ホーム inNavi Suite 東芝メディカルシステムズ Technical Note3Tの腹部MR Imagingを拓く“Multi-phase Transmission”
2010年4月号
Abdominal Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点
■ 3T MRIの登場 3T MRIでは,S/Nが静磁場強度(B0)に比例するので,1.5Tに比べておよそ2倍になる。頭部などの一部画像では,高分解能で鮮明な画像が撮像されるようになった。そのほか,1.5Tに比べて次に挙げるような特徴がある。(1) 静磁場(B0)の不均一の影響が大きい,(2) RF磁場(B1)の不均一の影響が大きい,(3) 比吸収率の制約(SAR:specific absorption rate)が4倍,(4) 磁化率効果が2倍,(5) 化学シフトが2倍,(6) T1緩和時間の延長などである。 ■ 3TにおけるRF磁場(B1) 3Tの特徴の中で,特に注目されているのがRF磁場(B1)である。3Tで使用されるRF磁場(B1)は128MHzで,1.5T(64MHz)の2倍の周波数となる(図1)。3Tにおける一般的な特徴として,RF磁場(B1)は表面から入りにくいと言われている(表皮効果)。 |
図1 1.5Tと3Tの周波数の違い |
■ 腹部における問題 腹部における3Tの問題点として,RF磁場(B1)の不均一の影響が大きいことがある。特に,人体が挿入された場合の腹部では,不均一が生じやすく意図したRF磁場(B1)がかからずに,フリップアングルに不揃いが生じる(図2)。これが画像ムラとなり,大きな問題になっていたため,せっかくの3Tによる高いS/Nを体幹部では活用できていない状況にあった。 |
図2 Malti-phase Transmissionによる回転磁場の補正イメージ図 |
■ 課題の解決:Multi-phase Transmission 腹部における画像ムラの解決策として開発された技術が,“Multi-phase Transmission”である。以下に,Multi-phase Transmissionの概略的な内容について説明する。 |
図3 位相を変化させた場合と振幅を変化させた場合の回転磁場 |
■ 送信ポイントの4ポイント化 このようにMulti-phase Transmissionでは,位相と振幅を変化させて送信するので,いかに精度良く位相と振幅を制御できるかが大変重要なカギとなる。そこで,RF磁場(B1)の精度を向上させるために,全身コイルの構造にも工夫を加えた。RFアンプを2台に増やし,全身コイルに供給するポイントを従来の2ポイントから4ポイントに増やした。これまでの2ポイントでは,ポイント近傍は,意図した位相・振幅の状態になっているが,ポイントから離れると,挿入された人体の影響などにより意図した位相・振幅からずれてしまい,画像ムラを起こす要因の1つになっていた。この問題に対してポイント数を4ポイントに増やすことで,人体が挿入された場合の補正精度の向上が可能になった(図4)。 |
図4 RFアンプとポイント数を増やすことによる位相と振幅の最適化(イメージ図) 図5 Multi-phase Transmission撮像例 |
■ 今後に期待されること 3Tにおいて,全身コイルへの供給を4ポイントにしてMulti-phase Transmissionを使用することにより,腹部でもムラのない均一な画像が撮像可能になった。3Tでは困難とされていた体幹部でも幅広く使うことができるようになる。3Tのメリットである高S/Nを生かした高分解能など,踏み込んだ撮像ができるようになる。また,TrueSSFPなどフリップアングルの制約が厳しい撮像の幅を広げることも期待できる。 *画像はすべてボランティア画像であり,撮像にあたっては同意書をもらって行っています。 |