ホーム inNavi Suite 東芝メディカルシステムズ Technical NoteX線循環器診断システム「Infinix Celeve-i」の到達点
2011年4月号
Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点
デジタル技術の進歩に伴い,X線循環器診断システム「Infinix Celeve-i」シリーズに“Dynamic Navigation”というコンセプトを打ち出した。Dynamic Navigationでは,各種の情報を統合し,患者さんや術者を中心にした動的なナビゲーションをコンセプトとしている。その骨子は,作業空間を生み出すMultiAccess,透視・撮影画質を向上させるPureBrain,他のモダリティの情報や3次元画像をもとにナビゲートするVolume Navigation,流れを生み出すMultiTaskという4つのコンセプトが挙げられる。
■MultiAccess
MultiAccessは,患者さんや術者の術式に合わせ,Cアームシステムおよび寝台が積極的にポジションを作り出すというコンセプトである。
Infinix Celeve-iシリーズのCアームシステムは,天井走行式のINFX-8000Cはもちろんのこと,床置き式のINFX-8000Vも,患者さんに対して横手方向と長手方向の移動が可能となっている(図1)。冠動脈インターベンションのみならず,下肢血管など末梢血管インターベンションに対するアクセスのしやすさや,橈骨動脈からのカテーテルアプローチにおいても,上腕を透視範囲にとらえることができ,安全なカテーテルアプローチを支援する。
図1 横手移動(左)と長手移動(右)
また,Cアームのみならず組み合わせる寝台についても,手技の変遷に合わせてラインナップを増やしている。カテーテル治療に加え,外科的な処置も加えるハイブリッド手技の必要性が生じた際には,患者さんを起倒させ,体位を変換できることが望ましい。そのような手技に合わせ,起倒機能付きのカテーテルテーブル「CAT-880B」を開発し,INFX-8000C,INFX-8000Vともに組み合わせを可能としている。また,外科手術に対応するため,多目的手術専用寝台「ALPHAMAQUET1150」(MAQUET社製)を組み合わせた天井走行式システムINFX-8000Hも開発し,ハイブリッド手技に対しても,目的に応じたラインナップを備える(図2)。
図2 ハイブリッドシステム
■PureBrain
冠動脈のように動く臓器でのワイヤー操作には,残像の少ない高画質な透視画像が不可欠である。PureBrainは,撮影画像はもちろんのこと,透視画像の高画質化を実現するコンセプトである。
PureBrainでは,当社独自のアルゴリズムSuperNoise Reduction Filter(SNRF)を搭載。SNRFでは,画素単位で最適なノイズ低減処理を行うため,X線量は上げずに,残像の少ない透視画像を提供することが可能となる。図3に示すように,胸部を模したファントムによる比較では,SNRFをかける前のノイズ量を100%とした場合,SNRFをかけた後は,ノイズは40%以下となっている。
図3 SNRFのノイズ低減効果
残像については,図4に示すように,回転ファントムによって,従来型のリカーシブフィルタ方式に比べ大幅に低減していることが認められる。このPureBrainによって得られる透視画像と撮影画像の一例を図5に示す。透視で残像がほとんど出ないため,透視画像でもガイドワイヤーを鮮明に確認することができる。
図4 SNRFの残像低減効果
ホイール型ファントム(d)を 毎分30回転させた。
図5 PureBrainの一例
PureBrainのノイズ低減機構は,被ばく低減にも寄与する。現在では,パルス透視が標準装備され,通常秒間15パルスが用いられることが多い。PureBrainの透視画像は,残像が少ないため,手技によっては秒間10パルスや7.5パルス,あるいはそれ以下のレートを利用いただくことも可能となった。また,治療中の確認撮影において,その視認性が許されるならば,透視画像を撮影画像の代わりに保存して利用する透視収集機能を充実させた。通常,撮影線量は透視線量に比べ5〜10倍あり,透視収集機能を利用することで被ばく低減につながる。
また,積極的にこの透視収集機能を利用できるように,術者のフットスイッチに透視収集機能を組み込むことを可能とした。踏み込むと,透視終了から10秒間さかのぼった透視画像を収集するF-Store機能と,透視のばく射と連動し最大90秒間まで透視画像を収集するF-Rec機能を,それぞれファンクションスイッチに組み込み,手による操作が不可能な場面でも足での操作を可能とし,撮影機能の代用として直感的に利用することができる。低レートパルス透視で透視線量率を下げ,透視収集機能により撮影回数を減らすことで,治療全体の低被ばく化が期待できる。
末梢血管への画質も追究している。下肢血管撮影では,直接線の影響でハレーションを引き起こしたり,線量不足を引き起こす。そのため,骨にかかる血管像の描出能が低下する。適正な線量を確保し,安定した画像を得るため,Dynamic Traceというコンセプトを打ち出した。これにより,カテーテルテーブルを移動させながら撮影する場合でも,安定した血管像を得ることが可能となる。図6に,従来画像との比較を示す。
このように,PureBrainでは撮影のみならず,透視画質も向上させ,冠動脈から全身の血管に対するカテーテル治療に安定した画像を提供する。
図6 同一患者さんにおける下肢撮影像の比較
撮影日,造影剤量は異なる。
■Volume Navigation
患者さんの医用画像は血管撮影のみではない。近年では,マルチスライスCTや超音波装置の画像をガイドとしてインターベンションが行われる。Infinix Celeve-iシリーズでは,それらの画像を確認するためそれぞれの端末のモニターを見るのではなく,View Switcher機能により,カテーテル室内のモニターに切り替えて表示することができる。
ナビゲーション機能として,冠動脈の3次元画像を描出する“CV-3D”に,StentPlanner機能を追加した。StentPlanner機能は,冠動脈造影より得られた3次元の血管画像上に,登録されたステントを疑似的に描出し,血管に沿って前後に移動させることができる。図7のように,ステントの径や長さを留置前にシミュレーションすることが可能になる。
図7 StentPlannerによる仮想ステント表示
■MultiTask
Infinix Celeve-iシリーズでは,透視や撮影に並行して,参照画像の切り替えや,他の患者さんの画像も含め,画像処理や計測処理などさまざまな処理が行えるMultiTask機能を強化している。透視中の参照画像として,動画像も表示することも可能であり,側副血行路など動画で必要な情報を透視中に確認できる。
また,撮影のたびに,画像サーバに画像を自動転送する。その間も,透視・撮影が可能である。このような機能により,必要な処理は治療中に行い,患者さん退出後の処理を極力減らすことで,院内のワークフローも向上させる。
このようにInfinix Celeve-iシリーズは,Dynamic Navigationというコンセプトにより,幅広いニーズにバランス良く応えることができるシステムとなっている。
*Infinix Celeve,PureBrain,およびCV-3Dは東芝メディカルシステムズ(株)の商標です。