日立メディコ

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Technical Note

2011年4月号
Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

CT−64列CT「SCENARIA」の心臓撮影

羽田野顕治
CT戦略本部

64列CT「SCENARIA」*1は,2次元散乱線コリメータを備えた0.625mm×64列の検出器,2880view/sの高速データ収集,Feldkamp法に比べて高画質な日立独自のCORE(Cone-beam Reconstruction)法による画像再構成やIntelli IP(Iterative Processing)によるノイズ低減処理などの技術によって,心臓だけでなく,腹部や胸部など全身を0.35秒/回転で撮影できることを特長としている。
本稿では,SCENARIAに搭載した心臓撮影機能について紹介する。

図1 SCENARIAの外観
図1 SCENARIAの外観

■IntelliCenter

心臓撮影においては,第一に冠動脈をできるだけ高い分解能で描出することが求められている。また,心拍数が下がらない場合や検査の成功率を考慮してRetrospective ECGモードで撮影すると,被ばくが多くなる傾向にあるため被ばく低減も必要とされている。これらのニーズに応えるのがIntelliCenterである。
IntelliCenterとは,寝台横スライド機構(図2*2とX線補償フィルタ切替を組み合わせた機能である。心臓撮影の場合,低被ばく用X線補償フィルタを用いてX線を関心領域に絞り,寝台横スライド機構によって関心領域に心臓を位置決めする(図3上)。心臓が,スキャナの回転中心に位置するため,心臓が回転中心から外れている場合に比べて空間分解能の向上が期待できる。また,X線を関心領域に絞った効果について,仮想ファントムによるモンテカルロシミュレーションの一例では,従来の全身用X線補償フィルタと比較して,断面全体で24%,関心領域外(FOV外)で35%被ばくが低減するという試算結果が得られている(図3下)。
寝台横スライド機構は,左右に最大80mmスライドさせることが可能である。実際の撮影では,被検者を通常どおり寝台の中央に寝かせて位置決め像を撮影し,心臓の位置を確認して横スライドする。被検者は,凹型の天板の中央に寝ているので,安定して違和感がない。また,診療放射線技師は,心臓がスキャナの回転中心になるように,被検者の寝る位置を調整しなくてもよい。

図2 寝台横スライド機構
図2 寝台横スライド機構
図3 IntelliCenterによる被ばく低減
図3 IntelliCenterによる被ばく低減

■Touch Visionの活用

1.心電波形表示
心臓撮影の基本となる心電計の出力を,スキャナガントリ正面の大型液晶パネル(Touch Vision)に表示することによって,心電計とCT装置の接続状態を確認することができる。心臓検査のたびに操作卓側で確認する手間がかからない。
2.リアルな息止め練習
心臓撮影の条件設定においては撮影中の心拍数の予測が重要になるため,より実際の撮影に近い状態で息止め練習できることが望ましい。SCENARIAでは,Touch Visionを用いて,撮影時と同じ息止め表示とオートボイスに従った息止め練習が可能である。

■幅広い心拍に対応する撮影モード

1.Prospective ECG
Prospective ECGモードでは,心電波形のR波をトリガーとして,設定した時間の後にノーマルスキャン(コンベンショナルスキャン)を行う。1スキャンあたり40mmの範囲が撮影できるが,スキャンごとのデータのつながりを良くするため,若干オーバーラップしながら4スキャン程度で心臓全体をスキャンする。
2.Retrospective ECG
Retrospective ECGモードは,心臓の動きに対して,時間分解能を向上させるためにセグメント再構成が可能なピッチのボリュームスキャン(らせんスキャン)を行う心電同期撮影である。図4に臨床例を示す。被検者の心拍数から,最適なセグメント数やスキャン時間,テーブルピッチを自動設定する機能がある。不整脈や心拍変動が大きい場合には,ECG Editor(心電図編集機能)を用いて,心電波形や再構成位相などの編集が可能である。多少の心拍変動にも対応できる反面,被ばくが大きくなる傾向にあるので,IntelliCenterが有効である。

図4 臨床例(ステントと石灰化)
図4 臨床例(ステントと石灰化)

本稿では,IntelliCenterを中心にSCENARIAの心臓撮影について述べた。低被ばく化と高画質化,ワークフローの改善など臨床に役立つ開発を進めており,近い将来報告できる予定である。

*1 「SCENARIA」は株式会社日立メディコの登録商標です。
*2 寝台横スライド機構はオプションです。

【問い合わせ先】 マーケティング統括本部CT戦略本部 TEL 03-3526-8305