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次世代の画像解析ソフトウェア

【月刊インナービジョンより転載】

■3D-CTの再考─四肢領域の軟部組織の靭帯を中心に

石風呂 実
広島大学病院診療支援部高次医用画像部門

●はじめに

CT画像を観察する際,ウインドウ幅(WW),ウインドウ値(WL)の調整が基本的操作となるが,特に低コントラスト領域において,人の目でわずかなCT値の違いを明確に観察することは困難である。当然,三次元画像として復元することもきわめて難しい。しかし,CT値が多少の差を認識できるレベルであれば,三次元画像として表現できる可能性はあると考えられるが,三次元画像の完成度は,元画像の質で決定されることは言うまでもない。
当院では,1999年にマルチスライスCTとワークステーション(AZE VirtualPlace:AZE社製)を導入し,それ以降,本格的に3D-CTの応用に努めてきた。特に,単純CTの依頼が多い整形外科から依頼される,骨関節周辺の軟部組織三次元画像表示についても検討を行ってきた。本稿では,3D-CTにより軟部組織の腱,靭帯の描出がどこまで可能で,かつ,診断でどのように有効活用されているのかを紹介する。

●手:屈筋腱・伸筋腱の3D-CT

当院での腱の描出には,ボリュームレンダリング(VR)法を用いて表示している。
屈筋腱は,前腕抹梢から指先までの骨と腱組織を三次元画像として表示する。屈筋腱は,スクリューなどの異物が存在する場合と,小児および外傷などによる血腫,浮腫など重症度が高い特別な症例を除くと,描出能はおおむね100%である。
伸筋腱は,屈筋腱と異なり,腱自体が薄く,HUも変わり,屈筋腱と同じ設定では描出されない。そこで,閾値を約40HU低めに設定しなければならない (図1,2)。

図1 単純CT アキシャル像。手の各組織のCT値を示す。
図1 単純CT アキシャル像。
手の各組織のCT値を示す。
図2 伸筋腱と屈筋腱の三次元画像とオパシティカーブ 伸筋腱と屈筋腱の閾値には約40HUの違いがあるので,必ず閾値調整が必要となる。
図2 伸筋腱と屈筋腱の三次元画像とオパシティカーブ
伸筋腱と屈筋腱の閾値には約40HUの違いがあるので,必ず閾値調整が必要となる。

10年前までは手指屈筋腱,伸筋腱の評価法は,MRIまたは超音波検査が主流であったが,マルチスライスCTの普及により3D-CTも徐々に応用が広がり,現在では,日常のルーチン検査の一環で三次元画像が作成されるようになり,整形外科領域でも多く活用されている。3D-CTは,単純X線画像よりも被ばくのリスクは大きくなるが,読影が容易であり,かつ検査が簡便で,時間も短いなど長所が多いことから,腱損傷に対する画像診断としては非常に有用性の高い検査である(図3,4)。

図3  左手関節脱臼骨折による腱損傷の有無確認用三次元画像
図3 左手関節脱臼骨折による腱損傷の有無確認用三次元画像
図4  外傷による屈筋腱損傷例
図4 外傷による屈筋腱損傷例

●膝:前十字靭帯再建の3D-CT

CTによる前十字靭帯再建術後においての確認および経過観察は,骨孔の位置確認のためのMPR断面像が主流であるが,近年においては,三次元画像による骨孔の位置を観察することが重要となる(図5)。

図5  骨孔の三次元画像 従来の前十字靭帯再建術後の確認として,大腿骨,脛骨に開けた骨孔の位置関係を観察する。
図5 骨孔の三次元画像
従来の前十字靭帯再建術後の確認として,大腿骨,脛骨に開けた骨孔の位置関係を観察する。

前十字靭帯の再建は,靭帯に代わる移植片を,脛骨と大腿骨に作った骨孔に設置する術式が一般的である。移植片(再建用靭帯)には,多重束ハムストリング法が多く活用されているため,組織間のCT値が小さいことからCTによる再建靭帯の観察を行っていなかった。正常な前十字靭帯と再建靭帯では,わずかであるが,再建靭帯の方がCT値が高く,関節内の組織コントラストに差を認めるため,術後再建された靭帯三次元画像を作成することが可能である。この三次元画像は,術後の患者説明,経過観察に有効な画像として活用されている(図6,7)。

図6 通常施行される前十字靭帯再建術の多重束ハムストリング法の術後三次元画像
図6 通常施行される前十字靭帯再建術の
多重束ハムストリング法の術後三次元画像
図7  前十字靭帯再々建術(over the top法)の術後三次元画像
図7 前十字靭帯再々建術(over the top法)の術後三次元画像

前十字靭帯再建術直後は,関節の可動範囲に制限があるので十分に注意しなくてはならないが,膝関節の可動(伸展位および屈曲位)が可能な状態であれば,動態撮影を行うことで再建後の前十字靭帯の動きを,三次元画像または四次元画像として把握することが可能となる。

●まとめ

CT値の差が小さい領域においても,撮影条件,再構成などを工夫することで,以前は見過ごしていたものもとらえられるようになるので,諦めないことが大きなポイントと考える。

【使用CT装置】 LightSpeed Ultra 16, LightSpeed VCT(GE社製)
【使用ワークステーション】 AZE VirtualPlace(AZE社製)

(2011年8月号)

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