ホーム inNavi Suite シーメンス・ジャパン 別冊付録 MAGNETOM syngo Tissue4Dの機能と特長
syngo Tissue4Dの機能と特長
シーメンスMRIの最新技術紹介
新しくリリースされた解析ソフトウェア「Tissue4D」は,DCM-T1WIを用いた新たな薬物動態解析が可能なソフトウェアとして近年,注目を浴びています。本稿ではTissue4Dの機能と特長,および有用性について紹介します。
Tissue4Dによる薬物動態解析
造影剤を用いたT1WIダイナミック検査における信号強度を用いた造影パターン診断は,さまざまな腫瘍の良悪性鑑別に利用されており,その有用性については周知の事実と言えます。しかし,その信号強度は撮像パラメータや撮像方法,装置性能,造影剤の種類や緩和能など,さまざまな不確定因子が数多く含まれており,共通した指標となり得ないのが現状です。
近年,造影前後の信号強度から組織中の造影剤濃度を算出する,薬物動態解析が注目されています。組織の血管内皮細胞からの透過性やcapillary surface area,lesion leakage space,腫瘍などによる新生血管形成などを推定することができ,組織の良悪性診断に加え,早期治療効果判定や血管内皮増殖因子(VEGF)との関連などを知る一種の臨床的バイオマーカーとして,その有用性が世界的にも多く報告されています1)〜3)。
Tissue4Dでは薬物動態解析法として,プラズマコンパートメントと血管細胞外コンパートメントを有した2つのコンパートメントモデル解析であるTofts modelを採用しています4)。
Tissue4Dでは,血管内のプラズマ中の造影剤が毛細血管を通って血管や細胞外腔の間質に漏れ出す移行時間(Ktrans:min−1)
や,細胞間隙から毛細血管へ戻る移行時間(kep:min−1),血管細胞外腔の容積率(ve),Area Under the Curve(iAUC)を簡便に算出することができます。KtransはPermeabilityとBlood Flowに,Veは細胞密度に関連し,kep= Ktrans/veの関係が成り立ちます。これらのシンボルを数値として,あるいはヒストグラムの変化として経時的に診断することで,より精度の高い腫瘍組織内血流動態の把握や治療薬剤の効果判定など,臨床現場のニーズに即した検査結果を臨床側に提供できると考えられています5)(図1)。
Tissue4Dの手順
Tissue4Dの手順を簡単に説明すると,まず,相互相関および共役勾配法を用いてダイナミック検査における各時相の動きを補正し,次に解剖画像(例えば,T2強調画像)に対して位置補正を行います。その後,動脈入力関数を算出するために,対象組織の近傍を走行している動脈にROIを設定し,血中造影剤濃度(Cp(t))を多項の指数関数を用いて近似し(式[1])6),7),double FAシーケンスで得られたT1map画像(図2)からT1 calibrationを行います8)。
Cp(t)=D[α1 exp(-m1t)+α2 exp(-m2t) ……[1]
その後,造影剤の種類と量を選択し,対象をVOIやROI,pixel単位を用いて解析します(式[2])4)。
dct(t)/dt=Ktrans*cp(t)-kep*ct(t) ……[2]
解析結果は,Ktrans,ve,kep,iAUCの最大値,平均値,最小値が算出されます。また,それぞれのマップやヒストグラムも自動で出力することが可能です(図3)。
●参考文献 | |
1) | Mohammad,H.,et al.: J.Magn.Reson.Imaging, 28, 588〜597, 2008. |
2) | Ch, S.,et al.: Am.J.Neuroradiol.,27,409〜417,2006. |
3) | O'Connor,J.P.B.,et al.: Br.J.Cancer,96,189〜195,2007. |
4) | Tofts, P.S.,et al.: Magn.Reson.Med., 17,357〜367,1991. |
5) | Padhani, A.R.,et al.: NMR Biomed., 15, 143〜153,2002. |
6) | Fritz-Hansen, T.,et al.: Magn. Reson. Med.,36,225〜231,1996. |
7) | Geoff, .J.M.P., et al.: Magn. Reson. Med.,56,993〜1000,2006. |
8) | Fram, E.K., et al.: Magn.Reson,Imaging,5,201〜208,1987. |