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Technical Note

2010年7月号
Dual Energy Imagingの技術的特徴

CT−「Aquilion ONE」デュアルエネルギーシステム

津雪昌快
CT開発部

本稿では,「Aquilion ONE」(図1)のデュアルエネルギーシステムについて紹介する。
Aquilion ONEは,1回転最短0.35秒で体軸方向に160mmの範囲を撮影することができるCT装置であり,デュアルエネルギーシステムはこれを生かした撮影方法を採用している。

  図1 Aquilion ONE
図1 Aquilion ONE

■ デュアルエネルギーとは

X線CTは,60keV前後のエネルギーのX線を用いて人体の断層画像を得ている。図2に,CT検査に馴染みの深い軟部組織,脂肪,骨,ヨードのX線吸収係数を示す。図中の縦線は60keVを示しているが,この周辺の異なるエネルギー(管電圧)で撮影し,CT値の違い(X線吸収係数の違い)からシングルエネルギーより多くの情報を得るのが,デュアルエネルギーの考え方である。


図2 X線吸収率
図2 X線吸収率
NISTの下記ページより数値をもとにグラフを作成した。
http://physics.nist.gov/PhysRefData/XrayMassCoef/tab3.htmlよりIodine,
http://physics.nist.gov/PhysRefData/XrayMassCoef/tab4.htmlよりAdipose, Bone, Tissue(Soft)

■ デュアルエネルギー撮影

Aquilion ONEのデュアルエネルギー撮影“DE-Vol”は,以下の特長を持っている。

(1)160mmを1.6秒で撮影(図3)
新しい撮影モードDE-Volは,体軸方向に160mmの撮影範囲を持つArea Detectorを生かしたボリューム撮影であり,2種類の管電圧でのボリューム撮影を連続して行う。
典型的な架台回転速度0.5秒の条件で,160mmの範囲のデュアルエネルギー撮影を約1.6秒で行うことができる。架台回転速度0.35秒では,最短約0.87秒での撮影が可能である。


図3 DE-Volの撮影シーケンス例
図3 DE-Volの撮影シーケンス例

(2)管電流の設定が自由(図4)
デュアルエネルギーによる解析は,CT値の比較となるため,2つの管電圧の画像のSD値がそろっていることが望ましい。DE-Volでは管電流の設定に自由度があり,管電圧に応じて適切な管電流を用いることができる。管電流はメニューから選択,または,数値入力により簡単に設定することができる。
また,管電流自動設定機能である“Real EC”を用いることにより,2つの管電圧それぞれで指定したSD値を得るための管電流を自動的に設定することも可能である。


図4 撮影画像例
図4 撮影画像例

(3)フルFOV
装置のFOVをフルに生かすことができ,体格の大きな患者さまや,対象部位が末梢・辺縁にある場合でも安心して検査を行うことができる。

(4)ボリューム撮影
ボリューム撮影を採用しているため,ヘリカルの軌道ズレによる位置ズレが発生しない。
これらより,DE-Volで撮影された2つのボリュームは,それぞれ適切な管電流やFOVが設定されており,シングルエネルギーとしての読影も通常どおりに行うことができる。


■ デュアルエネルギー解析

Aquilion ONEのデュアルエネルギー解析ソフトウエアでは,デュアルエネルギー撮影で得られたCT値のペアから,対象部分があらかじめ設定した2つの物質のどちらに近いかを判別することができる。操作の概要は,下記のとおりである。

(1)解析ソフトウエアを起動し,解析対象のボリュームを読み込む。
(2)ボリューム上で,解析対象部分を選択しセグメンテーションを行う。
(3)Analyzeボタンを押すと,解析結果が表示される。

解析結果は図5のように,グラフとカラーコーディングにより表示される。左側のグラフは,横軸が低管電圧,縦軸が高管電圧のCT値であり,(2)で選択した部分のCT値を確認することができる。赤と青の線は,あらかじめ設定された2つの物質がグラフ上で取りうるCT値を示しており,図5では,青が尿酸,赤が炭酸カルシウムから得られた値である。このグラフの上に,選択した部分に相当する点がプロットされる。図5の場合は,赤い線の近くに点がプロットされ,炭酸カルシウムに近いことが示唆される。右の画像には,選択した部分がどちらの物質に近いかが,グラフとカラーコーディングにより示される。色使いはグラフと同じで,青が尿酸,赤が炭酸カルシウムであり,(2)で選択した部分の計測結果から,赤く表示されている。このようにして,選択した部分のCT値を,基準となる物質のCT値と比較しながら確認することができる。


図5 解析画面例
図5 解析画面例

■ 今後の展望

図2より,X線CTで用いるエネルギーの範囲で,軟部組織や脂肪に比べて,ヨードや骨(カルシウム)は吸収の性質が異なることがわかる。
今後,この性質を生かして,造影剤の存在確認,軟部組織/造影剤/石灰化の分離など,臨床上有用なアプリケーションの開発が期待される。

*Aquilion ONEは東芝メディカルシステムズ株式会社の商標です。

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