つに,残肝容量の不足に伴う術後の肝不全が挙げられる。そのため,切除肝が大きくなる手術の前には,残肝容量の増大を目的とした経皮経肝的門脈塞栓術(percutaneous transhepatic portal embolization:PTPE)が施行される。それに伴い,PTPE前とPTPE後の肝容積,残肝および切除肝容積の評価を行う必要がある。

肝臓解析の“肝臓オート抽出”や“肝臓セミオート抽出”を用いることで,比較的簡便に肝臓全体の抽出が可能である。また,抽出した門脈枝や肝静脈枝から肝領域を自動抽出できる“血管支配領域モード”や,術前にアキシャル像や3D画像から切除領域を決定する際に使用する“肝臓領域カッティングモード”により,肝臓データを切り分けることで,簡便に残肝容積や切除肝容積の評価を行うことが可能である。

●症例1:上部胆管がん
68歳,女性。肝右葉切除+尾状葉切除を施行するため,残肝容量の増大を目的としPTPEを施行。PTPE後は,残肝容量が31.1%から39.5%に増加しており,予定どおり手術を施行した(図1)。

●CTCに対する新・大腸解析の使用経験

現在,大腸がんのスクリーニング検査や検診を目的としたCTCの前処置方法は,検査前に造影剤を経口内服し,大腸内の残渣のCT値を上昇させてポリープなどの病変と区別するfecal tagging法が主流である。当院でも,等張液にガスロトグラフインを加えたPEG-C法にて前処置を施行している。等張液を用いた前処置方法は腸管内の残液が多く,残液を移動させて腸管内の観察不良部位を補完するため,CT撮影は,仰臥位および腹臥位の2体位で行う。2体位の腸管を比較しながら観察を行うことで効率の良い解析が可能となるため,2体位表示が可能な新・大腸解析を使用している。

画像表示方法は,仮想内視鏡(virtual endoscopy:VE)表示,直交カット断面表示,腸管展開表示などがあり,その中で,当院ではVE表示を含む"基本読影"を主に使用している。VE表示は,腸管内の病変拾い上げを行うための有効な手段であるが,VE表示だけでは残渣か病変かの判断が難しいことがある。その際使用する“ポリープ観察”は,VE画像上にROIを設定することで,ROIのMPR像が表示さる。これにより,残渣か病変かを鑑別することができ,非常に有用な機能となっている(図2)。レポート機能に関しても,仰臥位,腹臥位でそれぞれ記録した所見の中で同一病変を統合し,レポートに出力することが可能であるなど非常に完成度が高い。

図2 VE表示を含む基本読影
図2 VE表示を含む基本読影
ポリープ観察:VE画像上にROIを設定すると,ROIのMPR像が表示される。
所見ウインドウ:病変位置やサイズ,コメントを入力するとレポートに反映される。

また,新・大腸解析は,コンピュータ支援診断(computer-aided detction:CAD)や電子クレンジング(electronic cleansing)にも対応している(図3)。CADは現在,日本国内の薬事が未承認であり使用することはできないが,今後使用可能になることを期待する。一方,電子クレンジングに関しては,自動解析に組み込むことが可能であり,起動時にクレンジング処理を行って経路探索を行うように設定することも可能である。しかし,クレンジング処理の精度は,標識した残液のCT値や均一性に影響を受けるため,使用に際しては前処置方法も含めてさらなる検討が必要であると考える。

図3 電子クレンジング (electronic cleansing)機能
図3 電子クレンジング (electronic cleansing)機能
aはクレンジング処理がなされてないため,腹臥位では病変が水没し,VE画像では病変を確認できない。
一方,クレンジング処理を施行した bでは,VE画像でも腹臥位で病変を確認できる。

●症例2:便潜血陽性
39歳,男性。検診の便潜血検査にて陽性。精査目的にCTC,大腸内視鏡検査を施行した。CTCにてS状結腸に 3個のポリープを認め,内視鏡的に切除を行った(図4)。

図4 症例2:CTCと大腸内視鏡比較(39歳,男性)
図4 症例2:CTCと大腸内視鏡比較(39歳,男性)
S状結腸に3個のポリープを認め,内視鏡的に切除を行った。すべて良性ポリープであった。

●まとめ

本稿では,肝臓解析,新・大腸解析の使用経験について,簡単ではあるが紹介した。日々進歩するワークステーションやアプリケーションを駆使し,今後も,臨床上有用かつ重要な画像や情報を提供できるよう努力していきたい。

【使用CT装置】 Aquilion 64(東芝社製)
【使用ワークステーション】 AZE VirtualPlace(AZE社製)

(2012年2月号)

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