日立メディコ

ホーム の中の inNavi Suiteの中の 日立メディコの中の 別冊付録の中の 磁遊空間 Vol.21の中の Top Interview 情熱あるものづくりで「信頼と安心」を実感できる製品を提供する 三木 一克(代表執行役 執行役社長兼取締役)

別冊付録

Top Interview

情熱あるものづくりで「信頼と安心」を実感できる製品を提供する
オープンMRIのノウハウを生かし高磁場への展開を図る

株式会社日立メディコ代表執行役 執行役社長兼取締役 三木 一克

株式会社日立メディコ代表執行役 執行役社長兼取締役 三木 一克

2010年4月に日立メディコの代表執行役執行役社長に就任した三木一克氏は,開発部門を統括する責任者として改革に取り組んできた。製品開発の拠点となる「医療システム開発センタ」の立ち上げや,シンボルカラーとして“スマイルイエロー”を採用するなど,従来の常識を変えるコンセプトで日立メディコの製品に新しい風を送り込んできた“仕掛け人”である。医療機器市場は国内・海外ともに厳しい状況が続く中で,日立メディコのこれからの事業戦略の方向性,MRIを中心にしたモダリティの今後の展開についてお聞きした。なお,本インタビューはインナビネットとの連動企画として,「インナビ・インタビュー」で全文を掲載している。

マーケット・インの開発体制で医療現場のニーズに合わせた製品開発を展開

執行役専務時代に開発部門の改革に取り組み,2008年4月に「医療システム開発センタ」という開発組織を立ち上げました。日立製作所の6つの研究所と協力して,研究者など約100名弱が柏事業場に集って開発を行う体制を整えたのです。日立メディコのマーケティング,設計,営業と,日立製作所のデザイナー,研究者がひとつのチームとして一体感を持って製品開発を行える環境をつくり,次世代の製品開発を加速させることがねらいです。
開発プロセスでは,設計開発を“プロダクト・アウト”から“マーケット・イン”に変えました。医療現場でのニーズを把握して,それに対してわれわれが考えるソリューションを製品に反映させて提案するスタイルで,ユーザビリティやコンセプトを実現するための“デザイン”に力を入れ,日立製作所のデザイン本部と連携したプロセスを取り入れました。この取り組みから,透視撮影装置「CUREVISTA」や超音波画像診断装置「HI VISION Preirus」などの製品が生まれました。

社会イノベーション事業としてのヘルスケアに日立グループをあげて取り組む

医療システム開発センタでは,日立メディコと日立製作所の連携体制のひとつのモデルが提示できたのではと考えています。製品開発プロジェクトの中で,日立メディコと日立製作所の関係者が情報を共有する場がつくられるようになり,日立メディコのモダリティの開発状況が,日立製作所の経営層にまで共有されるようになっています。日立メディコが生き残っていくためには,日立グループの産業分野で培った幅広い技術,成熟した技術を医療機器開発の中に取り込んでいくことが必要だと考えていましたので,その一端が実現できつつあると感じています。
現在,日立グループとしては,ヘルスケアを社会イノベーション事業の重要な分野として位置付けています。今は医療事業のボリュームが小さく,日立グループにインパクトを与えるまでには至っていませんが,事業としての価値は日立の今後の100年を考えるときわめて重要です。医療を通じて社会に貢献する日立グループのミッションとして重要な事業であるという共通の認識を,グループで共有しています。

製品生産の現地化を進めて,海外での競争力,販売力の強化をめざす

2012年度までの中期経営計画では,海外市場における売上げの拡大,医療機器市場の二極化に対応したモダリティ別の製品展開,医療システム開発センタを中心とする製品開発体制の強化と工場改革による生産力の向上,それに伴う国内・海外におけるいっそうの営業力強化を掲げています。
中期経営計画の中で海外売上高比率の目標値を2012年度に45%としましたが,そのためにはいっそうの海外販売力の強化が不可欠です。個々の営業力を高めると同時に,海外の販社との連携の強化や販売網の拡充が重要になります。現在,北米と欧州,中国,シンガポールにある販売拠点を,東南アジアからインド,中東にいたる“アジアベルト地帯”や,南アフリカ,中南米まで視野に入れて幅広く開拓していくことを考えています。
その中で,医療機器市場の二極化に対応して,日米欧市場向けのハイエンド製品と,新興国向けの低価格・普及製品を区別して展開していきます。開発・製造のプロセスについても,日本からの輸出ではなく,スタッフを含めた製品生産の現地化をいっそう進めて,海外での競争力をつけていくことが求められます。

オープンMRIで培った技術や開発力を生かして超電導,高磁場の製品開発を推進

日立メディコは総合医療機器メーカーですので,製品のラインナップを絞っていくつもりはありません。モダリティは相互に影響するのですべて重要ですが,他社との相対的な関係で,われわれがアドバンテージを持っているMRIと超音波に開発投資を集中して,競争力を強化していきます。
MRI事業については,われわれはオープンMRIで世界トップシェアを持っていますが,事業セグメントとして,(1) 永久磁石オープンタイプ,(2) 超電導オープンタイプ,(3) 超電導高磁場クローズドタイプ,(4) アプリケーション,の4本柱で展開しています。
永久磁石のオープンMRIでは,きわめて高いシェアを国内外で持っていますので,新たな機能の追加を行いながら低価格化を図り,さらに世界に広めていきます。そのために中国への生産移管を進めており,今後も永久磁石オープンタイプの普及を図っていきます。
超電導オープンタイプでは,われわれには他社にはない1.2Tの「OASIS」があります。OASISの画質はクローズドタイプの1.5Tに匹敵し,この領域では独走していますので,装置の特長を最大限に生かしてしっかりと取り組んでいきます。米国ではこれまで,イメージングセンターを中心に事業を展開していましたが,病院群のGPO(Group Purchasing Organizations)の共同購入にOASISが登録されるなど,病院市場での大きな受注につながっています。
超電導高磁場クローズドタイプについては,1.5Tの「ECHELON Vega」を発売して,MRIのメインストリームにチャレンジしています。さらに,3T装置の開発も進めています。
そして,アプリケーションですが,MRIは高磁場化によりさまざまな情報が得られますが,それを可能にするのはアプリケーションなどのソフトウエアです。大学との共同研究により,臨床に役立つ最先端のアプリケーションの開発を進めており,すでにその成果が得られています。

オープンMRIのひとつの方向性である術中治療への取り組み

術中治療を目的に,永久磁石オープンMRIを国内の大学に納入させていただいています。今年の初め(2010年1月)にイスラエルのガリル社の冷凍手術器「CryoHit」の薬事承認を取得しました。最初の治験から承認まで時間がかかりましたが,この冷凍手術器はオープンタイプのMRIで有効に利用できますので,われわれにとっては大きなアドバンテージで絶好のチャンスと考えています。ただ,治療に関連することですので,機器やデバイスの供給体制などを含めて格段の注意を払いながら,慎重に進めるつもりです。

世界中のお客さまに日立製品を通じて信頼と安心をお届けする

社長就任にあたって,「世界中のお客さまに日立製品を通じて,信頼と安心をお届けする」ことを社員に伝えました。“信頼性の高い安心できる製品”を届けるだけでなく,お客さまが長い間製品をお使いいただく中で,日立の製品を使ってよかったと感じていただけることが重要だ,というメッセージです。お客さま最優先で,国内だけではなく世界中の国々で,お客さまに本当にフィットする製品を届けたいと思っています。医療機器ビジネスは,大量生産した標準的な製品を世界共通に流通させるのではなく,それぞれの国に合った製品を作っていかなければいけません。その国の事業規模の大小にかかわらず,信頼性の高いものをお客さまのニーズに合わせて,サービスも含めて提供していくことが一番重要です。
もうひとつ,社員には活気ある職場を実現しようと言っています。活気のある職場で作られた製品こそが,お客さまの心を動かす製品になると考えています。われわれの会社には約3600人の社員がいますが,その中のそれぞれの集団や職場に活気があって前向きに仕事をやっていけば,必ず新しい何かが生まれてきます。そういう意識を社員には持ってほしいと思っています。

(2010年6月9日取材)

三木一克(みき・かずよし) 
1973年京都大学大学院工学研究科修士課程修了後,日立製作所入社。電力・電機グループ電力・電機開発研究所長,機械研究所長などを経て,2005年執行役常務,柏事業場代表者。2008年代表執行役執行役専務。2010年4月より現職。工学博士。

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