ホームinNavi SuiteGEヘルスケア・ジャパン別冊付録 2010年10月号 The Power of GE MRI Optima MR360 1.5Tの技術解説
Optima MR360 1.5Tの技術解説
あらゆるニーズに応えるために “ベストを知り尽くしたMR”
2010年の国際医用画像総合展(ITEM)にて発表した「Optima MR360」は,総合病院,専門単科病院など,お客様ごとに異なる多様化されたニーズに最適に応えるため,“ベストを知り尽くしたMR”というコンセプトのもと,世界各地の技術チームの知識/技術力を日本の技術陣がリードし,製品化まで2年以上を費やした1.5T装置である。
Optima MR360は,新しいテクノロジーによって最適化されたハードウェアとなっている。まずは,ニーズに合わせて選択が可能な患者撮像テーブル。従来からの脱着可能なモービル型のテーブルに加えて,クレードル内にコイルを埋め込んだ固定型テーブルの2つのタイプから選択可能である(図1)。さらに,GSC 2(Gradient Spec Controller 2)による高速撮像,Optix Liteによる高画質,高い静磁場均一性を実現するHD Magnetを採用。高いシステム性能を実現しつつ,最大定格電力を抑えるという大きな技術的な課題を克服した上,システム主要部品を1つのキャビネットに収めることに成功した。
本稿では,本製品で開発したいくつかの新技術を中心に紹介する。
■Express Coil
Express Coilは固定型患者撮像テーブルのクレードル部にコイルエレメントが埋め込まれており,頭頸部アレイコイル,前部アレイコイル,後部アレイコイルの3つから構成されている(図2)。Express Coilを使用することで,広範囲の撮像が可能となり,またコイル交換の労力を軽減し,検査効率の向上に貢献する。開発当初は,設計候補を複数挙げ,画質,重量,撮像範囲を検討課題として試作品を作成した。その性能評価結果やデザインを世界各地の専門家と何度も考察することで,検査効率を高めるだけでなく,高画質を実現する現在のExpress Coilにたどり着き製品化に至った。
■GSC 2
Optima MR360は,“消費電力の抑制”と“スリューレート100mT/m/ms,最大傾斜磁場強度33mT/m”のグラディエントシステムでの高画質という相反する2つの要求を実現するために,1.5T MR「Signa HDe」で採用されたGSCをさらに進化させた(図3)。GSCとはGradient Spec Controllerの総称で,ハードウェアおよびソフトウェア両面において,傾斜磁場の性能を最大限に引き出す技術のことである。今回はこの高いハードルを乗り越えるため,ハードウェア/アプリケーション開発チームが共同で,“撮像プロトコールごとにシーケンスを最適化するアルゴリズム”を開発し,システムの持つ能力を最大限に引き出すことに成功した。このGSC 2テクノロジーにより,グラディエントエコー系のアプリケーションにて,最短TR1.0msを達成している。
■Optix Lite
Optima MR360に,当社 3T MR「Discovery MR750」で採用されているOptixテクノロジーを採用することで,コイルで信号を受信した直後に電気アナログ信号から光デジタル信号に変換し,外部からのノイズの影響を大幅に低減することに成功した(図4)。これにより,画質向上を実現しつつ,Optima MR360では8チャンネルのマルチチャンネルRFシステムに設計を絞り,ユニットの小型化/最適化を実現した。
■省スペース/省電力を実現したハードウェア
高性能を備えたシステムはコンポーネント自体が大きくなる傾向にあるが,システムの小型化設計には大きなこだわりを持って開発してきた。開発初期段階では,CADを使った機構設計を行いながら,模型を作製し,ユニットの大きさ,配置の確認を行い,サービス性/製造性と性能の両立をめざした結果,高性能を実現しつつも小型化に成功。従来の0.5T MRI装置と同等のスペースにシステムを設置することが可能になり,また,機械室が不要な設置レイアウトにも対応できる(図5)。
さらに,勾配電源に強力な水冷技術を採用し,かつ冷却効率を高め,また,Peak power managementにより使用電力の平準化を行った。これにより,同程度のシステムでは一般的に50〜100kVA必要な最大定格電力を,50%以下の25kVAに低減し,主要ハードウェアを1つのシステムキャビネットに収めている。
■豊富なアプリケーション
PROPELLER,MERGE,LAVA,VIBRANT,Inhanceなど,従来から製品化されているアプリケーションをこの新しいハードウェアに最適化させることで進化させつつ,研究機関向けのハイエンド装置であるDiscovery MR750や3T/1.5T MR「Signa HDxt」に採用されているIDEAL,Cube,SWAN,COSMICなどの最先端アプリケーションを搭載し,高いパフォーマンスを実現している(図6)。特に,従来より搭載要望の高い非造影MRAアプリケーションであるInhanceは,撮像機能をさらに充実させた。
■まとめ
このように,Optima MR360は,そのコンセプトである多様化されたニーズに最適に応えるため,“ベストを知り尽くしたMR”として,日本の技術陣がリードし,世界中のGE 技術チームの粋を集めて開発された高性能1.5Tシステムである。