GEヘルスケア・ジャパン

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healthymagination series 2012
Advanced Report No.2

「Discovery NM 530c」ユーザーインタビュー
半導体検出器の高画質,短時間,低被ばくのメリットを生かし
循環器診療のゲートキーパー役を果たす心臓RI検査を実施

医療法人天神会 新古賀病院 福山尚哉院長/放射線部・永松直樹技師

新古賀病院に導入されているSPECT装置「Discovery NM 530c」。左から橋爪一明放射線部部長,二子石直樹技師長,福山院長,永松技師
新古賀病院に導入されているSPECT装置「Discovery NM 530c」。
左から橋爪一明放射線部部長,二子石直樹技師長,福山院長,永松技師

GEヘルスケア・ジャパンでは2010年11月,革新的な半導体検出器を搭載した循環器専用のSPECT装置「Discovery NM 530c」の国内販売を開始した。核医学検査の歴史的な一歩と同社が位置づけるこのSPECT装置は,Alcyone Technologyと呼ばれる半導体検出器と集束コリメーションを利用した最新技術により,短時間撮像,低被ばく,かつ高画質を実現している。福岡県久留米市の新古賀病院(福山尚哉院長)では,2011年10月から同装置が稼働し,これまで300件ほどの撮像を行っている。従来機種に比べ撮像時間は約半分に短縮し,被ばく量を1/3低減している上に,fusion画像も含め有用な画像を提供している。Discovery NM 530cの使用経験について,福山院長と永松技師にお話をうかがった。

福山 尚哉 院長
福山 尚哉 院長
永松 直樹 技師
永松 直樹 技師

■ 循環器診療のゲートキーパーとして心臓RI検査を位置づけ

図1 放射線部内に設置されているDiscovery NM 530c 検出器が回転しない独特の構造を持つ。コンパクトなデザインで,最小レイアウトは3592mm×2508mmという省スペースを実現している。
図1 放射線部内に設置されているDiscovery NM 530c
検出器が回転しない独特の構造を持つ。コンパクトなデザインで,最小レイアウトは3592mm×2508mmという省スペースを実現している。

─ 新古賀病院の特色をお聞かせください。
福山:当院は,心疾患,脳神経疾患の救急症例を数多く受け入れている急性期病院です。診断・治療のための医療機器は最新のものをそろえており,特に放射線部門の装置の充実化を図っています。病院の規模から見ると,装置も診療放射線技師も多く,このような環境の中で優秀な人材が育っていると感じています。
永松:現在,放射線部が循環器領域の検査で使用している装置は,血管撮影装置が3台,循環器専用の64列CTが1台,そして,核医学のDiscovery NM 530cがあります。また,最近では心筋の評価のため,心臓MRIを開始しています。

─ 福山院長は循環器領域の専門医として,画像診断の意義をどのようにお考えですか。
福山:私自身は循環器内科医ですが,画像診断,なかでも核医学診断には以前から力を入れて取り組んでおり,核医学検査による虚血性心疾患の診断を行い,治療につなげていくことを長年やってきました。心疾患と言えば,かつては心臓弁膜症と先天性心疾患の診療が中心でしたが,1970年代に入ると心エコー検査が普及し始め,その後,核医学検査,冠動脈造影が発展していきました。また,80年代には経皮的冠動脈形成術(PCI)が盛んに行われるようになり,画像診断装置の進歩によって,循環器領域の診療は大きく進歩してきました。さらに,2000年代に入り,CT,核医学による画像診断が進み,fusion画像も作成されるようになりました。CTの形態画像と核医学の機能画像を重ね合わせることで有用な情報を得ることができ,より精度の高い診断が可能になったと思います。

─ 現在の循環器領域の診療における心臓RI検査の位置づけについてお聞かせください。
福山:心臓RI検査は,循環器診療の“ゲートキーパー”として位置づけています。循環器領域での心臓RI検査は1970年代から広がり始め,特に米国で普及しました。そのため,臨床データが豊富にあり,エビデンスが一番多いとされています。例えば狭心症では,心筋SPECT検査の診断と予後の相関がきわめて高いとされています。予後を改善することが治療の最終目標ですから,予後を予測するための診断装置の役割は重要です。一方でわが国は,被ばくを心配して,核医学に対して抵抗感を持つ患者さんや医療従事者もいたことなどから,普及に時間がかかったのではないかと考えています。米国では年間1000万件程度の心臓RI検査が行われていますが,日本では約30万件にすぎません。核医学検査を行うことで,質の高い治療につながり,患者さんにとってもメリットになると,私は考えています。

■ 被ばく低減などのメリットを考慮し半導体検出器搭載Discovery NM 530cを採用

図2 Discovery NM 530c横に設置されたワークステーション 左側のモニタはfusion画像を作成するAdvantage Workstation,右側のモニタは核医学装置用ワークステーションの「GEniE Xeleris」。3D逐次近似再構成処理が行われる。
図2 Discovery NM 530c横に設置されたワークステーション
左側のモニタはfusion画像を作成するAdvantage Workstation,右側のモニタは核医学装置用ワークステーションの「GEniE Xeleris」。3D逐次近似再構成処理が行われる。

─ Discovery NM 530cを導入した経緯をお話しください。
永松:Discovery NM 530c導入以前,当院にはGE社のSPECT/CT「Infinia Hawkeye 4」を含め,2台の核医学装置があり,循環器領域の検査にはInfinia Hawkeye 4を使用していました。もう1台の装置は,2010年には更新時期を迎えていましたが,その前年のRSNAで発表されたのが,放射線を直接電気信号に変換する半導体検出器(CdZnTe:テルル化亜鉛カドミウム)を採用した心臓専用SPECT装置のDiscovery NM 530cでした。この装置は,半導体検出器と集束コリメーション技術により,撮像時間を大幅に短縮できることに加え,放射性医薬品の投与量を抑えることも可能です。こうしたメリットを生かし,患者さんへの被ばく量を減らすことを最重要視して,循環器領域の検査専用のSPECT装置として,導入を決めました。
福山:私は,1990年ごろに米国のベイラー医科大学を視察し,そこで半導体カメラの検査を見学して以来,半導体検出器に関心を持っていました。2009年に画期的なSPECTとしてDiscovery NM 530cが発表され,2010年の第50回日本核医学会総会でGE社の担当者から説明を受けました。そして,γ線検出の効率が良いという半導体検出器のメリットを改めて認識しました。循環器領域では,核医学とCTの検査を行うことが多く,さらに冠動脈造影やインターベンションも施行すれば,患者さんのトータルの被ばく量が増えてしまいます。このSPECT装置を導入することで,被ばく量を従来より1/3程度減らすことができると期待して,採用することにしました。

■ 従来機種と比較して撮像時間が約半分に短縮 被ばく量を1/3低減

─ 稼働し始めてからの撮像プロトコールなど,検査の状況についてお教えください。
永松:循環器領域のSPECT検査はDiscovery NM 530c,それ以外はInfinia Hawkeye 4という使い分けをしています。現在,1日4件の検査枠を設けており,これまでのところトータルで300件程度の検査を行っています。放射性核種には201Tlを用いて,1検査あたり74MBq投与しています。午前中に1検査1時間枠として,負荷先行で検査を施行しており,運動負荷,もしくは薬剤による負荷をかけた上で,核種を投与後,約9分間で撮像して,トータル40〜50分程度で余裕を持って検査を終えています。その後,3〜4時間ほど間隔をとってから,安静時の撮像を行っています。

─ 以前使用していた装置と比較して,放射性医薬品の投与量,撮像時間はどのように変化していますか。
永松:従来の投与量は111MBqだったものが74MBqに減らせているので,被ばく量は1/3低減できています。撮像時間は,以前は18分程度でしたから,現在は約半分になっています。
福山:放射性医薬品の投与量を大幅に減らせたことは非常に良いことです。先ほども言ったとおり,循環器領域では多くの装置で検査を受ける上に,PCIなどの治療でも被ばくします。さらに再発症例も多いことから,複数回それを繰り返すことにもなってしまいます。その観点からも,少しでも被ばく量を減らすことは重要なことです。また,最近では30歳代の狭心症症例も増えています。このような比較的若い世代の患者さんの被ばく量を減らすことは,長期的な視点からも必要です。

図3 CTとのfusion画像1
図3 CTとのfusion画像1
82歳,男性。9年前に当院でステント挿入。今回胸部圧迫感があり来院。CTでは3枝すべてに狭窄が散見された。CTとのfusion画像で,第1対角枝の虚血が明らかとなり,同部にステント治療を行った。
  図4 CTとのfusion画像2
図4 CTとのfusion画像2
87歳,男性。11年前に当院にてステント挿入。今回胸痛があり来院した。ステント部の再狭窄を疑い心臓RI検査を行ったところ,虚血部は,別の枝である第1対角枝であった。

■ 心筋虚血の明瞭な画像やCTとのfusion画像でPCI術前に有用な情報を提供

─ 高いエネルギー分解能によって散乱線の少ない画像が得られることがDiscovery NM 530cの特長ですが,画質については,どのように評価していますか。
福山:心筋虚血の範囲の境界が明瞭に描出されています。以前の装置では虚血かどうかの鑑別が難しい場合もありましたが,Discovery NM 530cでははっきりと,より細かいところまで虚血の範囲が描かれていて,正確に評価できるようになりました。また,当院では,64列CTとのfusion画像を作成しており,核医学画像と重ね合わせることで,冠動脈の解剖学的な情報と合わせて評価しています。Discovery NM 530cとCTのfusion画像では,虚血の場所と範囲が冠動脈のどの枝の狭窄に起因しているのか,その関係が非常にわかりやくなっています。
永松:fusion画像の作成には,GE社の画像解析専用ワークステーションである「Advantage Workstation」のオプションソフトウエアである「CardIQ Fusion」を使用しています。

─ 撮像時間が短縮化されたことのメリットについては,どのようにお考えですか。
永松:高齢者や体の不自由な方など,じっとしているのが困難な患者さんの検査も多いので,短時間で撮像できることは,体動によるアーチファクトを防ぐことにもなり,画質の向上につながっています。また,患者さんの身体的な負担を軽減できるという点でも,大きなメリットだと思います。加えて,Discovery NM 530cには,リストモードと呼ばれるダイナミック収集ができる機能があり,撮像の後半に患者さんが動いてしまっても,それ以前のデータで再構成することも可能です。
福山:アーチファクトに関して付け加えると,Discovery NM 530cの場合,検出器を回転させることなくデータ収集ができ,検出器の動きによるブレや回転中心のズレによる影響がない画像を得られるという利点もあります。

─ Discovery NM 530cの画像について,患者さんやほかの医師はどのように評価していていますか。
福山:説明の際にfusion画像を使っていますが,患者さんの理解を深める上で非常に有効です。血管が細くなっているVR像に色で虚血の箇所を示す核医学画像の情報を重ねることで,インフォームド・コンセントにも効果があると思います。また,fusion画像は,患者さんだけでなく,PCIを施行する循環器内科医からも評価されています。以前SPECT画像だけを提供していた際には,診断が難しいという意見もありましたが,fusion画像を提供することによって,冠動脈造影やPCIを行う時には必ず参照しています。
さらに,現在当院では,冠血流予備量比(FFR)と心臓RI検査のデータを比較して,その相関について研究しています。従来の心臓RI検査は,狭心症の有無を鑑別することが主な目的でしたが,fusion画像によって,枝ごとに細かく診断できます。それがFFRのデータと一致すれば,より診断の精度が上がると考えています。

図5 リストモードでのダイナミック収集
図5 リストモードでのダイナミック収集
Dynamicデータ(左下)を見ると6分後より急激にカウントの増加が見られ,消化管への集積が原因と判明。これ以前のデータのみを再構成することにより,アーチファクトの少ない画像を得ることができた。

■ 同時収集やダイナミック収集を行い,循環器診療における真のゲートキーパーに

─ 今後,Discovery NM 530cを使ってどのようなことに取り組んでいきたいとお考えですか。
永松:現在はまだオーダ数が少ないのですが,2核種の同時収集を進めていきたいと思います。実際に撮像したケースでは,従来の装置よりも散乱線が少なく,心筋の内腔,心筋とその周辺組織が明瞭に分離された画像が得られています。
福山:現在は201Tlを核種にしていますが,99mTcの使用を検討しています。従来の装置では,99mTcと123Iの分離が明瞭ではありませんでしたが,エネルギー分解能が高いDiscovery NM 530cでは,高画質の画像が得られると思います。そのほか,今後はリストモードを使ったダイナミック収集により,血流の動態を連続的に追いかけて観察するといったことにも取り組んでみたいと考えています。

─ Discovery NM 530cに対するこれからの期待について,お聞かせください。
福山:Infinia Hawkeye 4と異なり吸収補正がないため,下壁,後壁の画質が低下する傾向があり,Prone収集を追加していますが,こうした点を改善し,さらに検査のスループットを上げていくことで,SPECT検査が循環器診療の真の意味でのゲートキーパーになると期待しています。


医療法人天神会 新古賀病院
医療法人天神会 新古賀病院
診療科:循環器内科,呼吸器内科, 消化器内科,腎臓内科, 糖尿病・内分泌内科,放射線科,血液内科,脳神経内科,膠原病・リウマチ科, 心臓血管外科,脳神経外科,消化器外科,呼吸器外科,乳腺外科,婦人科,麻酔科,病理診断科
住所:〒830-8577 福岡県久留米市天神町120
TEL:0942-38-2222 FAX:0942-38-2255
http://www.tenjinkai.or.jp/shinkoga

(インナービジョン誌 2012年4月号掲載)

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