シーメンス・ジャパン株式会社

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Technical Note

2011年4月号
Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

CT−「SOMATOM Definition Flash」における最新Cardiacイメージング

早川 護
イメージング&セラピー事業本部
CTビジネスマネージメント部

シーメンスでは,マルチスライスCTの黎明期よりCardiacイメージングにおける時間分解能の重要性を挙げてきた。また,検査精度や臨床意義からも分割画像再構成法の弊害は明らかであり,ハードウェア時間分解能(ハーフ再構成)の向上を製品開発の主軸の一つとして据えてきた。近年では,SCCT(Society of Cardiovascular Computed Tomography)から発刊された冠動脈CTのガイドラインによってハーフ再構成の重要性は広く周知され,シーメンス以外の各社のトーンも変化してきている。
CTにおける時間分解能向上のベクトルは,ガントリー回転速度の向上はもちろんであるが,マルチソース化へ収斂されDual Source CT(DSCT)「SOMATOM Definition」が開発された。さらに進化した第二世代のDSCTである「SOMATOM Definition Flash」(図1)は,quarter-beat(1/4心拍)・1mSv以下での心臓CT検査の実現や,体動・息止め不良に対するCTの脆弱性の克服も実現されている。
本稿では,SOMATOM Definition Flashに搭載されている多数の最新技術の中から,Cardiacイメージングのトピックスを紹介する。

図1 SOMATOM Definition Flash フルスキャン0.28秒,0.6mm×128スライスのDual Source CT
図1 SOMATOM Definition Flash
フルスキャン0.28秒,0.6mm×128スライスのDual Source CT

■Flash Spiral:High Pitch Double Spiral Scan (高速二重螺旋状スキャン)

一般的なCT(=シングルソース)でのスパイラルスキャンによるデータ収集は,サブミリ・アイソトロピック性がオーダされることや,ウィンドミルに代表されるスパイラルアーチファクトの抑制を目的に,ピッチは1.5が限界とされている。これは,体軸方向のデータサンプリングギャップの拡大による画像劣化を回避する措置である。
一方,SOMATOM Definition Flashでは,独立する2つのX管球-検出器システムがおのおの螺旋軌道を描きながらデータ収集を行う。このため,1.5以上のピッチであっても,体軸方向のデータサンプリングギャップを互いの軌跡が補い合うことにより,一定以上の画質を維持したピッチを一般的なCTの2倍以上で可能としている(図2)。加えて,時間分解能は75ミリ秒を実現しており,DSCTの特長である高心拍・不整脈症例や,高度な石灰化病変に対するロバスト性はさらに向上していると言える。

図2 Flash Spiral によるデータ収集スキーム A,B2つの管球からなる螺旋軌道で,高速ピッチにおいても ギャップレスなX線データ収集が可能。
図2 Flash Spiral によるデータ収集スキーム
A,B2つの管球からなる螺旋軌道で,高速ピッチにおいても ギャップレスなX線データ収集が可能。

Flash Spiral Cardioは,上記の技術を心電同期撮影と併用して,ピッチ3.4にてスキャンするモードである。ガントリー回転速度0.28秒との相乗効果として,秒間460mm以上での撮影が可能となる(図3)。心臓CTの撮影範囲を120mm程度と仮定すると,約0.25秒で撮影が完了する。心拍数が60台であれば,拡張末期の心位相のみターゲットとしたプロスペクティブな撮影が可能となり,管電圧100kVの併用で1mSv以下での検査が実現されている1),2)

図3 Flash Spiral Cardio ピッチ3.4,460mm/s以上の撮影速度により, 拡張末期のみをターゲットにした撮影が可能。このときの時間分解能は75msを実現。
図3 Flash Spiral Cardio
ピッチ3.4,460mm/s以上の撮影速度により, 拡張末期のみをターゲットにした撮影が可能。このときの時間分解能は75msを実現。

■心臓領域でのDual Energy

Dual Energyイメージングは,異なる2種類のX線エネルギーで撮影されたデータから,その変化率を線減弱係数に反映させるイメージング手法である。すでに,実践的なDual Energyイメージングが可能なDSCTでは,心電同期下のよるDual Energyモードでの撮影が可能であり,Dual Energyアプリケーションを応用することで心臓領域のDual Energyイメージングが可能である。
現在,心筋の血液灌流情報の取得を目的とした“HeartPBV”が専用ソフトとしてリリースされており,Three-material decompositionを利用し心筋における造影剤分布マップが取得可能である(図4 a)。そして,心臓専用のソフトではないが,Two-material decompositionを利用した“Bone Removal”アプリケーションを冠動脈に応用することで,石灰化除去が可能である(図4 b)。
SOMATOM Definition Flashにおける心臓領域のDual Energyイメージングでは,1回の撮影で75ミリ秒の時間分解能のモルフォロジカルな情報とファンクショナル情報の取得が可能である。また,仮想的単純画像の再構成や,任意の割合で造影剤比率を変化させたヨードウエイト画像,任意の割合で低管電圧と高管電圧の画像をミックスしCNRを変化させた画像などの再構成が可能であり,目的に応じて付加情報を引き出すことで新たな知見が得られる。

図4 心電同期Dual Energyイメージング a:75ms時間分解能の3D画像と心筋血流画像(低灌流域が描出) b:Bone Removalを用いた冠動脈石灰化除去画像(下段)
図4 心電同期Dual Energyイメージング
a:75ms時間分解能の3D画像と心筋血流画像(低灌流域が描出)
b:Bone Removalを用いた冠動脈石灰化除去画像(下段)

■被ばく低減

DSCTが,一般的なCTと比較して心臓CTにおける被ばくが低いことはよく知られている3)。この要因としては,心拍に依存しない高い時間分解能が得られるため,分割再構成の使用やピッチをむやみに低下させる必要がないこと,および2管球よる高出力を有効に活用し,積極的に低電圧での撮影を選択することが可能なことが挙げられる。また,前述したFlash Spiral Cardioの適用により撮影時間は飛躍的に短縮することで,1mSv以下での心臓CT検査の実践が可能となる。加えて,すでにSOMATOM Definition Flashでは,逐次近似法を応用した画像再構成法を実装することが可能であるため,さらに40〜60%程度の被ばく低減が実現されている4)

シーメンスは,Cardiacイメージングにおいても常に新たなベンチマークを樹立している。SOMATOM Definition Flashがさらに進化・発展し,新たなクライテリアを創造することでより診療へ寄与できると確信する。

●参考文献
1) Lell, M., et al. : Prospectively ECG-triggered high-pitch spiral acquisition for coronary CT angiography using dual source CT ; Technique and initial experience. Eur. Radiol., 19・11, 2576〜2583, 2009.
2) Leschka, S., et al. : Diagnostic accuracy of high-pitch dual-source CT for the assessment of coronary stenoses ; First experience. Eur. Radiol., 19・11, 2896〜2903, 2009.
3) McCollough, C.H., et al. : Dose Performance of a 64Channel Dual Source CT Scanner. Radiology, 243・3, 775〜784, 2007.
4) Bittencourt, M.S., et al. : Iterative reconstruction in image space(IRIS)in cardiac computed tomography ; Initial experience. Int. J. Cardiovasc. Imaging, 2010(Epub ahead of print).
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