東芝メディカルシステムズ

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Technical Note

2009年4月号
Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

SPECT−心筋SPECTの減弱の影響を低減させるソフトウェア技術

野島靖彦
核医学・PET部

マルチモダリティー診断では,それぞれのモダリティーの撮影時における呼吸の違いが,フュージョンの精度などに大きく影響してくる。CT撮影時には深吸気呼吸停止下,SPECT撮像時には自由呼吸下での収集が行われているため,臓器の形状および位置に違いが生じてくる。循環器領域においては呼吸による臓器形状の変化は少ないが,CT撮影画像を使って減弱補正を行う際に,CT画像とSPECT画像のミスレジストレーションによりアーチファクトを生じるケースが見受けられる。1回の撮影で減弱補正が行えるハイブリッド装置(PET-CT,SPECT-CT)においても,この問題は解消されていない1)
本稿では,呼吸によるミスレジストレーションの影響を受けないSPECT画像自身から減弱補正マップを作成し,心筋SPECTの減弱の影響を低減する方法を紹介する。

■ SSPAC法

“Segmentation with Scatter and Photopeak window data for Attenuation Correction(SSPAC)法”は,心筋SPECTの減弱の影響を低減させる目的で開発された。通常のSPECTイメージングに使用されるフォトピーク領域のデータとコンプトン散乱領域のデータを利用して,SPECT画像自身から減弱補正マップを作成し,心筋SPECT減弱アーチファクトの低減を行う。
まず,東芝が国際特許を取得している“散乱線補正方法(TEW法)”を応用し,低エネルギー側のサブウィンドウ画像からコンプトン散乱画像を取得する(図1)。
次に,得られたコンプトン散乱画像から,体輪郭,肺外縁の抽出を行う。これに,あらかじめ用意してあるモデル縦隔を貼り付ける。一方,フォトピーク画像から心臓および肝臓を抽出し,同じくあらかじめ用意したモデル胸椎と一緒に貼り付ける。続いて,各部位に減弱係数の割り付けを行い,SPECT位置分解能と同等の分解能劣化フィルター処理をかけることによって,各スライス面での減弱補正マップを得ることができる。つまり,SPECTデータの収集から直接減弱補正マップを作成できるため,マルチモダリティー使用で問題となるモダリティー間の位置ずれはまったく生じないことになる(図2)。


図1 コンプトン散乱画像収集の概念図
図1 コンプトン散乱画像収集の概念図

図2 減弱補正マップ作成の概念図
図2 減弱補正マップ作成の概念図

■ SSPAC法使用例

SSPAC法による効果を,Polar Mapにより補正前および線源法(TCT法)と比較した(図3)。補正前では,下壁から中隔における画素値低下のアーチファクトが生じているが,SSPAC法ではこれが低減されており,TCT法と比較してもほぼ同等の画像が得られている。
図4に,201Tlの正常例を示す。201Tlのようにエネルギーの低い核種では減弱の影響が大きいが,SSPAC法により効果が得られている。
次に,#13に100%狭窄を有する症例を図5に示す。本症例においては,SSPAC法により虚血部位がより明瞭になっているのがわかる。


図3 TCT法との比較(99mTc Tetrofosminでの正常例)
図3 TCT法との比較(99mTc Tetrofosminでの正常例)
(データご提供:藤田保健衛生大学様,三重大学様)

図4 201Tl正常例
図4 201Tl正常例
(データご提供:藤田保健衛生大学様,三重大学様)

図5 99mTc-MIBIによる側壁梗塞例
図5 99mTc-MIBIによる側壁梗塞例
(データご提供:金沢大学様)

最近では,冠動脈CTAと心筋SPECTなどのように形態画像と機能画像を3次元的にフュージョンさせて,狭窄血管の虚血領域への支配関係を判断することが行われてきている。SPECTによる虚血部位の正確な描出のためにも,SSPAC法は有効な手段と考える。


●参考文献
1) McQuaid, S.J., et al. : Sources of attenuation-correction artefacts in cardiac PET/CT and SPECT/CT. Eur. J. Nucl. Med. Mol. Imaging, 35・6, 1117〜1123, 2008.


【問い合わせ先】 核医学・PET部