日立メディコ

ホーム の中の inNavi Suiteの中の 日立メディコの中の 別冊付録の中の 磁遊空間 Vol.19の中の 教育現場から見たMRI−臨床での実践教育が望まれる

別冊付録

My Opinion

教育現場から見たMRI─臨床での実践教育が望まれる

吉川宏起(駒澤大学医療健康科学部教授/第37回日本磁気共鳴医学会大会大会長)

吉川宏起(駒澤大学医療健康科学部教授/第37回日本磁気共鳴医学会大会大会長)

●MRIの黎明期から今日までずっとMRIにかかわってこられましたが,その変遷と進歩の歴史についてお聞かせください。

東大放射線科に入局当時は,日本で最初の全身用CTが導入されたばかりで,腹部や胸部のきれいな画像が撮れ始めていました。それから3,4年後,日本に導入され始めた頭部用MRIの画像を学会発表で目にしたのがMRIとの最初の出会いです。当時は画質が粗くて,とてもCTにはかなわないという印象でした。
東大には1984年,シーメンス社製0.35T MRIが治験機として導入されましたが,コントラストが優れていて,CTでは造影剤を使ってもよく見えないものが描出できるという感動がありました。当時は0.02とか0.04Tの超低磁場や常電導磁石など,さまざまなタイプのMRIがありました。1980年代半ばには1.5Tが普及し始めましたが,画質の劇的な向上には驚きました。ちょうどいま,1.5Tから3Tになったのと同じ感覚です。当初は腹部や胸部の画質に課題があったのも,いまの3Tと同じでした。

●MRIの変遷を踏まえて,磁場強度と臨床的有用性の関係についてどのようにお考えですか。

病変のコントラストは必ずしも磁場強度に依存しないという議論はずっと続いていました。確かに同じSNRが得られるのなら,特に磁場が高くなくてもいいとは思います。ただやはり,最終的に求められる高いSNRには,高磁場でなければ追いつかないということも事実です。
日立メディコ社のオープンMRIは垂直磁場なのでコイルを体に巻きつけられますから,コイルのSNRをどんどん高くすることができます。磁場強度を補って画質を良くすることができるわけです。新しい超電導型オープンMRIも同様に,通常の1.2TよりずっとSNRが高くなっています。不可能を可能にする技術開発による挑戦ですね。

●MRIの高磁場化が進む中で,中低磁場装置の臨床的位置づけについて見解をお聞かせください。

整形領域のMRIの有用性はかなり高いのですが,今の医療制度のもとでは,まだ十分に使えていないというのが現状なので,もったいないと思います。中低磁場MRIや超音波を活用することで,手足の関節や骨粗鬆症などの診断がかなり手軽になってくるのではないかと期待されます。さらに,軟骨損傷を予防していく上でもMRIが有用です。軟骨の再生医療も進歩していますから,おそらく治せる時代になってくるのではないかという気がします。
また,オープンMRIでは,患者さんの快適さもさることながら,特に四肢・関節領域での動態検査など,いろいろな可能性がありますし,特に欧米では,閉所恐怖症の人が多いので,ニーズが高いと思います。

●ところで,診療放射線技師の教育現場では,MRIについてどのような教育を行っているのでしょうか。

CTと違ってMRIは撮像パラメータがたくさんあるので,それをマスターした技師がいないと,折角の高度な装置の能力が半減してしまいます。どうやって臨床的に有用な画像を提供するかがとても大事なのです。基礎を学ぶ授業や講演だけではなく,実際のルーチンワークを短期間に学べる実践教育の場が必要だと思います。 
それから,MRIに限らず解剖が画像診断の基本なので,画像解剖学を徹底的に叩き込むようにしています。

●第37回日本磁気共鳴医学会大会の大会長としての抱負をお聞かせください。

3T装置がだんだん円熟化してきて,画像のみならずいろいろな生理・生化学情報がわかるようになりつつあるというのが現状だと思います。MRIはどうしても画像が中心になってしまいますが,今回はそういった生理・生化学情報の進歩が理解できるような情報を提供して,今後のMRIの発展に貢献できればと思っています。また,会員の過半数を占める技師のための実践的教育プログラムを盛り込むことも考えていますので,多くの参加をお待ちしています。

吉川宏起 Koki Yoshikawa, M.D.
1977年  山口大学医学部卒業  同年,東京大学医学部附属病院放射線科に助手として入局
1985年  東京大学医学部附属病院放射線科講師
1990年  関東労災病院放射線科部長
1995年  東京大学医科学研究所放射線科助教授
2003年〜 駒澤大学医療健康科学部教授

▲ページトップへ

目次に戻る