ホーム inNavi Suite シーメンス・ジャパン Technical Note 診断用CT搭載型ハイブリット装置時代の撮影・画像処理技術
2008年4月号
Abdominal Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点
核医学画像診断装置は,PETもSPECTも診断用CTを統合したハイブリッド装置の普及が進んでいる。本稿では,腹部領域のハイブリッド時代の核医学撮影技術および画像処理について,最新情報を述べる。 |
■ TruePoint PET・CT Biograph 40/64の登場 診断用マルチスライスCTを搭載した核医学ハイブリッド装置による画像診断では,核医学画像に加え,連続して撮影された単純CTや造影CTも含めて読影される。 |
図1 TruePoint PET・CT Biograph 40/64 |
図2 SymbiaT6の臨床画像(123I MIBG SPECT・CT検査) Neuroblastoma,6歳,男性 (Data courtesy of BC Children’s Hospital Vancouver, British Columbia) |
■ 新しい画像再構成技術によるPET画質の向上 一般的に,PET画像の分解能は劣化する。ガントリ辺縁部では,被検者から発せられる消滅放射線(Photon)の検出器へ入射する位置と,検出器が発光する位置とのずれが大きくなるためである(図3)。画像再構成時に,そのより精度の高い入射情報を含めることで分解能の改善が見られる。図4に,入射情報の有無による分解能均一性の違いを示す。入射情報がない場合は,視野中心部から辺縁部にかけて分解能の劣化が見られるが,入射情報を加えることにより,中心部と辺縁部の分解能の差がほとんど見られないことがわかる。また,ガントリ中央部からのPhotonに対しても発光場所の誤認識が最小化され,結果として中央部での分解能も改善される。 |
図3 ガントリ辺縁部で分解能が劣化(概念図) |
図4 再構成法による分解能均一性の違い |
図5 画像再構成法の違いによる画像比較(18FDG-PET・CT検査) 上段:入射情報のない再構成画像 下段:入射情報を加味した再構成画像 Lymphoma,64歳,男性 (Data courtesy of University of Texas Southwestern Medical Center, Dallas, TX) |
■ 呼吸同期撮影技術の向上と放射線治療計画との連携 一般に,PET・CT検査は撮影時間に15〜20分を要するため,通常安静呼吸下で撮影される。このため,FDG-PET画像の病変部は装置自身の空間分解能の限界に加え,撮影中の被検者の動きや呼吸性の臓器移動により,病変部を示す範囲が実際の腫瘍サイズより大きくなる。特に,肺や腹部ではこの動きによる影響を受けやすい。図6は,呼吸同期法によるPET・CT画像である。呼吸同期撮影は,画像上の呼吸性の動きを抑えることにより病変部のコントラストを向上させ,かつFDG集積の範囲をより正確に反映する。最も重要な被検者の動きの把握は,図6の下段に示す“圧センサ”で感知する。固定ベルトの所定位置に取り付け,被検者からのわずかな圧力を感知しシステムにトリガー信号を出力する。すでに,シーメンス製CTにて,全世界で使用している技術をPET・CTに展開したものであり,多くの稼働実績と安定性も兼ね備える。 |
図6 呼吸同期撮影 |
図7 放射線治療計画装置との連携 |
■ TrueV技術による体軸方向の視野拡大 体軸方向のPET検出器の配置を3-Ringから4-Ringに増やし,視野拡大を図った。これが,TrueV技術である。図8で示すように,検出許容角度が広がるため,三次元収集における最高計数率が約78%向上している。また,視野の拡大はダイナミック撮影時などのポジショニングミスのしやすさにもつながる。さらに,視野が拡大したことにより,1bedや2bedのみの撮影で,体軸方向に広い観察範囲を実現するため腹部領域の遅延像撮影にも適していると言える。 |
図8 体軸方向の視野拡大 |
このように最新のPET・CT装置には,腹部領域においても適用できるさまざまな撮影技術や画像再構成技術が搭載された。これらの技術が,日常の臨床の現場で患者に役立つ情報として活用されることを期待したい。 |