座長の言葉
循環器領域におけるDual Source CTの最大の特長は,高い時間分解能にほかなりません。現在,冠動脈撮像時にβブロッカーの使用が一般化されていますが,急性期あるいはLADの完全閉塞症例,不整脈症例など心拍コントロールが困難な症例において,Dual Source CT の2管球が生み出す83msという高い時間分解能が圧倒的なパフォーマンスを実現し,βブロッカーなしでも撮影可能になっています。
さらに,2008年のRSNAで発表された128スライスDual Source CT「SOMATOM Definition Flash」は,75msの時間分解能と,High Pitch Double Spiral Scan(46cm/sの撮影速度)を用いた被ばく線量の大幅な低減を実現し,注目を集めました。昨2009年の第1回Definition Symposiumでは,わが国でDefinition Flashの第1号機を導入した榊原記念病院の井口信雄先生に初期使用経験をご講演いただき,衝撃を受けた方も多かったのではないかと思います。あれから1年が経過した現在,多くの施設にDefinition Flashが導入されています。本日は,循環器領域における代表的な施設から,その使用経験をお聞きできる絶好の機会と考えます。
後半のSession U:Dual Energy Imagingでは2つのポイントがあります。1つは,128スライスDual Source CT「SOMATOM Definition Flash」に搭載された新技術であるSelective Photon Shieldにより,2つの管電圧のX線スペクトルの分離,すなわち“キレ”が良くなったことです。もう1つは,やはりSelective Photon Shieldにより,Dual Energy Imagingで懸念される被ばく線量の増加の解消が実現すると思われることです。
また,Dual Energy Imagingは,material decompositionをベースに,高管電圧と低管電圧のデータを合成した画像(composite image)や,CT値によって合成の割合を変化させるoptimum contrast,実効エネルギー換算による仮想のmonoenergetic imageなどを作成することが可能になっています。これらの多様・多彩な画像を臨床にどのように生かしていくかは今後の課題であり,本日の講演内容に期待したいところです。