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次世代の画像解析ソフトウェア

【月刊インナービジョンより転載】

■当院におけるAZE VirtualPlaceの使用経験─頭部・頸部CTAを中心に

片岩 昭博/和田 大輔/奥中 雄策/斎藤 大介
社会医療法人生長会 ベルランド総合病院

●はじめに

2008年3月に,64列MDCT「LightSpeed VCT」(GE社製)の導入に伴い,「AZE VirtualPlace 雷神」(AZE社製)を導入した。GE社のワークステーション(WS)も同時に導入したが,当時,脳神経外科医から3D-CTに対する要望が増えてきていたのと,放射線科医の勧めもあり,他のWSに比べサブトラクション処理に特長のあったAZE社のWSの導入も併せて決定した。その後,2010年6月に更新し,現在「AZE VirtualPlace Plus」を使用している。

●使用環境

AZE VirtualPlace Plusは,本体以外に,クライアント端末を2台同時に使用でき,かつ使用権利を有するPCは無制限に設定できるという利点がある。当院では,CT室に本体を設置し,クライアント端末をMRI室,血管造影室,技師控え室の3か所に設置した。これにより,複数の画像処理が同時に行えるようになり,処理件数が増えても対応することができるようになった。以前は,心臓CTAの画像処理を他社のスタンドアローンWSで行っていたが,AZE VirtualPlace Plusに更新した後は,こちらにて処理するようになったため,血管造影室に循環器科医専用の端末を設置し,医師のカンファレンスや血管造影前のシミュレーションに使用している。
当院では,心臓CTAおよび頭部・頸部CTAのthin sliceデータをすべて保存している。以前はメディアに焼き付けたり,外付けハードディスクに転送したりと,手間がかかっていたが,AZE VirtualPlace Plusはディスク容量を4TBまで増設することができたため,WS自体がテラサーバを兼ねており,他のメディアやディスクに保存するという手間が省けるようになった。

●臨床での使用経験

当院では,心臓CTAおよび頭部・頸部CTAでの使用頻度が圧倒的に多い。特に今回は,当初の導入理由である頭部・頸部CTAに対しての使用経験を報告する。
当院の頭部CTAでは,全例サブトラクション処理を行っている。AZE VirtualPlace 雷神導入当初,サブトラクション機能の特長として剛体位置補正ができることが,ほかにはない非常に有用な機能であった。2010年にWSを更新した際,サブトラクション機能に新しい位置補正が加えられていた。それは非剛体での位置補正である。この非剛体位置補正は,剛体位置補正にはない“ひねり”に対しての位置補正が可能なことが特長で,さらに動きに強くなっていると感じられた(図1)。よって,これまで頸部CTAの処理は他のWSで行っていたが,この非剛体位置補正が加わったことにより,頸部CTAもAZE VirtualPlace Plusで処理するようになってきている。

図1 剛体位置補正と非剛体位置補正によるサブトラクションの違い
図1 剛体位置補正と非剛体位置補正によるサブトラクションの違い

同WSの特徴を説明するよりも,これより先は実際の臨床画像を見ていただくことで,良し悪しを判断していただきたい。
図2は,頭部血管動脈瘤の症例で,動脈瘤の位置・形態の把握のほかに,当院では静脈画像を作成し,手術アプローチに対するシミュレーションを行っている。サブトラクション処理で注意しなければいけないことは,処理を加えることにより元画像よりも少し画像が劣化する点で,より細部まで観察したい場合は元画像にてフォローすることが必要である。

図2 頭部血管動脈瘤
図2 頭部血管動脈瘤

図3は,転移性脳腫瘍の症例である。腫瘍に対してのfeederが確認でき,静脈・頭蓋骨を加えることで有用な術前シミュレーション画像となる。

図3 転移性脳腫瘍
図3 転移性脳腫瘍

図4は,STA-MCA bypass術に対してのシミュレーション画像で,浅側頭動脈・中大脳動脈,および脳表・頭蓋骨を描出させることにより,吻合血管の位置を明確に把握でき,実際の手術の際,開頭範囲が最小限に抑えられる。

図4 STA-MCA bypass 左の画像にて,頭蓋骨とSTAおよび表在にあるMCAの位置確認をし,右の画像にて表在にあるMCAを確認する。
図4 STA-MCA bypass
左の画像にて,頭蓋骨とSTAおよび表在にあるMCAの位置確認をし,右の画像にて表在にあるMCAを確認する。

図5は,頸動脈のCEA術前シミュレーション画像で,頸椎と狭窄部位の位置関係を把握するのが主である。脳神経外科医の要望で静脈画像を描出してみたが,この画像に関しての有用性は医師によって賛否両論であり,有効活用の是非を現在模索中である。

図5 頸動脈CEA
図5 頸動脈CEA

図6は,頭頂部髄膜腫の症例である。上記の転移性脳腫瘍と同じようなシミュレーション画像であるが,よく見ると,頭蓋冠の内板と外板の間から静脈が出ているのが観察できる。これは板間静脈と言い,この症例では板間静脈が非常に発達している。よって,この画像から板間静脈を傷つけることなく開頭しなければいけないことがわかり,開頭位置のシミュレーションに非常に役立った。頭蓋冠の内部を走行するような血管であるため,サブトラクション処理なくしては描出できなかった一例である。

図6 頭頂部髄膜腫
図6 頭頂部髄膜腫

以上,簡単に症例を提示してきたが,当院での画像処理はそれほど複雑ではなく,要するに動脈,静脈,頭蓋骨および腫瘍のオブジェクトをしっかり抽出した上で,脳神経外科医の指示のもと,画像を作成しているということである。しかし,これらの画像を作成するためには高性能なWSなしではなし得ないことである。

●まとめ,今後の動向

WSを導入して約3年経過しているが,AZE VirtualPlace Plusにはまだまだ多くの潜在能力があると思っている。より有効な使用方法を現在も模索中である。現に2010年のAZE展に参加させてもらい,多くの新しい手法を学ばせていただき非常に勉強になった。当院では,使用方法以外にも,処理時間の短縮,処理可能な診療放射線技師の育成など考慮すべき課題はたくさんあるが,今後も患者さんにとって,より有用な画像作成に精励していきたいと思っている。

【使用CT装置】 LightSpeed VCT(GE社製)
【使用ワークステーション】 AZE VirtualPlace Plus(AZE社製)

(2011年3月号)

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