日立メディコ

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Technical Note

2009年8月号
究極のデジタルマンモグラフィに向けて−最新技術解説

DMG−LORAD Selenia−デジタルマンモグラフィの世界標準

落合 是紀
XR営業本部

乳がんの罹患者の年齢が若年化する傾向が見られる状況において,米国ではThe Digital Mammographic Imaging Screening Trial(DMIST)が実施され,特に,高濃度乳房に対するデジタルマンモグラフィの有用性が認識されている。今後の乳がん検診において,デジタルマンモグラフィの重要性が増すことは疑いのないことである。検診受診者の増加が見込まれる状況下で読影医の不足が懸念されるが,読影医の負担を軽減できるCADの必要性や,さらに精密検査においては比較的侵襲性の低いステレオガイド下におけるコアニードルバイオプシーの必要性も増大している。
日立メディコは,米国HOLOGIC社のデジタル乳房撮影装置「LORAD Selenia」(図1)や,これに組み合わせてマンモグラム上の関心領域を表示する「Senova CAD」,プローンタイプのステレオバイオプシー装置「MultiCare Platinum」,さらにLORAD Seleniaに組み合わせて使用する座位・側臥位式のステレオバイオプシー装置「StereoLoc-U」(図2)など,乳がん検診,精密検査,組織診断に至るトータルのソリューションを提供している総合メーカーである。


図1 LORAD Selenia
図1 LORAD Selenia
図1 LORAD Selenia
図2 LORAD SeleniaとStereoLoc-U

●デジタル乳房撮影装置のディテクタ技術

乳房撮影用デジタルディテクタ(FPD)は,直接変換型と間接変換型に分類できる。
LORAD Seleniaに採用されている直接変換型FPDでは,X線吸収と電気信号の発生を単一の半導体層で行う。アモルファス・セレニウムによる方式は,デジタル乳房撮影の直接変換方式の代表的なものである。セレニウムは,乳房撮影に使用されるX線エネルギー(管電圧)帯において,間接変換型で採用されるヨウ化セシウムよりX線吸収効率が高い(図3)。また,アモルファス・セレニウム層で発生した電荷はすべて電極に吸着されるため,Fill Factorは100%となるのでX線の利用効率が高く,ピクセルの微細化においても有利であり,さらに低ノイズで製造プロセスも確立されているなど,乳房撮影用ディテクタとして理想的な材料である。


図3 検出材料のX線吸収効率-エネルギー特性
図3 検出材料のX線吸収効率-エネルギー特性

●高画質に寄与するその他の技術

1.HTCグリッド
  HOLOGIC社の特許技術である“High Transmission Cellar Grid(HTCグリッド)”の散乱線除去能力は高く評価されている。収束クロスグリッドの中間物質を空気とすることで,画像をつくる直接X線を効率良く透過し,被ばくは増加しない。また,散乱X線は格子構造に良り効率よく除去することができる。デジタルマンモグラフィにおいてもデジタルデータ中に含まれる散乱線成分の低減が認められており,診断能の向上に効果がある。ROC曲線を示す(図4)。

2.Senova CAD
HOLOGIC社の一部門であるR2 Technologyが開発したSenova CADは,読影医の負担軽減に資することが期待される(図5)。


図4 HTCグリッド使用時のROC
図4 HTCグリッド使用時のROC
図4 HTCグリッド使用時のROC
図5 Senova CADの表示例

乳房撮影における直接変換型デジタルディテクタの優位性は広く認識されている。マンモグラムの高画質を支える周辺の技術とともに,検診,精密検査の場に優れた装置を今後も提供していく所存である。



【問い合わせ先】 XR営業本部  TEL 03-3526-8304