ホーム inNavi Suite シーメンス・ジャパン Technical Note MVCBCTの新たなる扉を開くNew Solution − In-Line kViewについて
2011年3月号
これから期待される放射線治療技術の近未来構想
定位放射線治療,強度変調放射線治療(IMRT)など高精度放射線治療を行う上において,治療計画時と治療直前でのアイソセンターにおける位置照合および位置修正を正確に行うことの重要性が増している。画像誘導放射線治療(IGRT)の技術として,各メーカーからそれぞれ特長のある技術を搭載した装置が開発されているが,弊社治療装置では“One Source, One Beam, One Detector”のコンセプトのもと,他に類のないMega Voltage Cone Beam Computed Tomography(MVCBCT)という画像取得技術を「MVision」として製品化している。 現状のMVX線での画像取得方法でも,IGRTを行う上で十分な画像抽出が可能であり,50台を超えるシステムが国内で順調に稼働しているが,さらなる画質向上を提案するべく,本稿では,新たに開発した「In-Line kView」を紹介する。 ●In-Line kViewの特徴 1)構造(図1) 図1のとおり,構造としてはカーボンターゲットと薄型モニターチェンバーのみの非常にシンプルな構成である。通常,弊社放射線治療装置では,6本の電子線エネルギーの出力が可能である。その構造は,フラットニングフィルターやミラーなどで構成されているが(図1上の構造図),そのうちの1本の電子線についてIn-Line kView対応とし,約4.2MeVの電子線ビームをカーボンターゲットに入射させ,そこで発生したX線ビームをフラットニングフィルターなしで使用するというものである(図1下の構造図)。
2)特性 In-Line kViewと6MVX線で撮影された画像を同一線量で比較した場合,In-Line kViewは,診断用X線のエネルギーに近い低エネルギーX線(kVX線)の割合が大幅に増大する一方で,ミラーなどからの散乱X線は大幅に減少する。具体的には,カーボンターゲットを使用することで低原子番号のターゲットから発生し,フラットニングフィルターを介さない非平坦なX線は,高原子番号のターゲットから発生しフラットニングフィルターを透過してきた平坦なX線よりも,低エネルギーX線の割合が多くなる(図2)。
3)画質改善 特性で述べたとおり,カーボンターゲットの使用によるコンプトン散乱(診断)領域の増加と,フラットニングフィルターやミラーなど散乱X線を発生させる要因を排除したことによる散乱線の低減を行った結果,ファントムでのIn-Line kViewと6MVX線での画像を比較してみると,6MVX線でのファントム画像では,ノイズが多く小さな目標物は見えない,または見づらくなっている。(図3, TBL15cGy)一方,In-Line kViewで取得したファントム画像では,ノイズの改善が明らかであり,小さい目標物も認識可能な画像の出力が可能となっている(図3,IBL15cGy)。また,従来のMVCBCTと比較し,低線量で高画質が得られるようになり約40〜60%の被ばく削減に成功した。
4)品質管理 In-Line kViewでは,あくまで治療ビームを使用した取得画像の改善が可能となる技術であるので,治療装置としては大幅な変更点はない。そのため,In-Line kViewを搭載している装置であっても,追加の品質管理作業は不要で,いままでのMVCBCTと同様の品質管理作業内容となる。これにより,業務負荷が増加傾向にある放射線治療の現場の業務軽減の一助となるものと考える。 |