ホーム inNavi Suite シーメンス・ジャパン特別企画The 2nd Breast Imaging Workshop シーメンスのトータルソリューションから学ぶブレストイメージングの最前線
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The 2nd Breast Imaging Workshop
シーメンスのトータルソリューションから学ぶブレストイメージングの最前線
シーメンス・ジャパン(株)は2011年7月16日(土),ハイアットリージェンシー東京(東京都新宿区)において,「The 2nd Breast Imaging Workshop」を開催した。シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス(株)と持田シーメンスメディカルシステム(株)との共催で,昨年に続き行われたこのワークショップは,同社の技術・ソリューションを用いた乳腺領域の検査や画像診断の最新の動向とテクニック,ノウハウを学ぶ場として設けられた。当日は,放射線科医,診療放射線技師,臨床検査技師など350人が参加。参加者は,事前に登録したプログラムごとに分かれ,講演やハンズオントレーニングなどに臨み,最後まで熱の入ったワークショップとなった。
オープニング
●乳腺領域におけるシーメンスのトータルソリューションを紹介
マーク・フリント 氏 |
遠藤英夫 氏 |
開会にあたり,まずシーメンス・ジャパンのクリニカルプロダクト事業本部長であるマーク・フリント氏が参加者に挨拶し,「シーメンスは,マンモグラフィやMR,超音波診断装置,そして体外診断薬など,幅広いポートフォリオを持っている」と述べた。続いて,シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクスマーケティング部の遠藤英夫氏が,シーメンスの事業展開について,生体内診断と体外診断の2つのソリューションをヘルスケアITを通してトータルで展開していくと説明。また,“Integrated Healthcare”をめざし,予防・早期発見(Seek),診断(Find),治療(Act),継続ケア(Follow)を通してソリューションを提供すると強調した。
基調講演
●乳がんの画像診断 〜検診から精査,治療効果判定まで〜
演者:中島康雄 氏(聖マリアンナ医科大学放射線医学教室教授)
基調講演において中島氏は,まず検診における画像診断について説明を行った。中島氏は,乳がん患者が増加するわが国の状況を踏まえ,乳がんの増加因子として,生理回数の増加などにより,乳がんのもととなる乳腺幹細胞の遺伝子異常が蓄積しやすい状態になっていることを指摘した。その上で,このような増加因子を減らすための一次予防は現状では困難であると述べて,検診などの二次予防の重要性を強調した。
中島氏は,乳がん検診の目的について,治療可能な乳がんを発見し,乳がん死亡率を下げることにあるとした。そして,住民検診をはじめとした対策型検診と人間ドックなどの任意型検診の違いを説明した。さらに,米国予防医学専門委員会が2009年に出した「40歳代女性への定期的なマンモグラフィ検診を推奨しない」という見解を紹介して,マンモグラフィ検診による不利益も考慮し,それを差し引いた真の利益についての考え方を示した。
続いて中島氏は,デジタルマンモグラフィの現状について触れた。わが国では年々デジタルマンモグラフィが増加している。中島氏は,その数字を示した上で,デジタルならではの利点を挙げ,それを生かすにはソフトコピー診断を行う必要があると述べた。そして,ソフトコピー診断によるフィルムレス化が進むことで,撮影業務の効率化が図れるほか,離れた場所でも同時に画像が参照できたり,遠隔画像診断が可能になると説明した。一方で,未解決の課題として,ハード・ソフトのコストやCADの有用性を評価することなどを挙げた。また,中島氏はマンモグラフィの遠隔画像診断を普及させるためには精度管理が重要だとして,学会などのガイドラインの解説を行った。加えて,検診受診率が低い状況に触れて,検診無料クーポンの有効活用が必要だと指摘。超音波検診,MR検診の受診者からの意見を比較し,マンモグラフィ以外の検診の導入についても言及した。このほかにも,任意型検診でのMRスクリーニングが今後重要になるとの見方を示し,ガイドラインを交えて説明した。
この後中島氏は,乳がんの精査について解説を行った。MRやマンモグラフィガイド下のマンモトーム生検などの症例画像を示したほか,MRでの精査後の診断のデシジョンツリーを示し,超音波検査を施行し,病変が同定できた場合とそうでない場合の流れを説明した。また,新横浜ゆうあいクリニックで導入されている陽電子乳房撮影(PEM)について,全身のPET検査と同時に行うことができるといったメリットを挙げ,臨床研究の内容を紹介。さらには,PEMガイド下での針生検も解説した。
さらに,中島氏は,化学療法における治療効果判定のための画像診断も取り上げ,早期に治療効果判定を行うことで,効果がない場合には薬剤を変更するといったメリットがあると指摘。再発・転移の画像診断も含め,形態診断ではなくPETなどの機能診断の役割が重要であると述べた。
ユーザー講演 & ABVS Workplace 症例解説
●乳房検査における画像診断(超音波・MR)
演者:戸阜宏 氏(亀田メディカルセンター乳腺科)
戸侮≠ヘ,乳がん診療におけるカテゴリー分類を解説し,存在診断 (スクリーニング),質的診断(良悪性鑑別),乳がんの画像診断(広がり,薬物効果判定)という診療の流れの中でのマンモグラフィ,超音波診断装置,MRの位置づけについて,米国放射線学会(ACR)のBI-RADSの内容を交えながら説明した。特に乳腺領域の超音波検査に関し,組織内にshear waveを発生させることで,施行者の技術に影響されずに行えるシーメンス社のエラストグラフィ技術であるVirtual Touch Tissue Imaging(VTTI)とVirtual Touch Tissue Quantification(VTTQ)について,技術的特長を交えて解説した。
また,戸侮≠ヘ,超音波スクリーニング検査について,施行者の能力によって結果が左右されてしまうという問題点を指摘。その上で,シーメンス社のAutomated Breast Volume Scanner(ABVS)を用いた検査についてメリットを説明した。 休憩後には,「ABVS Workplace症例解説」が行われ,戸侮≠ェ症例を提示しながら,参加者に向け診断のポイントを解説した。
マンモグラフィポジショニング検討会
第1回目のワークショップでも好評であったマンモグラフィポジショニング検討会が今回も設けられた。シーメンス社のデジタルマンモグラフィ「MAMMOMAT Inspiration」とCR・F/S対応の「MAMMOMAT 3000 Nova」が用意され,それぞれにベテランの診療放射線技師がアドバイザーでつく形で進められた。参加者から質問を受けながら,ポジショニングや被検者への対応など,日常の検査業務の中ではなかなか学ぶことのできないノウハウが,アドバイザーから実技を交えて説明された。
超音波自動ブレストボリュームスキャナ・ハンズオントレーニング
ABVSによる実際の検査を学ぶために,ハンズオントレーニングコーナーが用意された。室内には,ACUSON S2000 ABVSが用意され,その操作性を体験することができた。 このACUSON S2000 ABVSでは,視野幅の広いプローブを用いて,15.4cm×16.8cm×6cmという広範囲を短時間でスキャンし,ボリュームデータを取得できる。施行者の技量に依存せず,容易に再現性の高いデータを得ることが可能となっている。
デジタルマンモグラフィ基礎講座
デジタルマンモグラフィの基礎的な知識を学べるコーナーも用意された。講師はシーメンス・ジャパンクリニカルプロダクト事業本部の大塚恭一氏。
この基礎講座では,FPDの技術解説のほか,F/S系のマンモグラフィとの違いなどの説明が行われた。また,高いMTFやDQEを持つという画質の特長や,撮影した画像をすぐにモニタで読影・参照でき,検査ワークフローの短縮化,短時間化ができるといった,デジタルならではのメリットが紹介された。
デジタルマンモグラフィ読影のポイント講習
講師:内山菜智子 氏(国立がん研究センター病院)
MAMMOMAT Inspirationでは,トモシンセシスが可能である。その読影のポイントについて,内山氏が解説を行った。 国立がん研究センター病院では,2009年9月のMAMMOMAT Inspiration導入以降,トモシンセシスの撮影を行っている。今回の講習では,室内にマンモグラフィビューワ「syngo MammoReport」が用意され,参加者がビューワを操作しながら内山氏とディスカッションして,読影時の留意点などを学んでいった。
シーメンスHCDフォーラム
●採血時のトラブルを避けるために─こんな時,どうします?─
演者:瀬戸享往 氏(東海大学医学部付属病院) 座長:阿部郁朗 氏(東京慈恵会医科大学附属病院)
●乳がんにおける血清HER2検査の臨床的有用性とその将来性
演者:安田由紀子 氏(ブレストピアなんば病院乳腺科) 座長:古川泰司 氏(帝京大学医学部臨床検査医学)
瀬戸享往 氏 |
阿部郁朗 氏 |
安田由紀子 氏 |
古川泰司 氏 |
シーメンスHCDフォーラムは,2題の講演が行われた。まず,瀬戸氏が「採血時のトラブルを避けるために」と題し講演した。また, 2題目は安田氏が登壇し,抗HER2療法によりHER2過剰発乳がんの予後を大幅に改善したと解説した。さらに,血清HER2検査は総腫瘍量を反映し,HER2過剰発乳がんの予後や治療の予測因子となると述べた。
(2011年7月16日取材)
(インナービジョン 2011年9月号掲載)