シーメンス・ジャパン株式会社

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Technical Note

2011年7月号
循環器部門システムの最新動向

Cardiac ImagingのためのITソリューション ─多様化する画像データの統合管理と画像解析のために

山本宣治
イメージング&セラピー事業本部SYNGOビジネスマネージメント部

循環器領域の画像診断においては,多様な検査診断装置(以下,モダリティ)における検査方法から,目的に応じて適切な検査を選択することが求められている。ここでの適切な検査とは,陰性適中率(NPV)に影響を与える特異度(specificity),感度(sensitivity)や侵襲性を考慮した検査を意味していると考える。多様な選択肢から有効な検査を適切に行い,診断することで,患者への負担軽減を図るためであろう。この適切な検査に大きく寄与するモダリティの進化は,画像診断の臨床的アプローチを変化させ,診断から治療,その後のフォローアップという一連のワークフローに貢献している。しかし一方で,医療施設ではそれから生成される膨大で多様な画像データによって,ときにシステムを複雑化させてしまい,診断業務に負担を強いる環境も作ってしまう。
そこで本稿では,多様な画像データやそれらを適正に画像処理を行う多彩なアプリケーションを統合管理し,医師にとって効率的,かつ的確な画像診断業務が可能となりうるITソリューションについて述べたい。

■診断フェーズにおけるモダリティの進化

Cardiac Imagingに関連するモダリティのトレンドは,以下のとおりである。

1.CT装置
心臓CT検査における狭窄度診断は,NPVが高く,実臨床面において有効な手法だと認知されているが,さらなる時間分解能の向上や放射線被ばくの低減が課題となっていた。しかし,2管球CTの登場によって,胸部全体を心拍に依存せず,呼吸止めも不要な,わずか0.6秒という速度で撮影ができるようになり,時間分解能が大幅に改善できている。しかも,そのときの被ばく線量を1.6mSv以下に抑えることで課題面の克服に成功している。

2.SPECT装置
心筋血流シンチグラフィ(MPI)においては,検査時間の短縮が重要な課題の1つであった。現在では,開口補正付き画像再構成アルゴリズムを用いた処理や,心臓を中心に円軌道収集する高感度コリメータが開発され,撮影時間を大幅に短縮できるようになっている。これにより,狭窄部位の診断が容易になった心臓CT画像と,虚血状態を正確に診断できるMPI画像を3Dフュージョンさせ,形態情報と虚血部位の責任血管と支配領域とを容易に把握できるようになっている。

3.MRI装置
周期的な心臓の拍動や呼吸の動き,磁場の不均一によるアーチファクトの発生が,心臓MR検査における大きな課題であった。強力な傾斜磁場システムや多チャンネルコイルによるパラレルイメージングの高速化に加えて,共鳴周波数をわずかに変化させてバンディングアーチファクトが関心領域にかからないようにする技術などにより,心臓検査における問題が次々と克服されている。

4.超音波装置
心臓の壁運動評価だけでなく,心臓全体の3D画像がリアルタイムに撮像可能な製品も登場した。これによって,心房細動などの同期不全の患者にも3D心エコーの適応が広がり,心房中隔欠損や僧帽弁逸脱などの解剖学的な変化を伴う疾患の理解ができるようになることで,将来的にNPVの向上が期待される。

■ITシステムに求められるトレンド

上記のように,循環器領域の画像診断にかかわるモダリティの進化は,臨床的アプローチそのものに影響を与える一方で,膨大な画像データが生成されるばかりか,それを取り扱うアプリケーションやサブシステムも複雑化するという負の要因を生んでしまう。具体的には,Cardiologyとしてひとくくりになるべきところが,(1) 別々にデータを管理するサブシステムの混在化と,それ固有のGUIによる操作性の不統一,(2) モダリティ専用画像処理ワークステーションの点在化,(3) システム連携におけるインターフェースの多様化と特異化が起ってしまい,ときに利用者が操作面で不自由さを感じるのではないかという懸念を抱く。しかも,システムの維持管理面や拡張面で思い通りにならないことや,当初目標の形骸化といった悪影響を及ぼすことも考えられる。
この複雑さを解消させるために,少なくとも“混在化する画像データの統括管理”と“点在化する画像解析処理アプリケーションの一元管理”を行うことや,院内や部門内にある“さまざまなシステムと有機的に結合させる”ことによって,診断,治療,フォローアップという一連の業務効率を向上させ,臨床研究のためのデータ二次利用を可能とする環境の構築が,第一段階でのITシステムのゴールとなると考える。
つまり,Cardiac Imagingにおける多様な画像データが,(1) 統合管理されて,高速に利用者が求める任意のレイアウトで表示できる,(2) 統合管理される専用アプリケーションによって,短時間で最適に解析処理される,(3) 電子カルテや循環器レポートといった,情報系システムとシームレスな双方向の連携ができる,(4) ポータルサイトを介して,バイタルサイン情報やレポートといったさまざまなオブジェクトとも連動する,(5) セキュリティが担保されたネットワークを経由すれば,いつでも,どこでも,アクセスして参照し,手元で処理できる,ということではないかと考える。
それらを解決する1つのソリューションとしてシーメンスは,マルチモダリティ対応のサーバサイドポストプロセッシング技術を搭載した「syngo.via」を2009年11月に発表した。

syngo.viaがもたらす具体例

syngo.viaは,検査から画像診断が完了して,治療や処置に入れるまでの一連のターンアラウンドタイムを最短にするための中核システムであり,例えば,モダリティ側でトリプルルールアウト(急性冠動脈疾患,大動脈解離,肺塞栓)を同時に行う広範囲の撮影が短時間に行われて,以降のワークフローに関与する。つまり,生成された大量の画像データを高速に受信し,迅速に画像解析を自動処理して,それを医師や診療放射線技師に見せることを実現する*1
心臓CT検査を一例に挙げると,一般的にカルシウムスコア,冠動脈解析,心機能解析を行う施設が多く,通常これら3つの解析にはそれぞれ独立したアプリケーションが必要で,しかも,画像シリーズも3つに分かれていることが多い。ゆえに,それぞれの解析に必要なシリーズをその都度選択し,入れ替えて読み込ませながら手作業で処理を進めるため,非常に多くの手間と時間を要してしまう。しかし,syngo.viaの場合,“CT Cardiac”という処理用ワークフローがアサインされると,上記の3つの必要なデータをすべて自動で読み込み,必要かつ最適な画像に瞬時に処理し表示できる。しかも,VRTやCPR画像上で血管のセンターラインの自動抽出までが施され,必要な解析処理はステップを追うとそれに関連する処理画像が追随してくるようになっている。利用者は,画面上にあるステップを任意にクリックするだけですむという流れである。具体的には,Calcium(単純撮影)なら“CaScoring”,Coronary CTAなら“CTCoronary”,Multi Phaseなら“CardiacFunction”という処理エンジンが自動的に選択され,迅速にサーバ側で処理して画像を表示することを意味する。これにより,従来のようなデータ自体の入れ替えや,データそのものを探すといった面倒な作業が不必要となる(図1)。

図1 同一ワークフロー内にある3つの自動解析処理ステップ
図1 同一ワークフロー内にある3つの自動解析処理ステップ

このように,自動抽出精度にこだわり,短時間で必要な解析処理画像を表示させることにフォーカスしたシステムであるが,表示後の画像診断フェーズにおいて,画像データから得られる計測値データ(例えば,EDV,ESV,Ejection Fraction,Myocardial Massなど)も専用のレポートテンプレートに自動的に反映され,簡単に電子カルテやデータウェアハウス(DWH)に送信することを可能にするというITシステムの要件も備わっている。これによって,定量データが時系列的に管理できるだけでなく,臨床研究や教育のための二次利用が可能な環境構築に貢献できる(図2)。

図2 電子カルテやDWHとの連携図
図2 電子カルテやDWHとの連携図

さらに,2010年11月には,新たに2つのWebソリューションも発表し,タブレットデバイスで所見情報や画像情報も参照でき,MIP・MPR・VRTといった画像処理も可能となったことでますます活用の範囲を広げている*2


syngo.viaは,医療界に存在する人的リソースの不足,3D画像解析ノウハウの不足といったものを補い,付加価値の高い画像情報を臨床現場に迅速に提供することで,医療の質を測定する臨床指標(クリニカルインディケーター)にも貢献できると確信している。

*1 自動処理は事前に定めた使用者の設定に従う。
*2 タブレットデバイス等のモバイル端末は,各医療機関の責任のもとでの使用が前提。

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