ホーム inNavi Suite シーメンス・ジャパン特別企画Digital Mammography Advanced Seminar シーメンスのデジタルマンモグラフィから学ぶ検査&読影のノウハウ
Answers for life
Digital Mammography Advanced Seminar
シーメンスのデジタルマンモグラフィから学ぶ検査&読影のノウハウ
シーメンス・ジャパン(株)は2011年8月20日(土),ロイトン札幌(北海道札幌市)において,「Digital Mammography Advanced Seminar」を開催した。日本人の乳がん罹患率が年々上昇する中,シーメンス・ジャパンでは,デジタルマンモグラフィ,超音波診断装置,MRなどのモダリティに加え,体外診断薬事業も含めて,乳がん診療におけるトータルソリューションを提供し続けている。今回のセミナーは,その活動の一環であり,乳がんの早期発見・治療による死亡率の減少をめざす姿勢の表れとも言える。同社は昨年と今年,東京都内において「Breast Imaging Workshop」を開催した。このワークショップと同様の形式で行われた今回のセミナーでは,ヘルスケアプロダクト事業部XP-SPマーケティング部部長の岡野晶彦氏の挨拶の後,基調講演,読影講習やポジショニング検討会などが設けられた。当日は,読影医と診療放射線技師約80人が参加。プログラムに沿って,デジタルマンモグラフィの検査と読影のノウハウを学んだ。
基調講演
●デジタルマンモグラフィの現状
演者:石橋忠司 氏(東北大学大学院医学系研究科医学部保健学専攻画像診断技術学分野教授)
石橋氏はまず,デジタルマンモグラフィのX線管球,検出器,画像処理という基本的な仕組みを説明し,ハードコピーまたは,ソフトコピーで診断が行われると述べた。そして,AJR誌など欧米の文献から,マンモグラフィ検診の有用性を示した上で,フィルム-スクリーンとデジタルを比較した文献も紹介した。また,国内の乳がん検診の歩みとマンモグラフィ検診の状況についても触れた。さらに,デジタル化の状況を紹介し,2007年には全国1900施設で1932台の装置が稼働していると報告。マンモグラフィ検診精度管理中央委員会が研修会参加施設を対象に行った2011年の調査結果も示し,89%の施設がデジタル化していると紹介した。
続いて石橋氏は,デジタルマンモグラフィの技術解説を行った。初めに,アナログとデジタルにおける撮影原理の違いを説明。シーメンス・ジャパンの「MAMMOMAT Inspiration」におけるトモシンセシス撮影など,各社の装置の技術的特徴を解説した。その上で,デジタルマンモグラフィの鮮鋭度を評価するMTFを取り上げ,MTFグラフの右上方に位置する曲線ほど鮮鋭度が高いなど,MTF曲線の見方を説明した。また,デジタルウィナースペクトル(NNPS)の解説も行い,低空間周波数領域はスクリーンモトルが影響し,高空間周波数領域は粒状度が影響することなどを説明した。石橋氏はDQEにも触れて,検出器がX線光子をどの程度無駄なく捕獲し,画像構成に役立たせているかを示す尺度であると述べて,その算出方法や各社製品の数値を比較したグラフを示した。
さらに,石橋氏は,画像処理に関する説明も行った。ソフトコピー診断を行うデジタルマンモグラフィでは,モニタが重要となることから,画像の情報量に応じた高い解像度が必要であるとし,モニタサイズの説明や圧縮データと非圧縮データを比較した画像を示した。また,サブピクセルの表示技術や,立体視ができるハーフミラー方式などのモニタの表示技術を紹介した。このほか石橋氏は,12bitのマンモグラフィ画像データが10bit,11.5bitそれぞれのLUTを持つモニタに表示される場合の階調補正技術なども解説。加えて,モニタの精度管理を行っていくために,DICOM Part 14補正が可能なモニタが必要であることを説明した。
また,石橋氏は,最新技術として,デュアルエナジーイメージングやCADについても取り上げるなど,デジタルマンモグラフィの将来展望を示して講演を終えた。
デジタルマンモグラフィ基礎講座
●乳がんの画像診断 〜検診から精査,治療効果判定まで〜
診療放射線技師向けのプログラム「デジタルマンモグラフィ基礎講座」では,シーメンス・ジャパンのヘルスケアプロダクト事業本部の大塚恭一氏が講師を務めた。大塚氏はまず,アナログとデジタルの考え方を示した上で,一般撮影装置とマンモグラフィ装置の設計やX線管球の違いについて説明した。また,マンモグラフィの技術の歩みも紹介し,フィルム−スクリーンの装置からCRシステムの登場,その後,蛍光体とセレニウムFDが開発されたことなどを概説した。大塚氏は,デジタルマンモグラフィの場合,raw dataから診断用の画像を生成する点にも触れ,デジタルの“落とし穴”として,数字のマジックに陥りやすい,環境整備を忘れてしまう,アナログと管理が異なるという3点を指摘した。
さらに,大塚氏は,FDの原理についても説明し,ピクセルサイズがX線量や画像に与える影響を解説した。加えて,画像を良くするための要因として,MTF,NEQ,DQE,CNRのキーワードを示し,画質に与える影響を説明。デジタルマンモグラフィの画質を左右するものとして,検出器の物理特性,ターゲット・フィルタと適正線量の選択などの撮影条件,画像処理の3点を挙げた。その上で,画像処理によって撮影されたデータがどのように異なるのか,症例を示して説明した。大塚氏はCNRとX線量,画質との関係についても解説を加えたほか,X線スペクトル,AECなどの用語の解説も行った。そして,まとめとして,装置の特性を理解し,適正な線量・条件や,画像処理の検討を行うことなど,デジタルマンモグラフィはソフトコピー診断を前提にした装置であり,モニタ診断用の最適表示はフィルム診断用表示には反映されないことなどを強調した。
大塚氏はこのほかにも,同社のデジタルマンモグラフィの特色であるトモシンセシスについてデータ収集の仕組みなどを紹介し,国立がん研究センターでの症例を示して画像の特徴を解説した。
ポジショニング検討会
診療放射線技師を対象とした「ポジショニング検討会」では,会場内にシーメンス・ジャパンのマンモグラフィ装置である「MAMMOMAT Inspiration」と「MAMMOMAT 3000 Nova」が用意され,経験豊富な診療放射線技師が講師を務めて進められた。MAMMOMAT Inspirationを使い,モデルを誘導して位置決めを行う検査の流れの中で,上手なポジショニングのノウハウなどを講師が参加者に対して解説。参加者も実際に行いながら,アドバイスを受けるといった光景が見られた。また,参加者からの質問を受け付けたり,乳房の大きさなど,実際の検査を想定した具体的なポジショニング方法の説明が行われ,日常の検査業務にすぐに役立つテクニックを学ぶ場となった。
この検討会で使われたMAMMOMAT Inspirationは,撮影装置とAWS(撮影コントロール用コンピュータ)の2ユニットで構成されるデジタルマンモグラフィ。高速のFD搭載により,検査間隔が30秒以内という高いスループットを実現している。また,トモシンセシスに対応しており,日本人女性に多い高濃度乳腺の症例でも,病変部をわかりやすく描出する。また,MAMMOMAT 3000 Novaは,CRとアナログ両方に対応した装置。最適圧迫機構や最適撮影機構,フレックス圧迫板を搭載した,被検者に負担の少ない検査が可能な装置である。モリブデンとタングステンの二重陽極X線管球を搭載することも可能で,低線量での撮影ができるほか,MAMMOMAT Inspiration同様,バイオプシーにも対応する。
このほか,会場内には超音波診断装置「ACUSON S2000 ABVS」のワークステーションも展示された。同装置は,視野幅の広いプローブを自動でスキャンさせ,広範囲のボリュームデータを短時間に収集することが可能。なお,当日の基調講演後には,そのプレゼンテーションが行われ,検査施行者に依存せず,標準化かつ客観化された,再現性の高いデータを得ることができるというメリットが紹介された。
読影のポイント講習
講師:内山菜智子 氏(独立行政法人 国立がん研究センターがん予防検診・研究センター)
読影医を対象としたプログラム「読影のポイント講習」では,トモシンセシスなどの症例画像を用いて,診断のポイントなどの解説が行われた。講師を務めた内山氏が症例を示し,参加した読影医が診断を行って,それに内山氏が説明を加えるという形式でプログラムが進行された。内山氏は,トモシンセシスの画像などを提示しながら,読影時のピットフォールなどを解説。参加者たちは真剣なまなざしで,症例画像の読影を行っていた。 この講習で用いられたのが,読影・レポートシステム「syngo MammoReport」である。このシステムは,マンモグラフィ画像だけでなく,超音波診断装置,MRの画像を同時に表示でき,質の高い診断を効率的に行うことができる。
(インナービジョン 2011年10月号掲載)