ホーム inNavi Suite 東芝メディカルシステムズ Technical Note撮影から読影までを網羅した東芝の大腸CT技術について
2012年7月号
CT Colonography(CTC)による大腸がん診断
2012年1月より,本邦で診療報酬における大腸CT加算が認められ,CT Colonography(以下,CTC)が急速に普及しつつある。
CTCでは,高い精度かつ高いワークフローを備えたCT装置(ハードウエア)の開発や,大腸の画像処理を行う解析機能(ソフトウエア)の開発と並行して,撮影から読影までを含めた大腸CT検査の環境作りも,今後の運用で重要なポイントとなる。
本稿では,「Aquilion CXL」の技術と,大腸CT遠隔読影支援スキームについて紹介する。
■高分解能検出器技術 (0.5mm×64列検出器)
高い分解能が要求される消化管領域では,検出器技術が非常に重要である。東芝が,1999年発売のAquilion™ Multi(4列)に搭載した高密度0.5mm検出器は,現在ではAquilion ONE™(320列)にも搭載されるなど,東芝CTの最高ラインナップ,Aquilionのクオリティを表す技術のひとつである。
「Aquilion CXL」では,0.5mm検出器の能力をさらに引き出すべく,体軸分解能を上げるDouble Slice Technologyを標準搭載している。これによりガントリ1回転のデータから,128スライスの画像を再構成することが可能である。
図1は病変高の低いLSTの症例で,仮想展開画像(Virtual Gross Pathology:VGP)においても,的確に病変を指摘することができる。
図1 Lateral Spread Tumorの症例画像(Granular Type)
■高ピッチ撮影に対応した画像再構成技術(V-TCOT)
64列検出器搭載により,広範囲を高速に撮影することが可能になったが,さらなる短時間撮影を実現すべく,高ヘリカルピッチに対応した画像再構成技術V-TCOTを開発した。V-TCOTは320列面検出器CT「Aquilion ONE」の160列ヘリカル技術に搭載したもので,高い再構成技術により,高ピッチ撮影の際のウィンドミルアーチファクトを抑制する。
図2は,HP95(BP1.48)で撮影した大腸CTの画像である。腸管のガスや椎体からのアーチファクトが,高いレベルで抑えられているのがわかる。
図2 CTC Hi-Helical Pitch Scan(BP1.48,HP95)
■被ばく低減技術(逐次近似応用再構成法 AIDR 3D)
2体位撮影を基本とするCTCでは,被ばく低減が重要な技術のひとつとなる。その中でも,画像再構成技術を応用した被ばく低減は,低線量撮影によって発生したストリークアーチファクトやノイズを低減することが可能である。
逐次近似応用再構成法であるAIDR 3Dは,生データベースでの複数のモデルベースによるノイズ低減処理と,イメージデータベースでの逐次処理を行う技術で,320列面検出器CTにも搭載した最新被ばく低減技術である。東芝は,AIDR 3Dを今後開発・販売するすべてのCTに標準搭載することを予定しており,16列CTである「Alexion™」にも搭載されている。
図3は,実効線量に換算して0.71mSvで撮影された低線量大腸CTの臨床画像である。大腸粘膜面のノイズがほとんど見られないだけでなく,MPR画像でも,指摘した病変内部が残渣の識別を含めて評価をすることが可能である。
また東芝は,被ばく低減技術を用いた超低線量CTCの研究を国立がん研究センターと行っており,胸部単純撮影レベルでの超低線量CTCの実現を目指している(図4)。
図3 0.71mSv CT Colonography臨床画像 |
図4 0.15mSv CT Colonography臨床画像 |
■安定したCTC撮影を行う技術(大腸CT撮影用腹臥位マット)
CTCでは腹臥位撮影時に,横行結腸やS状結腸が被検者自身の自重により圧排され,その部位が拡張不良となるケースも散見される。従来は,剣状突起と恥骨結合付近にマクラを入れて圧排を低減することが多かったが,経験値的な作業になることや,作業に伴う検査待機時間の延長は,腸管拡張中の被検者にとっても苦痛なものとなる。
東芝が,国立がん研究センターと共同開発した腹臥位マットは,腹臥位撮影時に寝台マットの一部分を抜くことで,短時間かつ効果的に大腸の拡張を得ることが可能で,マットの厚みや形状,抜く部分の長さなどは,操作性や日本人の体形を考慮して設計されている(図5)。
図5 大腸CT撮影用腹臥位マットの開発
■大腸CT遠隔読影支援スキーム(CTC Telescope)
CTがこれまでの大腸画像診断モダリティと異なる点は,術者(撮影者)以外の人間でもデータにアクセスすれば,任意の方向の観察や,さまざまな種類の画像を新たに再構成できることにある。つまり,多視眼的な運用が可能で,かつ遠隔地からも瞬時に観察できることが,CTCの大きなアドバンテージである。
実際の運用としては,一次チェックを検査実施施設で行い,二次チェックをCTCのエキスパートが行うことで,効果的かつ効率的なCTC検査の運用が可能となる。
東芝は,遠隔読影支援システムを運用する企業,画像解析ワークステーションを開発する企業と3社でCTC遠隔読影スキームを構築した(図6)。
図6 CTC遠隔読影支援スキーム
高い画像診断能を誇る日本を母国とする東芝の,CTCの技術とスキームについて紹介した。さらなる低侵襲性や高い効率性を目指し,対策型検診への応用をも視野に入れて,今後も技術開発を継続していく。