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healthymagination series 2011
Advanced Report No.8

第51回日本核医学会学術総会,第31回日本核医学技術学会総会学術大会ランチョンセミナー3

心臓用半導体SPECT「Discovery NM 530c」の実力
─基礎的・臨床的検討─

望月 輝一
愛媛大学医学部放射線科教授

望月 輝一 1980年愛媛大学医学部卒業,同年放射線科入局。83年愛媛県立今治病院放射線科。89年米国ピッツバーグ大学放射線科留学。91年愛媛県立今治病院放射線科を経て,2004年から現職。

第51回日本核医学会学術総会,第31回日本核医学技術学会総会学術大会が10月27日(木)〜29日(土)の3日間,つくば国際会議場(つくば市)にて開催された。28日に行われたGEヘルスケア・ジャパン共催のランチョンセミナー3では,東京都健康長寿医療センター研究所附属診療所所長の石井賢二氏と愛媛大学医学部放射線科教授の望月輝一氏が「healthymagination—分子イメージングの将来展望」をテーマに講演した。


2011年3月,愛媛大学医学部附属病院に,半導体検出器を搭載したGE社製の心臓用SPECT装置「Discovery NM 530c」(以下,NM 530c)が導入された。また同時に,2検出器型の全身用SPECT装置「Infinia」も導入したことで,それぞれの特徴を比較することが可能となった。本講演では,NM 530cとInfiniaの使用経験について述べる。

■半導体検出器の原理と特徴

図1 アンガー型検出器と半導体検出器の空間分解能の比較
図1 アンガー型検出器と半導体検出器の空間分解能の比較

NM 530cの半導体検出器には,ガンマ線をコリメートする方法として,ピンホールコリメータが採用されている。27個のピンホールのうち,19個に検出器が設置され,その1つ1つがイメージを収集し,得られたデータを三次元の逐次近似法(Iterative Reconstruction:IR)を用いて再構成していく。1つのピンホールコリメータは,1ピクセル=2.46mmの素子が16×16マトリックスで並んでおり,それを4つ合わせて1つのピンホールコリメータ検出器となっている。
この半導体検出器には,テルル化亜鉛カドミウム(CZT)が採用されている。特長として,計数効率特性が良く常温でも使用できること,放射線吸収効率が高いこと,小型軽量化が可能なことが挙げられる。また,半導体検出器の空間分解能について,ラインソースファントムを用いて水のあり,なしで半値幅(FWHM)を調べると,水なし(空気中)では3mm,水があっても5〜6mmと,従来のアンガー型検出器と比較して非常に高い空間分解能を有していた。アンガー型検出器(Infinia)と半導体検出器(NM 530c)にて,実際に心筋ファントムを撮像してみると,半導体検出器の方が内腔が大きく,欠損もはっきりと描出されている(図1)。
一方,画像の均一性については,半導体検出器では中心部の均一性が低下していた。これは,アンガー型検出器では360°のデータ収集を行うのに対し,半導体検出器では180°のデータ収集を行うため,その差によるものと思われる。

■アンガー型と半導体検出器による症例検討

図2 アンガー型SPECTと半導体SPECTの画質の比較
図2 アンガー型SPECTと半導体SPECTの画質の比較

●視覚的スコアによる比較
アンガー型検出器と半導体検出器の差について,実際の臨床例にて検討した。対象は,狭心症が疑われた連続45例で,99mTc-tetrofosmin(TF)によるATP負荷SPECTを施行した。99mTc-TFを8mCi静注し,半導体SPECTにて10分間のデータ収集後に,アンガー型SPECTにて20分間のデータ収集を行う。半導体SPECTのデータ収集はリストモードで行うため,10分間のデータから,3分,5分の画像を再構成することも可能である。その後,3時間空けて安静時SPECTを撮像するが,その時には99mTc-TFを20mCi静注し,同じプロトコールで撮像する。
その上で,視覚的スコアにて,poorを1点,fairを2点,goodを3点,excellentを4点として平均値を算出して画質を評価すると,半導体SPECTは平均値が3.8点であったのに対し,アンガー型SPECTは3.4点と,半導体SPECTの方が有意に高い点数となった。実際の症例でも,アンガー型SPECTで指摘できなかった下後壁の虚血が,半導体SPECTでははっきりと認められた(図2)。
また,半導体SPECTでは,10分間の収集データから再構成した3分間の画像でも,10分間の画像と同等の画質が得られるほか,5分間のquantitative gated SPECT(QGS)解析画像でも,10分間と同等の画質が得られた。このほか,拡張期(EDV)や収縮期(ESV)の容積,左室駆出率(EF)の数値も,半導体SPECTでは5分間と10分間で差は認められなかったが,アンガー型SPECTでは少し過小評価していた。

図3 アンガー型SPECTと半導体SPECTのエネルギー分解能の比較
図3 アンガー型SPECTと半導体SPECTのエネルギー分解能の比較

●エネルギー分解能の比較
アンガー型SPECTと半導体SPECTにて,99mTcと123Iのエネルギー分解能について,ラインソースファントムを用いて散乱体あり(水3cm),なしで,半値幅(FWHM)やエネルギースペクトラムを変化させて比較した。その結果,半導体SPECTでは,99mTcと123Iを十分に分離できていた(図3b)。ファントムによる検討でも同様の結果が得られ,二核種同時収集の可能性が示唆された。一方,アンガー型SPECTでは99mTcと123Iのエネルギーピークが近く,分離が十分とは言えなかった(図3a)。

■二核種同時収集に関する検討

●123I-BMIPPダイナミック収集+123I-BMIPP/99mTc-TF同時収集
当院における,NM 530cを用いた123I-BMIPPダイナミック収集+123I-BMIPP/99mTc-TF同時収集の撮像プロトコールは次の通りである。まず,123I-BMIPPを3mCi静注し,リストモードで30分間のダイナミック収集を行う。次に,99mTc-TF 10mCiを静注30分後に20分間でデータ収集を行い,123I-BMIPPについては静注から80分後に,2回目のデータ収集を20分間で行う。
図4は,123I-BMIPPの1分ごとのダイナミック収集の画像だが,123I-BMIPPが徐々に心筋に集積していく様子が描出されている。また,99mTc-TFと123I-BMIPPのいずれも明瞭な画像が得られている(図5)。123I-BMIPPは,99mTc-TFと同等に高画質である。また,QGSについて比較したところ,99mTc-TFと123I-BMIPPのいずれも同じように,きれいなボリュームカーブが得られた。

図4 123I-BMIPPの1分ごとのダイナミック収集の画像
図4 123I-BMIPPの1分ごとのダイナミック収集の画像
図5 二核種同時収集で得られた99mTc-TF(上)と123I-BMIPP(下)の画像
図5 二核種同時収集で得られた99mTc-TF(上)と123I-BMIPP(下)の画像

●99mTc-MIBI/123I-MIBG同時収集
図6は,99mTc-MIBI/123I-MIBG同時収集に関するアンガー型SPECTと半導体SPECTの比較だが,アンガー型よりも半導体の方がかなり高画質であった。

図6 二核種同時収集時のアンガー型SPECTと半導体SPECTの比較
図6 二核種同時収集時のアンガー型SPECTと半導体SPECTの比較

■ダイナミック収集に関する検討

図7 99mTc-TF SPECTダイナミック収集におけるTime Activity Curve
図7 99mTc-TF SPECTダイナミック収集におけるTime Activity Curve

従来より,心筋血流の絶対値の計測にあたっては,13NH3 PETを撮像し,Time Activity Curve(TAC)にて評価されてきたが,これを99mTc-TFまたは99mTc-MIBI SPECTにて行えないかと考え,実際に検討を行った。安静時ダイナミック収集における10秒ごとの画像では,4mmスライス厚でも,99mTc-TFが徐々に心筋に集積される様子が認められる。8mmスライス厚のデータでは画質が改善し,さらにフィルタを用いることでスムージング効果が得られた。また,TACでも,十分なカーブが描かれていた(図7)。
将来的には,99mTc-TFまたは99mTc-MIBIのダイナミックSPECTのTACをもとに,局所心筋血流の絶対値や心筋全体の血流量を測定したいと考えている。

■まとめ

NM 530cは,高分解能による画質の改善(診断能の改善)や,高エネルギー分解能を活かした99mTcと123Iの二核種同時収集,高感度による収集時間の短縮ならびに放射性核種投与量の低減(被ばく低減)など,さまざまなメリットをもたらしている。さらに,リストモード収集が可能なことで,収集後に条件を変更して画像再構成が可能なほか,撮像時間と画質のバランスに関する精度検証にも役立っており,臨床的にきわめて有用な装置であると考えている。

*本検討は群馬県立県民健康科学大学診療放射線学部の高橋康幸准教授,GEの小川昌美様,細野栄保様,吉田憲司様,栗原英之様,日本メジフィジックスの小林和徳様,浜田一男様,富士フイルムRIファーマの寺岡悟見様,岡本法暁様の全面的な協力を得ました。感謝致します。

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