東芝メディカルシステムズ

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Technical Note

2009年1月号
シリーズ特集 scene vol.2−rt-PA時代における急性期脳梗塞の画像診断:標準化に向けて

MRI−急性期脳梗塞診断に対する東芝MRIの取り組み

二宮 綾子
MRI事業部

急性期脳梗塞診断やrt-PA投与におけるMRI画像診断の役割は,梗塞の存在診断のみならず,血管の形態,血流の状況,出血の有無を短時間で提供することである。なかでも拡散強調画像(DWI)は,T2強調像やCTよりも早期に梗塞を高信号(ADC画像で低信号)として診断できる,MRI特有の情報である。
本稿では,急性期脳梗塞診断への標準化に向けた動向も含めて,東芝MRI装置の特長を述べる。

EXCELART Vantage powered by AtlasにおけるSPEEDER技術

“Atlas SPEEDER”は,パラレルイメージング技術SPEEDERの進化形である。従来のSPEEDERで培った高SNRコイルエレメント技術をさらに発展させ,画質と高速撮像の両立,患者さんへの負担軽減,検査効率の向上をレベルアップした革新的なコイル技術である。
頭部用のAtlas SPEEDERヘッドでは,頭部領域に最適なエレメント配置を行い,効率良くSNRを保ったまま,パラレルイメージングの倍速率を向上させている。EPIシーケンスを使用するDWIでは,その原理上,画像の歪みを伴うが,この歪みはパラレルイメージングの倍速率を上げることにより軽減することができる。Atlas SPEEDERヘッドは,高SNRを維持したまま最大3倍速の倍速率を実現することで,DWIの画質向上を実現した。また,従来コイルに比べ,患者さんの視野空間を広くすることで,開放的でリラックスした検査を実現している(図1)。
「EXCELART Vantage powered by Atlas」は,最新鋭のSPEEDER技術を搭載し,頭部基本画像の画質向上を実現したMRI装置である。


図1 最適なエレメント配置と開放的な視野空間
図1 最適なエレメント配置と開放的な視野空間

DWIとADCマップ

ASIST-Japanでは,DWIの標準化において,脳梗塞の的確な検出には画像観察における適切なウインドウ設定が必要であると報告されている。この報告に基づき,東芝ではb=0画像上に置いたROI内の画像値をもとに,WW/WLの絶対値を計算し,求められたWW/WL値を指定したDWI画像に自動的に適用する機能をコンソールに搭載した。これにより,梗塞巣の的確な検出を可能にしている。
DWIでは,組織のT2値が著明に延長している場合にT2 shine throughによって,急性期脳梗塞でなくても高信号となることがある。このため,ADC値が低下していないことの確認が重要となる。ADC値の計測やADCマップの確認作業はコンソール上ではもちろん,汎用のDICOMビューワに画像データを出力した際にも同様に閲覧や計測を可能にすることで,画像の扱いやすさと診断のしやすさを向上させている。

PWIとその解析機能

灌流画像(PWI)においては,DWI同様に,EPI法にSPEEDER技術の高いパラレルイメージング能力を応用することで,画像歪の軽減と撮像枚数の確保を実現している。
一般にPWIの解析は,汎用のどのDICOMワークステーションを使用しても,同等の結果が再現性高く出力されることが非常に重要である。
ASIST-japanでは,脳梗塞で問題となる造影剤の組織到達までの遅れ(delay)に依存しないロバストなアルゴリズムや,共通の表示方法が求められている。東芝では,解析アルゴリズムを組織TICの1次モーメントからdelayを除いた時間をMTTとし(ASIST-Japan推奨),CBVはカーブ下面積,そしてCBFはカーブの最大傾斜としている。表示方法には,推奨のカラーLUTと表示方法(WL=正常半球平均値,WW=2×WL)を採用している。
今後もstroke imagingの標準化に関する国際コンソシアムであるStroke Imaging Repository(STIR)に積極的に取り組む方針である。


図2 中大脳動脈閉塞(発症後1時間20分)
図2 中大脳動脈閉塞(発症後1時間20分)
基底核から放線冠領域に新鮮梗塞が見られる。
(画像ご提供:杏林大学医学部付属病院・土屋一洋先生)

図3 カラーマップ表示例(left MCA領域慢性期脳梗塞)
図3 カラーマップ表示例(left MCA領域慢性期脳梗塞)
(画像ご提供:宮崎大学医学部病態解析医学講座・ 小玉隆男先生)

※EXCELART Vantage,Atlas SPEEDERは東芝メディカルシステムズ株式会社の登録商標です。