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Technical Note

2012年4月号
Abdominal Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

CT−「Optima CT660」が採用した腹部領域における基礎技術 ─スピードと画質を両立するCViR

真尾洋子
CTセールス&マーケティング部

CTは診断機器であり,画質は最も優先的に考慮されなければならない要素の1つである。しかしながらCTの歴史の中で,コンベンショナルスキャンからヘリカルスキャン,さらにはX線ビーム幅のワイド化と多列化,そしてスキャンスピードの追究による革新的な進歩が起こるたびに,画質とスピードのバランスの中で時には犠牲にならざるを得ないことがあるのも事実であろう。本稿では,「Optima CT660」に採用した,臨床実用を目的とした高速性能を引き出しながら,昨今の低被ばくニーズに対応しつつ,高画質を実現することができる画像再構成法を紹介する。

■高速撮影時のアーチファクト除去

図1 Optima CT660
図1 Optima CT660

Optima CT660は,40mm幅の検出器と0.4秒で回転する走査ガントリ,そして,腹部検査ではヘリカルスキャンピッチ1.375を実用可能とし,最速137.5mm/秒のテーブル移動速度を実現できる設計である。小児であれば,全身70cmを約5秒で検査できる高速性能を有する(図1)。
この高速性を実用化するには,画質との両立が不可欠となるため,Optima CT660では,Clear View Technologyの中で,高速撮影と高画質を両立される機能“IQ Enhance”を搭載した。これは,マルチスライス特有のハイピッチデータ収集時に発生するウィンドミルアーチファクトを効果的に除去する機能で,プロジェクション領域において収集されたデータをいったんボリュームとしてとらえ,統計的に連続性のあるノイズ(パターン化されたノイズ)成分を選択的に除去する効果を発揮する(図2)。この機能により,ワイドビームでのハイピッチヘリカルスキャン時のアーチファクトが改善され,腹部領域での高速スキャンの実用化が可能になると期待できる。

図2 ウィンドミルアーチファクト除去効果
図2 ウィンドミルアーチファクト除去効果

■高速撮影時のノイズ除去

これまでは,高速化に伴うX線フォトン数の減少を補う目的で,X線管の高出力化(大型化)がなされてきた。しかし,装置の大型化によるエネルギー効率の低下や,維持コストの増加が課題であった。そこで,照射線量の減少により発生するノイズ成分を効果的に除去する目的で開発されたのが,“CViR(Clear View Image Reconstruction)”の中の“AiNR(Advanced Iterative Noise Reduction)”(逐次処理によるノイズ除去)である。これにより広範囲な腹部領域の検査において,高速かつ高画質を被ばくの低減とともに実用化が可能となることが期待される。このCViRの中の逐次処理によるノイズ除去方法は,以下のように説明することができる。
まず,この逐次処理には,2つの大きなステップがある。プロジェクション領域で構築されたイメージは,いったんボリュームデータに分割選択され,分割検証過程を経る。このボリュームデータの検証では,イメージ成分のボクセルは,類似した特性を共有して連続性を持つとされる。すなわち,連続性を持たないデータ成分はノイズとされる。
次に,イメージ成分とノイズ成分に分割されたデータにはそれぞれ別々に処理が施される。データが「構造的である」と明確に判断された場合は,イメージ成分として認識され,その構造境界の方向が決定され,この方向と直角方向の認識は画像処理の方法選択(平滑化と強調)に用いられる。他方,データが「非構造的である」と判断できる場合は,三次元的な平滑化によってノイズ除去が実行される。結果として,このノイズ除去処理が実際のイメージに適用された臨床例を提示する(図3)。またこの時,ROI計測にてSD値の改善を被ばく換算すると,最大36%の被ばく低減効果となる。このように考慮された方向でスムージング処理を実行することにより,スムージング処理による空間的分解能を劣化させる影響は最低限に保たれる。

図3 低被ばくノイズ除去効果
図3 低被ばくノイズ除去効果

最後に,このノイズ除去処理をより効果的にするために,プロジェクション領域でのノイズ除去を経たデータとイメージスペースでのノイズ除去後のデータを混合する。これらの全体的なフローチャートを図4に示す。

図4 プロジェクション領域とイメージ領域でのノイズ除去フローチャート
図4 プロジェクション領域とイメージ領域でのノイズ除去フローチャート

■腹部領域への適応期待

以上のように,CViRの搭載により,マルチスライスでのヘリカルピッチの高速化により出現するウィンドミルアーチファクトの効果的な除去と,高速化に伴うX線フォトンの希薄化によるノイズの影響を効果的に改善する逐次処理によるノイズ除去の併用は,薄いスライスから厚いスライスまで幅広くノイズの少ない高画質を構築する上で重要な役割を果たす。特に,腹部領域の検査においては,呼吸停止時間の制限や,動脈/門脈/静脈など血管の選択的造影効果の制限等により,限られた時間内での広範囲かつ高速撮影が必要とされる。
これらの高画質技術が今後の臨床での診断画像の質的向上に大きく寄与することを期待する。

●参考文献
1) Hsieh, J. : Adaptive streak artifact reduction in computed tomography resulting from excessive x-ray photon noise. Med. Phys., 25・11, 2139〜2147, 1998.
2) Avinash, G. : Method and apparatus for enhancing discrete pixel images. US Patent 6208763, 2001.
3) Hsieh, J. : Advanced Iterative Noise Reduction Methods, 2012.
   

*全身用X線CT診断装置 Optima CT660
*医療機器認証番号 222ACBZX00021000号
*Optima CT660は,「全身用X線CT診断装置 Optima CT660」の類型「Optima CT660J(75kVA)」と「Optima CT660(100kVA)」です。
*画像提供:海外および国内医療施設

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