シーメンス・ジャパン株式会社

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Technical Note

2009年1月号
シリーズ特集 scene vol.2−rt-PA時代における急性期脳梗塞の画像診断:標準化に向けて

MRI−脳卒中画像診断におけるMRI装置の技術

大西 貴弘
マーケティング本部アプリケーション部

脳卒中画像診断においてMRIは重要な役割を果たしており,2005年にアルテプラーゼ(rt-PA)による血栓溶解療法が認可され,その重要性はますます高くなってきていると考えられる。
本稿では,脳卒中画像診断に寄与する弊社MRIのアプリケーションを中心に紹介する。


非造影perfusion weighted imaging

MRIでのperfusion weighted imaging(PWI)は,一般にガドリニウム(Gd)造影剤を用いた方法と,流入血液にRFパルスを用いて磁気的な標識を行う非造影の方法に大別することができる。
後者のarterial spin labeling(ASL)は,1992年にDetreらによって提案され1),現在では定量的なデータを得るため,標識の方法,撮像タイミングなどに関してさまざまな改良工夫されたQUIPSS,QUIPSSU,PICOREがあり,弊社ではQUIPSSUの改良バージョンであるQ2TIPS(QUIPSSU with Thin-Slice TI1 periodic Saturation)2),3)を用いて非造影PWIを行っている(図1 a)。
非造影のPWIに限らず,連続したデータから解析を行う場合に問題となる点として動き(体動)が挙げられる。一般的にPWIにおける体動補正は,撮像後に後処理にて補正する方法である。しかし,撮像時の動きは撮像面が励起パルス受けないことを意味し,画像の信号強度変化があるため,測定結果の信頼性が劣化することになる。それを解決する方法として,撮像中にリアルタイムに動きを補正する技術である“3D PACE(Prospective Acquisition Correction)”を搭載し,信頼性の向上を行っている4)図2)。また,撮像後は後処理なしにperfusion mapおよび,relCBF-mapが自動作成される。
一方,造影剤を用いたPWIでは,撮像後にtime to peak(TTP)などが自動作成される。relCBV,relCBF,relMTT,TTPのmapは,後処理にて解析ソフトを用い作成することが可能であり,カラースケールはASIST-Japanより提唱されているスケーリングを選択することが可能になっている。また,解析方法においても現在,標準化に向けて改善を行っている。

Diffusion tensor imaging

拡散強調画像(DWI)は,脳卒中画像診断に限らず,画像診断において欠かせない存在であり,6軸以上のMPGで得られるDTIではtrace画像のみならず,FA-map,tractographyなどが得られ,脳神経領域で非常に重要な役割を果たすと考えられる。また,FA-map,tractography,ASLにて得られるrelCBF- mapを解剖学的画像・MP-RAGEと融合(fusion)することも可能である(図2)。


図1 3D PACE併用ASL
図1 3D PACE併用ASL
a:Q2TIPS(pulsed ASL),TR/TE=3000/13ms,matrix=64×64,slice thickness=5mm,time acquisition=4min10s,measurements=100(tagged=50,untagged=50),MAGNETOM Trio
b:3D PACEなしのrelCBF-map
c:3D PACE併用のrelCBF-map。体動による影響が少なく画質が向上している。

図2 DTIで得られるADC-map,trace画像,FA-map,tractgraphy,ASLで得られるrelCBF-mapと解剖学的画像(MP-RAGE)との融合(fusion)
図2 DTIで得られるADC-map,trace画像,FA-map,tractgraphy,ASLで得られるrelCBF-mapと解剖学的画像(MP-RAGE)との融合(fusion)
a:ADC-map b:trace画像 c:FA-map
d:tractgraphy,FA-map,MP-RAGEとのfusion
e:tractgraphy,relCBF-map,MP-RAGEとのfusion

今回紹介したアプリケーションを含め,撮像条件や画像処理等における標準化,高磁場MRIを含めた臨床に役立つ開発が重要になってくると考えている。


●参考文献
1) John, A. Detre, et al. : Article perfusion imaging. MRM, 23, 37〜45,1992.
2) Wong, E.C., et al. : Quantitative imaging of perfusion using a single subtraction(QUIPSS and QUIPSS II). MRM, 39, 702〜708, 1998.45,1992.
3) Luh, W.M., et al. : QUIPSSU with thin-slice TI1 periodic saturation ; A method for improving accuracy of quantitative perfusion imaging using pulsed arterial spin labeling. MRM, 41, 1246〜1254, 1999.
4) Thesen, S., et al. : Prospective Acquisition Correction for head motion with image based tracking for real time fMRI. ISMRM, 2000.