フィリップスエレクトロニクスジャパン

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Technical Note

2010年10月号
CT新潮流−最新の被ばく低減技術のポイント

CT−iDose─最大80%の被ばく低減を実現する画像再構成法

菅原崇
ヘルスケア事業部営業本部

近年のCT装置の進化に伴い,臨床現場では4D撮影,Perfusion,Dual Energyなど,CT検査において臨床的価値を向上させるイノベーションが,同時に被ばくというデメリットも増大させている。

フィリップスは被ばく低減に対して,“DoseWise Philosophy”と呼ぶ哲学を持っており,ヘリカルスキャン時の無駄被ばくを低減させる“Eclipse Collimator”や低被ばく心臓撮影機能“Step & Shoot Cardiac”など,これまでにも被ばく低減に対するさまざまな新しいソリューションを開発してきた(図1)。

図1 DoseWise:さまざまな被ばく低減技術
図1 DoseWise:さまざまな被ばく低減技術

さらに,2009年の北米放射線学会(RSNA)では,逐次近似法を応用した次世代型低被ばく画像再構成法“iDose”を発表した。ソフトウエア,ハードウエア両面からのアプローチで,さらなる被ばく低減と画質向上を実現するiDoseは,2010年4月に国内でも販売が開始されている。

本稿では,フィリップスの新しい被ばく低減への取り組みの1つである逐次近似再構成法iDoseについて述べる。

●DoseWise─フィリップスの被ばく低減技術

DoseWise Philosophyに基づいて開発された,フィリップスの被ばく低減技術を以下に示す。
・Dose Right ACS,DOM:管電流自動可変機能
・IntelliBeam Filter:軟線カットフィルタ
・Eclipse Collimator:ヘリカルスキャン時の無駄被ばく低減
・NanoPenel:電子的ノイズを80%カット(当社比)
・2D anti scatter grid:体軸方向の散乱線を除去
・Step & Shoot Cardiac:低被ばく心臓撮影
・iDose:逐次近似法を応用した画像再構成

●iDose

1970年代にCTスキャンが開発されて以来,使用され続けてきた画像再構成テクニックであるFiltered Back Projection(FBP)は,当初より明瞭な画像が提供可能であったが,ノイズ成分を多く含む画像であるため,いままで以上に被ばく線量を抑えることは困難であった。

これに対し,逐次近似法を応用した画像再構成法では,低線量で撮影されたデータであってもノイズ成分を大幅に除去することが可能である。この結果,従来に比べ低い線量で撮影されたデータでも画質を維持することが可能となる。

iDoseは,この逐次近似法を応用したフィリップス独自の画像再構成法であり,最大80%の被ばく低減を行っても従来と同等の画質を得ることができる次世代画像再構成法である。搭載可能機種は,「Brilliance iCT」シリーズ(図2)と「Brilliance CT 64」であり,既存装置でのアップグレードも可能である。

図2 Brilliance iCTシリーズ
図2 Brilliance iCTシリーズ

●iDose How it works?

iDoseには“Projection Space”,“Image Space”と定義する2つの領域が存在する。Projection Space(生データ領域)では,サイノグラムからの逐次近似計算によりノイズ成分を除去する。さらにImage Space(画像データ領域)では,フィリップス独自の“Statistical Noise Model”と“Anatomical Model”に基づき,繰り返しノイズコントロールを行う(図3)。

図3 Double IRの概念図
図3 Double IRの概念図

●Double IR

2つの領域でそれぞれ逐次近似再構成(iterative reconstruction:IR)を行うDouble IR法では,Projection Spaceでの逐次近似計算により,低線量での撮影時に目立ちやすいストリークアーチファクトをサイノグラムから除去することも可能である。Image Spaceだけで逐次近似計算を行うSingle IRを採用する場合に懸念される,画質の変化や違和感なども起こさない。これにより,低コントラスト分解能も高コントラスト分解能も犠牲にすることなく,従来の線量に比べ最大80%の被ばく低減を実現している(図4)。

図4 80%被ばく低減画像
図4 80%被ばく低減画像

図5は,体重100kgでありながら190mAsで撮影された症例だが,iDoseでは,FBPに比べ肩や骨盤からのストリークアーチファクトがよく改善されているのがわかる。薄いスライス厚のMPRでは,ノイズの低減も顕著に確認できる。

図5 同一データでの比較
図5 同一データでの比較
上段:FBP 下段:iDose

●Rapid View IR

被ばく低減と画質向上の両立を目的に採用したDouble IRは,通常であれば画像再構成速度の低下を伴うが,iDose専用に開発されたリコンストラクタ“Rapid View IR”を搭載することにより,iDose使用時にも最速20画像/秒の再構成速度を実現し,日常検査をサポートする。

●Two Way iDose

iDoseは,7種類の“iDose Level”によりコントロールされ,撮影部位や検査目的に合わせて使い分けることにより,被ばく低減および画質向上に使用することが可能である。

本稿で紹介したiDoseは,画質の低下を伴わずに被ばくを低減することが可能であり,CT検査にとって非常に大きなブレークスルーである。今後,多くの施設で,iDoseを使用してCT検査が行われることを期待する。

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