ホーム inNavi Suite シーメンス・ジャパン Technical Note「Artis zee」シリーズ最新技術─循環器領域への取り組み
2011年4月号
Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点
血管撮影装置「Artis zee」シリーズでは,PCIに代表されるような虚血性心疾患治療や,心房細動アブレーションのような不整脈治療など,インターベンション治療支援のためのさまざまな機構,機能,アプリケーションを有することで,画像診断支援環境を提供している。本稿では,循環器領域におけるArtis zeeシリーズの取り組みとして,画質,被ばく低減プログラムならびに3Dアプリケーションについて紹介する。
■CLEAR
“CLEAR”は,FD(フラットディテクタ)の持つ性能を最大限に引き出し,インターベンションのための高画質を実現するために,さまざまな機能を統合した画像処理エンジンである(図1)。主に,画像収集(Image Acquisition),画像処理(Image Processing),および画像表示(Image Display)と3つのフェーズから成り立っており,それぞれの機能を簡単に説明すると下記のようになる。
図1 CLEAR
1.Image Acquisition
陽極蓄積熱容量を強化し,小焦点にフラットエミッタを採用した新型X線管「MEGALIX Cat Plus」を搭載して,より安定したシャープな画像を提供できる。また,線量条件をX線高電圧発生器へフィードバックする際の測光ポイントを,従来の中心部のみから画像全体に広げたユニバーサル測光域とすることで,画像輝度やコントラストを最適化している。
2.Image Processing
マルチ周波数処理を応用したノイズ低減によって,関心領域のコントラストを損なうことなく周囲のノイズを少なくし,加えて辺縁検出機能の搭載により,血管辺縁の鮮鋭度を保ったままスムージング処理を行うことで,滑らかな画像を提供する。さらに加算平均処理(リカーシブフィルタ)には,動きの有無によってそれぞれに適切な加算平均を実行することで,動きに強いノイズ低減処理も可能にしている。
3.Image Display
“CLEARchoice”(図2)という新機能を搭載し,施設ごと,または臨床科ごとのカスタマイズ,つまり画質の最適化を容易にしている。血管撮影装置がFDを搭載してフルデジタル化したことで,高画質の定義は一律ではなくなってきており,使用する施設,さらには臨床科によって高画質に求めるものが異なってきている。このようなニーズに的確に応えられるよう,プリセットされたテイストの異なるサンプル画像を比較しながら,最適な画質を選択できるようになっている。そのサンプル画像に格納されたパラメータを血管撮影装置本体に登録することで,より容易にニーズに応じたセッティングを行える。
図2 CLEARchoice
■CARE
“CARE”は,Combined Applications to Reduce Exposureの頭文字をとったシーメンス独自の被ばく低減プログラムの総称で,さまざまな機能・機構を組み合わせることで術者被ばく,および被検者被ばくの効率的な低減を実現している(図3)。0.5パルス/秒という低レートまで選択可能なデジタルパルス透視,透視不要のコリメータ・補償フィルタ設定機能や,付加フィルタの自動選択・挿入機構など,被ばくを抑える基本プログラム搭載するだけでなく,下記のようなユニークなプログラムも搭載し,検査中の無駄被ばくを少しでも抑えることで,総合的な被ばく低減を図っている。
図3 CARE
1.CAREposition
透視不要の位置決め機能である。テーブルやアームの移動に合わせて,LIH上に変更されたポジションをグラフィック表示することで,透視することなく被検者の再位置決めを可能にしている。
2.CAREguard
複数のしきい値を設定可能な被検者線量超過の警報機能である。Low/Medium/Highの3種類のしきい値を設定でき,被検者線量積算値がそれぞれの設定値に達すると,画面表示や音で通知して術者に注意を促すことができる(図4)。
図4 CAREguard
■syngo IZ3D
冠動脈をとらえた2方向の撮影画像から,立体的な冠動脈画像を構築する3Dアプリケーションで,従来搭載していた“syngo IC3D”の後継アプリケーションである。血管径や,狭窄度・分岐角度・病変長などを正確に測定できる機能はもちろんのこと,オートモードのみであった血管辺縁のトレースをマニュアルで修正する機能を追加することで,PCI治療計画時の応用範囲を広げている(図5)。
図5 syngo IZ3D
アブレーション治療時の画像支援を主目的とした,拍動する心臓のCTライクイメージングを可能にした3Dアプリケーションである。専用の回転撮影プロトコルと,自動セグメンテーションを行う“syngo InSpace EP”とを組み合わせることで,ECG同期を併用しなくても左心房の3D画像を構築できる。事前撮影されたマルチスライスCTデータを用いる場合と異なり,被検者位置情報補正(レジストレーション)作業を行うことなく左心房3D画像と透視画像とのオーバーレイ表示が行えるなど,よりスムーズなワークフローを可能にしている(図6)。
図6 syngo DynaCT Cardiac
今回は循環器領域のインターベンションにおいて,基本ではあるが今後ますます重要になると思われる,画質と被ばく低減という基本機能を中心に,血管撮影装置Artis zeeの技術を紹介した。今後も,高度なインターベンション治療を総合的に支援するシステムおよびアプリケーションの開発を促進していきたい。