ホーム inNavi Suite フィリップスエレクトロニクスジャパン Technical Note 最新の心臓MRI解析ソフト“Cardiac Explorer”の有用性
2011年4月号
Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点
心臓MRI検査はその臨床的有用性が広く認識され,ルーチン検査として組み込まれてきている。その要因として,高速シーケンスを中心とした技術開発や撮像手法の浸透だけではなく,読影技術の普及も大きく寄与していると考えられる。2010年に販売を開始した心臓MRI解析ソフト“Cardiac Explorer”は,心臓MRI診断に最適化された画像表示,機能解析,レポート作成機能を有し,読影者の負担軽減が図られている。
本稿では,従来の心臓解析ソフト“Cardiac Analysis”から改善が図られた機能を中心にCardiac Explorerの有用性を紹介する。
■Viewing
心臓MRI画像の特徴は,複雑なオリエンテーション(SA,LA,2ch,4ch など)で撮像され,静止画と動画が混在し,ルーチン検査であっても約700〜1000枚と膨大な画像が取得されることである。これらの画像を読影するためには,限られた画面スペースに効率良く表示することが求められる。Cardiac ExplorerのViewing機能では,膨大な量の画像を効率良く表示することが可能である。画像表示のためのプリセットプロトコルが複数設定されており,瞬時に必要な画像を選択表示する機能が備わっている。短軸像,長軸像,または四腔像といった心臓特有のオリエンテーションごとに選択し,スライス位置をリンクさせるといった処理をワンクリックで行うことが可能である。例えば,シネと遅延造影のみを並べて表示することで,遅延造影における濃染部と壁運動の状態を容易に比較することができ(図1),多断面の遅延造影像のみをピックアップすることで,濃染部の位置関係の把握などが容易に行える。このような機能は,読影精度にかかわることではないが,少ない労力で読影を行うことに貢献している。
図1 Cardiac ExplorerのViewing機能
画像表示の組み合わせをプリセットをワンクリックで選択可能である(左上の□内)。
診断に必要な画像のみを選択的に表示することができ,この例ではシネ(上段)と遅延造影(下段)を比較した表示となっている。
■Analisys
心機能解析に用いるシネ画像はボリュームデータであるため,非造影検査でありながら精度の高い解析データを取得できる。その反面,膨大な画像枚数に対するトレース処理に多くの労力を費やすため,敬遠されがちであった。Cardiac Explorerでは,心筋の内膜と外膜のトレースを全自動で処理することが可能となっており,わずか十数秒でトレース処理が施行され解析結果が得られる。Cardiac Analysisにおける半自動のトレース処理でも一定の評価を得ていたが,心筋トレース作業に5分近く(マニュアル処理では約1時間!)要していたことを考えると,大幅な時間短縮が図られている。この全自動の心筋トレース機能の精度は高く,乳頭筋を含まない解析も同時に処理されるまでになっている(図2)。心機能解析では,Ejection Fraction,Cardiac Output,Wall Motionだけでなく,E/Aによる拡張能評価も容易に行うことができ,心筋症の診断にも有用である。また,右心室をトレースすることにも対応しており,左心系と同様に右心系の機能解析が可能である。
図2 心筋のトレース
全自動で心筋トレース処理が行われ,乳頭筋を含めた通常の解析(─)と乳頭筋を含めない解析(─)の2種類の解析結果が得られる。
心筋パフュージョンの解析における問題点は,呼吸性や心時相の変動であり,回転(rotation)と平行移動(movement)の2つの影響がある。この2種類の動きに対するモーションコレクション機能により,長い息止め時間による呼吸性変動の影響を排除することができる。さらにベースラインコレクション機能などを併用することで,セグメントごとの信号差を補正し,客観性の高い解析が行える(図3)。
図3 パフュージョン解析における補正
モーションコレクション機能,ベースラインコレクション機能を併用することで,呼吸変動やセグメント間の信号差を補正し,精度の高い解析を実現している。
■Reporting
一般的に,心臓MRIの解析,読影には専用ソフトを必要とする。多くの施設では,解析を行う装置とレポーティングを行う装置は別々の部屋に設置されているため,スムーズな読影が行えない。Cardiac Explorerでは,レポーティング機能の充実も図られており,1つの解析装置で読影からレポーティングまでを一度に施行することが可能であり,読影者の負担を軽減している。読影とレポーティングが一体化しているメリットは,シネや遅延造影の解析,読影を行っているときに,所見部位をAHA17セグメントに沿ってレポートにカラーでマーキングすることや,キーイメージをレポートに添付するたりといった作業が容易に行えることである(図4)。また,この読影レポートは,DICOM転送やWordファイルとしてアウトプット可能である。
図4 レポーティング結果
Cardiac Explorerは,心臓MRIにおける機能解析時間の短縮や,読影からレポーティングまでを一体化させることにより,読影者の負担軽減を目的として開発された。これらの改善が,心臓MRIのさらなる発展に寄与することを期待する。