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【月刊インナービジョンより転載】
■より実践的な情報を提供するAZE VirtualPlace
阪本 剛
(株)AZEマーケティング部
「AZE VirtualPlace」は,常に先端技術を取り入れ,いち早く臨床の現場に還元できることをめざして日々開発が行われている。本稿では,今回開発した新技術について,その一部を紹介する。
●Dynamic 4D解析
従来よりCTでは,腹部造影のダイナミック撮影が行われているが,現在,MRIによる乳房検査や腹部消化器の検査においてもダイナミック撮像が行われるようになり,タイムデンシティカーブ(TDC)から腫瘍病変の性状などを検討する機会が増えるようになった。
今回われわれは,ダイナミック検査専用の“Dynamic 4D解析”を開発し,ROIのリスト管理やバックグラウンドの補正,血流速度値の算出などの機能を向上させた。これまでこれらの機能は,複数フェイズのデータ間に形態的な位置情報の誤差がないことが前提とされていた。そのため,呼吸などによって形状が変わりやすい腹部および乳房領域では,位置情報の相違が,正確なTDCの作成に対する1つの問題点となっていた。
これに対しサブトラクションソフトウェアで評価を得ている“非剛体レジストレーション”をDynamic 4D解析に搭載することで,形状が複雑な腹部領域の変形を補正することを可能とし,位置ズレの問題を解決できるようにした(図1)。ワンクリックで,すべてのフェイズの形状誤差を一括で補正可能なため,非常に精度の高いTDCを容易に作成できる。本ソフトウェアは,CT画像およびMR画像に対応し,どの領域でも使用可能であることから幅広い活用が期待できる。
図1 Dynamic 4D解析
呼吸差や姿勢差などによる位置ズレを補正し,正確なTDCを描画できる。
●フュージョンEX
“フュージョンEX”は,AZEが独自に開発し,国内外の学会において評価を得ている「アトラス法」を用いた,形態(CT)と機能(RI)の融合画像を作成するソフトウェアである(図2)。これにより,操作者間での位置合わせ誤差を取り除くことができる。さらに本ソフトウェアは,MR画像でも同様の操作をすることが可能であり,非侵襲的に,より有効な情報を提供することができる。またRIデータは,rest画像とstress画像を三次元的に同期し比較させる表示方法や,washoutの計算を行いマッピングする機能を追加している。この抽出した心臓データにRIの信号値をマッピングする方法は,CT,RIどちらも元画像から行っているので,Bull's eyeを作成する際の引き延ばすような操作を行っていない。そのため三次元的な歪みを生じることなく,異常な心筋領域の面積をより正確な範囲で表示可能である。
図2 フュージョンEX
restとstressデータを比較することができる。三次元的なマッピングは,より正確な虚血範囲の形状を表示する。
●高精度心臓抽出機能
従来,心臓の三次元画像を得るためには,物体を回転させて範囲内マスク除去操作等を繰り返すことで,ユーザーは欲しい画像を得ていた。今回,“新・CT細血管解析”に搭載された高精度心臓抽出機能は,認識の難しい肺動脈や肺静脈,左心耳,右心耳などをソフトウェアが自動で認識し除去する技術である。この機能を用いることで,心筋上を走行する冠動脈をさまざまな方角から自由に観察することができる。
さらにわれわれは,この機能をMRIの心臓データに応用することで,先に挙げた肺動脈などの不要物に加え,除去が困難とされていた心嚢水などの不要物をワンクリックで一括消去できるようにした。これにより,心臓ドックなどで撮像される心臓MRIのVR作成処理に時間を要することがなくなる。
●肝臓解析
医用画像を三次元化するレンダリングの手法は,その目的に応じて何種類も開発されており,AZE VirtualPlaceでも,必要に応じて切り替えられるシステムを構築している。その1つの手法を取り入れたのが,“肝臓解析”である(図3)。
肝臓は,門脈を持つため内部は複雑な血管走行を呈している。そのため,造影効果の良いデータで従来のように三次元構築を行うと,末梢構造を明確に表示できるが,その内部構造の注目したい部分を表示するには手間がかかった。本手法を用いることで,明瞭な血管走行表示を行うことができ,肝臓の血管構造を把握するのに非常に有用な情報が得られる。
そのほかにも,残肝体積比率の表示など従来のソフトウェアに加え,ユーザビリティの向上に努めている。
図3 肝臓解析
新しいレンダリング手法により,血管走行を明確に表示できる。
●パラレル/バックグラウンド処理機能
現在,ワークステーションのソフトウェアで関心が高まっている心臓解析アプリケーションであるが,AZE VirtualPlaceでは,そのほとんどをユーザーが操作しないバックグラウンド領域で解析を実行させ,その処理を終了できる(図4)。この処理を実現するため,バックグラウンドで処理が実行されている間でも,操作に不自由のないデータ処理管理が必要になる。
AZEでは,従来の解析処理体系を一新し,パラレル演算処理を有効に取り入れることによって,バックグラウンドの処理にかかわらず常に高速なレンダリングを可能にしている。これにより,ユーザーが3Dを作成している間にデータがCTから転送され,ユーザーは心臓解析処理が行われていることを感じることなく,処理が終了しているという状態になっている。また,バックグラウンド処理は,何個も連続的に行うことが可能であるため,本体から距離的に離れたユーザーも,ネットワークを介してその解析結果情報をスムーズに入手することが可能である。
新しいパラレル演算処理が生み出すレンダリング技術と,ネットワークを介したバックグラウンド処理が生み出す新しい解析処理体系によって,ユーザーに劇的な操作体系を提供することが可能になる。
図4 AZE Auto Analyzer
データを自動解析し,結果はネットワークを介してすぐに参照できる。
●まとめ
AZE VirtualPlaceは,高速パラレル演算方式や処理体系の改善,レンダリング手法,レジストレーションなど,ワークステーションに基礎的に考慮される機能とその問題点を総合的に解決することで,結果として,余分なステップを削減したシンプルなワークフローを実現している。
今後も,高い操作性とワークフローの効率化を実現するユーザーフレンドリーなシステム,ソフトウェアを開発していくことで,医療現場により実践的な情報を提供していきたい。
(2011年4月号)