シーメンス・ジャパン株式会社

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Technical Note

2009年4月号
Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

CT−The Next Stage of Dual Source CT:SOMATOM Definition FlashによるCardiac Imaging

谷川 光
マーケティング本部CT事業部

世界初のDual Source CTである「SOMATOM Definition」は,高精度な心臓CTや,新しいイメージングであるDual Energy Imagingなど広い分野で現在も高い評価を獲得し続けている。そしてシーメンスは,RSNA 2008において,さらなる進化を実現した「SOMATOM Definition Flash」(図1)を発表した。
本稿では,本製品に搭載された多数の新技術の中からCardiac Imaging関連のトピックスを紹介する。

図1 SOMATOM Definition Flash
図1 SOMATOM Definition Flash

■ 心臓CTにおけるDual Source CTの優位性

心臓CTにおいては,時間分解能が最も重要なファクターである。SOMATOM Definition FlashはDual Source構成に加え,ガントリー回転速度を0.28sec/rotとさらに高速化させることにより,75msecもの高い時間分解能を実現している。高心拍や不整脈に高度なレベルで対応し,高いロバスト性を備えた画像を提供するだけでなく,心拍抑制のためのβ-ブロッカーなど薬剤の使用や被ばくといった被検者への直接的な負担を減少させ,心臓CTの普及,精度向上に大きく貢献する。
画像処理においても,最適心位相を自動抽出する“Cardio Best Phase”を搭載し,シンプルな操作で高品質な画像を作成可能であり,ワークフローの改善も可能である。

■ Flash Spiral

Spiral Scanの成り立ちを再確認すると,ディテクター幅,ピッチ,ガントリー回転速度で規定される撮影速度は,画質とのトレードオフの関係にあり,ピッチを高く設定すると体軸方向のデータサンプリング間隔は広くなり,分解能が劣化する(図2)。
心臓CTにおいては,いわゆるMulti Sector Reconを使用する場合,データの冗長性を担保する必要性からピッチをきわめて低く設定せざるを得ず,撮影時間の延長ばかりか被ばくの増大をも招くこととなる。
Dual Source CTでは,2つのX線系が約90°の角度で配置されており,独立した2本のラセン軌道を描き,体軸方向にはガントリー回転約90°の時間分だけずれている。そこで,2本のラセンが互いの中間を通る軌道を描けば,体軸方向のデータサンプリング間隔を保ったまま2倍以上のピッチを適用できることになる(図3)。この原理を利用した“Flash Spiral”を搭載したSOMATOM Definition Flashでは,ピッチ3.2を適用でき,0.28sec/rotのガントリー回転速度,および検出器の128スライス化との相乗効果によって,約43cm/secにも達する撮影速度を実現している。
Flash Spiralは多くの部位において,呼吸性移動や,特に小児の体動に対するCTの脆弱さを解決するものとして期待され,心臓CTにおいては,約0.25秒の短時間撮影とともに1mSv以下の低被ばくを実現する。画質の面でも,体動,拍動の影響がさらに減少することにより,アーチファクトの低減,空間解像度の向上,時相差による造影効果の不均一の解消などが可能である。


図2 Single Source CTの描くラセン軌道
図2 Single Source CTの描くラセン軌道
撮影速度と画質とにはトレードオフの関係がある。
また,利用可能なピッチに限界がある。
図3 Flash Spiralの概念図
図3 Flash Spiralの概念図
2つのX線系が互いの中央を通る位置にラセン軌道を描くことにより,
サンプリング間隔を維持したまま2倍以上のピッチを適用可能とする。

■ Dual Energy Heart PBV with full Temporal Resolution

Dual Energy Imagingは,2つのエネルギーのX線を照射した場合に,物質によってCT値の変化の挙動が異なることを利用して,複数の物質を分離・分類することを基本とする。この原理を応用すると,Single Energyでは画像化が困難である,ごく少量の造影剤の分布を高感度でとらえることができるため,従来から肺野内の造影剤分布を画像化する“Lung PBV(Lung Perfused Blood Volume)”が広く用いられている。同様に,心臓CTにDual Energy Imagingを適用した“Heart PBV(Heart Perfused Blood Volume)”では,心筋内の造影剤分布を画像化する。
SOMATOM Definition Flashでは,一度の撮影で時間分解能75msecゆえの高精度冠動脈CTA画像とHeart PBV画像の両方を得ることができる(図4)。


図4 SOMATOM Definition Flashの臨床画像
図4 SOMATOM Definition Flashの臨床画像
Heart PBVによる心筋内造影剤分布の画像化(左)と,高時間分解能冠動脈画像(右)を同時に得ることが可能である。

■ The Next Stage of Dual Source CT:SOMATOM Definition Flash

シーメンスの製品開発の活発さは頂上に登ることではなく,頂上に立ち続けることをそのモチベーションとしている。今回,“The Next Stage of Dual Source CT”をめざし,SOMATOM Definition Flashとして結実させたことはその大きな成果である。
今後とも,シーメンスはイノベーションリーダーとして,技術的な革新性と臨床的な有用性を追求していく所存である。



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