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別冊付録

CURRENT TECHNOLOGY

「ECHELON OVAL」と「AIRIS Soleil」─それぞれの特長と技術

ユニークなワイドボア1.5T超電導MRI「ECHELON OVAL」の特長

オープンMRIの快適性と高磁場MRIの高画質を両立できるMRIとして,ユニークな楕円形状のワイドボアを搭載した1.5T超電導MRI装置「ECHELON OVAL」(図1)を開発しました。この装置のコンセプトは,オーバル形状のワイドボア,高いスループット,最新のアプリケーションです。被検者にやさしい検査環境を提供する新しい高磁場MRIを紹介します。

図1 1.5T超電導MRI 「ECHELON OVAL」
図1 1.5T超電導MRI 「ECHELON OVAL」

■ハードウエアの特長

超電導MRIでは静磁場の均一度が最も重要です。広い撮像空間における画像の均一性や確実な脂肪抑制,高機能アプリケーションなど,高い静磁場の均一度がますます要求される状況にあります。したがって,ワイドボアMRIにおいても,静磁場均一度は最優先に確保すべきものと言えます。「ECHELON OVAL」は,これまでのECHELONシリーズと同等な仕様である0.2ppm/40cmDSVを確保しました。

1.快適な楕円ボア
寝台に横になった人体の形は楕円形をしています。快適な検査空間を追求した楕円ボアは,図2に示すように被検者の左右方向を74cmと大幅に拡張し,検査空間を従来の60cmクラスのボア装置から約40%拡張(テーブル上部の実効空間)しました。
この楕円ボアは被検者の撮像空間の確保だけでなく,63cm幅のワイドテーブルを可能として,特に肩関節などオフセンター部位を撮像する際に静磁場中心に移動して撮像できるので,最も磁場均一度の高い磁石のセンターを有効に利用できます。

図2 ボア開口径の比較
図2 ボア開口径の比較

2.楕円形状の傾斜磁場コイル
楕円ボアは楕円形状傾斜磁場コイルの新規開発により実現されました。日立には,超電導オープンMRI「OASIS」の開発で培ったフラットな傾斜磁場コイルを設計する高度な技術があります。これは発生させたい磁場分布とコイルの位置を入力して,任意の形状のコイルパターンを設計する技術です。「ECHELON OVAL」はこれまで困難であった楕円形状の傾斜磁場コイルパターンを完成し,搭載しました(図3)。

図3 楕円形状傾斜磁場コイル
図3 楕円形状傾斜磁場コイル

3.WIT RF Coil System
MRI撮像では,被検者セッティングを含めたトータル時間の短縮によるワークフローの効率化が求められています。高感度受信とワークフローを両立したWIT RF Coil System (WIT:Workflow Integrated Technology)を搭載しました。
頭頸部撮像においては,図4に示すように下側に配置した WIT Posteriorコイルをベースに,上部にWIT Anteriorアタッチメントの頭部用,頭頸部用,頸椎部用を乗せ換えるだけで,最適な感度分布で撮像できます。また,体幹部撮像においては,テーブルに組み込まれたWIT Spineコイルと被検者上部に乗せたWIT Torsoコイルを組み合わせ,容易にセッテイングが可能です。

図4 WIT RF Coil System
図4 WIT RF Coil System

4.モバイルテーブル
着脱可能なモバイルテーブルはガントリーに向かって斜めからでも接続が可能で,これまでのように正面から接続する必要がないため使いやすく,さらに撮像室をコンパクトに設計できる利点があります。また,テーブルトップは電動による上下可動式で,最低高を50cmまで下げられるので,小児や高齢者の乗り降りの負担を軽減しました。

■高機能アプリケーション

1.RADAR
“RADAR”(RADial Acquisition Regime)は日立独自の手法によるRadial Scan技術を用いたモーションアーチファクトの低減機能です。一般的に用いられているFSE法だけでなく,SE法やDWIにも応用できます。シーケンスの自由度が高く,撮像部位,撮像断面などによらず幅広く適用して,ルーチン撮像に効果を発揮します。さらに,撮像時間を大幅に高速化するパラレルイメージング技術(RAPID:Rapid Acquisition through a Parallel Imaging Design)を併用して,撮像時間を短縮することも可能としました。

2.AutoPose
AutoPoseは図5に示すように,頭部の撮像時に自動的に撮像断面を設定する機能です。この機能の実現には画像情報から解剖学的な構造認識が必要ですが,専用の三次元データを取得して行う手法もあります。
AutoPoseの特長は,通常の撮像位置設定用の3断面画像のみで頭部組織の解剖学的パターン認識を行うことです。正中線,OMラインなどの撮像断面設定を支援し,ワークフローのさらなる向上が期待できます。

図5 自動撮像位置設定 「AutoPose」
図5 自動撮像位置設定 「AutoPose」

磁石性能が向上したオープンMRIの最新機種「AIRIS Soleil」

永久磁石方式のオープンMRI「AIRIS Soleil」(図6)は,静磁場強度0.25TのAIRISシリーズ最新モデルです。永久磁石素材を高効率に活用できる新型磁石ガントリーの開発と最新のオープンMRI技術により,0.25Tでこれまでの0.3T装置と同クラスの画質を実現しました。

図6 オープンMRI「AIRIS Soleil」
図6 オープンMRI「AIRIS Soleil」

■「AIRIS Soleil」の高性能技術

画像のSN比と静磁場強度は,同じ方式のMRI装置ではほぼ比例します。「AIRIS Soleil」には,日立がこれまでオープンMRIで培ってきた技術に加え,超電導MRIで開発した技術を新たに盛り込むことで,画像SN比を向上することが可能となりました。

1.高磁場装置ECHELONシリーズに搭載された画像SN比の向上技術
画像SN比の向上手段として,画像フィルタを用いる方法があります。「AIRIS Soleil」は超電導MRI装置ECHELONシリーズで開発された画像フィルタにより,画像のSN比が向上しました。これは,MRI特有の情報を持つk空間にて最適化されたフィルタで,画像の空間分解能に与える影響を抑えて効果的にノイズを低減し,SN比を向上させる技術です。

2.ハイスリューレートを活用したパルスシーケンス
「AIRIS Soleil」の高性能な傾斜磁場システムは,55mT/m/msのハイスリューレート電源を搭載しています。スリューレートは傾斜磁場コイルを駆動するスピードを表す仕様ですが,これを高めることで,撮像におけるパルスシーケンスの無駄な時間を短縮できます。これによって生まれた時間の余裕をMRI信号の受信時間にあてることで,受信帯域幅を狭く設定できます。画像のSN比は受信帯域幅の平方根に反比例するので,画像のSN比を向上させることができます。

3.安定性に優れた高性能永久磁石を採用
新規に開発された新型磁石ガントリーは磁場の高効率化だけではなく,画像劣化の影響となる渦電流の低減も実現しています。この効果でパルスシーケンスの傾斜磁場印加性能が向上し,MRIの基本性能を高めました。MRAなどの強力な傾斜磁場印加が必要な高速撮像シーケンスや,RADARをはじめとする高機能シーケンスにおいて,より高精度なパルスシーケンスを可能にして画質を向上させました。

■「AIRIS Soleil」の高機能アプリケーション

1.RADAR
  モーションアーチファクト低減技術 

超電導MRIシステムで評価の高いモーションアーチファクト低減技術“RADAR”を搭載しました。k空間のデータ取得を回転状に充填するRadial Scan技術により,位相エンコード方向のアーチファクトの特異的な収束を分散し,k空間中心のデータ取得タイミングを増加することで加算効果も期待できます。日立のRADARの特長は,ルーチン検査に使用できる汎用性と,SE法に適用して良好なT1コントラストが得られることです。
永久磁石MRIはモーションアーチファクトが目立ちにくい性質がありますが,さらにRADARの併用により,モーションアーチファクトの少ない良好な画像を得ることができます。図7にRADARの画像例を示します。頭部の画像は動きのある被検者に適用した例です。肩関節や腹部の呼吸動にも対応し,呼吸同期のない撮像でも良好な画像が得られます。

図7 RADAR画像例
図7 RADAR画像例

2.VASC-ASL
  非造影腹部血管撮像技術

流れの速い腹部血管を非造影で撮像するための技術です。3Dで高速に撮像が可能で,IRパルスにより血流以外を抑制して,ラベリングされた流入血を画像化します。図8に腎動脈の画像例を示します。安定性に優れた磁石性能が,良好な非造影MRA画像を提供します。

図8 VASC-ASL画像例
図8 VASC-ASL画像例

(画像例は,撮像目的・意義を説明し,文書による同意を得た健常人ボランティア画像です)

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