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別冊付録

Report

■ 第10回日本脳神経外科術中画像研究会
■ 次期学会大会長に聞く 患者が納得する手術のための術中MRIの役割と課題を追究する
■ 東北地区日立MRユーザー会が開催

第10回日本脳神経外科術中画像研究会

栗栖 薫 大会長(広島大学脳神経外科学教授)
栗栖 薫 大会長
(広島大学脳神経外科学教授)

Volker Seifert 氏(Johann Wolfgang Goethe-University) 
Volker Seifert 氏
(Johann Wolfgang Goethe-University)

齋藤太一 氏(東京女子医科大学)
齋藤太一 氏
(東京女子医科大学)

八代一孝 氏(鹿児島大学)
八代一孝 氏
(鹿児島大学)

朝比奈克至 氏(名古屋大学)
朝比奈克至 氏
(名古屋大学)

田中俊英 氏(東京慈恵会医科大学附属柏病院)
田中俊英 氏
(東京慈恵会医科大学附属柏病院)

三井貴司 氏(名古屋大学)
三井貴司 氏
(名古屋大学)

第10回日本脳神経外科術中画像研究会が6月26日(土),広島大学医学部構内の広仁会館で開催された。大会長は栗栖 薫氏(広島大学脳神経外科学教授)で,テーマは「術中画像診断と各種モニターの併用・融合」。最先端を行く術中画像の活用だけではなく,各種のモニタや脳機能マッピング,ナビゲーションなどを併用したり,組み合わせることで画像の付加価値を高め,手術に生かすためのさまざまな発表が行われた。一般演題は7セッション29題の発表があり,ほかに特別講演,ランチョンセミナー,Work in progressがあった。

特別講演は,Volker Seifert氏(JohannWolfgang Goethe-University,Frankfurt,Germany)が「Evolution of intraoperative low-field MRI and its application for image-guided brain tumor surgery」と題して発表した。Seifert氏は,0.15Tの術中手術用の低磁場MRI「PoleStar N20」を用いた手術の実際と手術室の運用について講演した。

そのほか,一般演題では「術中蛍光血管造影(ICG,FAG)」「融合画像・シミュレーション」「術中MRI」「術中ナビゲーション・モニタリング」「脳機能マッピング」について発表された。

術中MRIのセッションでは,齋藤太一氏(東京女子医科大学)が術中MRIの有用性について新規導入の観点から検証した。現在,術中MRIは全国11施設で導入されているが,術中撮像によって情報をフィードバックすることで高い成果を挙げている。齋藤氏は,同大学に赴任したばかりという客観的な立場から,同大学の10年間の術中MRIの成果を評価。中磁場MRIでも十分な画像情報が得られているほか,手術時間の延長や感染率の増加などの問題もクリアされており,摘出率の向上や患者QOLの向上に寄与していると述べた。

「鹿児島大学MRI手術室の初期使用経験」と題して講演した八代一孝氏(鹿児島大学)は,2009年10月に稼働したMRI手術室の導入と運用の初期経験について述べた。同院では,AIRIS Elite IOPを導入してグリオーマなどの手術で術中MRI撮像を行っている。八代氏は,AIRIS Elite IOPの開口幅が43cmと,従来の機種より広いことが術中の運用をスムーズにしていること,初期には周辺の機器から発生するノイズによって十分な画像が得られず対策に苦労したことなどを紹介した。

朝比奈克至氏(名古屋大学)は,「0.4T術中MRIによる拡散強調画像を用いた錐体路の描出」で,脳神経外科手術で発生するBrain shiftの影響で変位する錐体路の位置を,術中MRIの拡散強調画像で確認する方法について,撮像条件の最適化と臨床応用の可能性の検討結果を報告した。そのほか,田中俊英氏(東京慈恵会医科大学附属柏病院)が「術中MRI併用下開頭手術におけるWax Pile Method」,三井貴司氏(名古屋大学)が「脳神経外科ナビゲーション手術におけるスキンシフトの影響」について講演した。

また,Work in progressとして,ブレインラボ,クロステック,セティ,イムリス,日立メディコから発表があった。日立メディコからは,同社の永久磁石型0.3TオープンMRI「AIRIS Elite IOP」に使用する高感度な分割型の頭部用受信コイルの開発について紹介された。垂直磁場装置で使用できるソレノイド型コイルを上下に簡単に分割でき,高い感度が得られるように開発したという。また,ロビーでは,各社による展示も行われた。

なお,日本脳神経外科術中画像研究会は,当日に開かれた世話人会で学会への組織変更が決定された。名称や運営などについては,今後詳細を検討していくとのことだ。次回は2011年6月18日(土)に,水野正明氏(名古屋大学)を大会長として,名古屋大学医学部附属病院中央診療棟講堂で「術中MRIの世界」をテーマに開催する予定だ。

●問い合わせ先
事務局
端 和夫
(太平洋脳神経外科コンサルティング)
http://www.pnc-hashi.org/

〈次期学会大会長に聞く〉
水野正明(名古屋大学大学院医学系研究科脳神経外科准教授)

水野正明(名古屋大学大学院医学系研究科脳神経外科准教授)

近年,コンピュータテクノロジー,バイオテクノロジー,ナノテクノロジーなどの科学技術の発展が社会に対して大きな影響をもたらしており,医療も例外ではありません。例えば高い精度が要求される脳神経外科の手術において,コンピュータによる画像支援は,いまやなくてはならないものになっています。しかし,MRIなどの術中画像の技術はまだまだ発展途上にあり,それらを活用した理想の手術とはどういう手術なのかを,これからわれわれが追究していかねばなりません。
この理想の手術を具現化するにあたり,私が最も重要だと感じているのは,患者さん目線からの手術の見直しです。これまでわれわれ医療従事者は,低侵襲,高精度,安全などを確実に担保できる手術を求めてきました。これからは患者さん一人ひとりに合った“良い手術”を行うことが求められていると考えます。
では,患者さんから見た“良い手術”とはどんな手術なのか。私は,患者さんやその家族が“納得”できる手術のことだと思っています。患者さんの究極の願いは,病気を完全に治すことですが,今の医療技術ではすべての病気を100%治すことはできません。したがって,不治の病にかかった患者さんに対する手術の良し悪しは,その結果の如何にかかわらず,患者さんやその家族が“納得”できるかどうかが重要と思っています。そして,術中MRIやナビゲーション技術がそれをどこまで可能にできるのか。そういった視点で今後の脳神経外科手術のあり方を眺めていきたいと考えています。

次回の学会のテーマは,「術中MRIの世界」としました。理想的な近未来手術はどうあるべきか,その中での術中MRIやモニタリングなどの役割を検討したいと考えています。現段階の構想としては,術中MRIを導入している11施設による“術中MRIサミット”の実施を考えています。術中MRIが,より精度の高い手術に貢献することは間違いありませんので,先導的に導入している施設が集まって,患者さんが納得できる手術のためには,何が必要で,何が課題で,どう解決していくのか,をまとめたいと考えています。
さらに,患者目線という視点で考えれば,学会で議論・検討された成果を,学会内の知識にとどめるのではなく,社会に発信していくことが重要です。来年の学会で話し合われた内容は,何らかの形で提言としてまとめて,社会に発信していきたいと思っています。

東北地区日立MRユーザー会が開催

■ 2010年東北地区日立MRユーザー会
2010年東北地区日立MRユーザー会は7月11日(日),ホテルJALシティ仙台において開催された。東北6県から,これまで最多の42施設,66名が参加し盛況だった。

満席となった東北地区日立MRユーザー会会場
満席となった東北地区日立MRユーザー会会場

●特別講演
「高磁場化の時代の中での0.3Tの再認識」
大日方 研(大日方医院)

●ユーザー発表
「AIRIS Ventoの使用経験〜AIRISからVentoへ」
佐藤大輔(丸森町国民健康保険丸森病院)
「整形分野におけるAIRIS Ventoの活用」
濱口洋介(中村整形外科医院)

●メーカー発表
「Open MRIの新たな可能性」
「良い画像を得るためのテクニック〜MIPとVRの活用」

*敬称略

MRIを中心に最新の画像の展示が行われた(東北)。 
MRIを中心に最新の画像の展示が行われた(東北)。

■ 第21回東海・北陸MRPユーザー会
開催日:9月4日(土)
会 場:栄ガスビル(名古屋)

●技術講演
「日立MRI最近の技術動向」

●ユーザー発表
「APERTO Eternaの使用経験」
千原 勉(羽島市民病院)

●特別講演
「腹部のMRI診断について」
五味達哉(東邦大学医療センター大橋病院)

■ 第17回関西MRユーザー会
開催日:9月11日(土)
会 場:大阪マーチャンダイズ・マート(大阪)

●技術講演
「最近のシーケンス」

●ユーザー発表
「肩関節MRI」
森岡重敏,橋本義行(信原病院)
「日立I/CTを用いた運動解析」
田中 洋(信原病院バイオメカニクス研究所)

●特別講演
「もの忘れ外来に於けるMRIの役割」
奥村 歩(おくむらクリニック)

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