ホーム inNavi Suite GEヘルスケア・ジャパン Technical Note一歩先行く“3.0Tクオリティ”を実現する「Signa HDxt 3.0T」
2009年9月号
特集−Step up MRI 2009−X 各社技術開発の最前線
最近の3T MRIに対するニーズは,もはや脳神経領域だけにとどまらず,体幹部領域にも広がりを見せている。このことは全身領域において,1.5Tと同等以上の検査内容を,3Tが持つ高いSNRを生かした高分解能撮像で実現することが求められていることを意味している。そのためには,マグネットの静磁場(B0)均一性を向上させ,3T特有のRF磁場(B1)不均一などの問題を克服し,良好な脂肪抑制画像や拡散強調画像が安定して得られなくてはならない。GEの「Signa HDxt 3.0T」は,一歩先行く“3.0Tクオリティ”のコンセプトのもと,3Tに期待される高画質撮像を全身領域において実現するハードウエアの構築,ならびにアプリケーションの開発を行ってきた。本稿ではそれらの特長について解説する。 |
◆ 高い静磁場(B0)均一性を有するマグネット 3Tのように高磁場になってくると,一般に静磁場均一性を高く保つことは難しいとされる。現状では,1.5Tよりも静磁場均一性が劣る3Tのマグネットもある中で,Signa HDxt 3.0Tのマグネットは,腹部撮像で用いられる40cm程度の大きなFOVにおいて,1.5Tと比較しても遜色ない高い静磁場均一性を実現している。この理由として,主磁場用の超伝導コイルとは別に,マグネット内に配置されたシミング用コイルに電流を流すことで,静磁場均一性を向上させる18ch超伝導シム(アクティブシム)を採用していることが,第一に挙げられる。従来の鉄片を貼り付けて調整するパッシブシムと組み合わせることで,より精度の高いシミングを実現可能とした(図1)。また,超伝導シムは,仮に使用年数が経過し,外部の環境変化等により均一度の低下が生じた場合でも,電流による微調整によって最良の状態まで簡単に静磁場均一性の調整を追い込むことができることから,長年にわたってマグネットの性能を劣化させることなく使用することが可能となる。 |
図1 18ch超伝導シムコイルを用いたGEのシミング GE独自の18ch超伝導シムコイルにより,高い精度のシミングを実現する。 |
◆RF磁場(B1)不均一の軽減−32素子QDボディコイルとエリプティカルドライブ 3TではRFの周波数が高くなることから,被写体によっては体幹部領域にて導電率や誘電率の影響によるB1不均一が発生し,画像の感度不均一とともに,SNRやコントラストの低下を引き起こすことがあることが知られている。Signa HDxt 3.0Tでは,B1不均一を軽減するためのハードウエアとして,まず送信用クワドラチャ(QD)ボディコイルの改良を行った。いままで1.5Tでは,16素子バードケージ型のQDボディコイルを採用していたが,3Tでは32素子にまで拡張させることでより高い均一性を実現した(図2)。 |
図2 32素子ボディコイル(a)と16素子ボディコイル(b)の感度均一性のシミュレーション 32素子ボディコイル(a)の方が,辺縁部と中心部における感度差が少なく,均一性が高い。 |
図3 エリプティカルドライブによる効果:フリップアングルシミュレーション 従来のRF送信(a)とエリプティカルドライブによる楕円送信(b)の比較。エリプティカルドライブの方が均一な励起を実現している。 |
図4 エリプティカルドライブによる効果:臨床画像 従来のRF送信(a)とエリプティカルドライブによる楕円送信(b)の比較。骨盤上部における信号の低下が軽減されている。 |
◆ DEALによる局所磁場不均一の克服 どんなに静磁場が均一なマグネットであっても,人体がガントリに入った状態では,頸部,乳房,足関節など複雑な形状を持つ領域や,眼窩や副鼻腔といった空気と隣接する部位においては局所磁場不均一が起こり,均一な脂肪抑制の実現が困難となることがある。GEが開発した“IDEAL”は,局所磁場不均一の影響を克服した新しい水脂肪分離技術であり,安定して確実な脂肪抑制を可能とした(図5)。 |
図5 IDEALの効果 従来の脂肪抑制画像(a)に比べて,IDEALによる水画像(b)では良好な脂肪抑制画像が得られている。 (画像ご提供:磐田市立総合病院様) |