前述のとおり,Volume Navigationによって超音波画像とGd-EOB-DTPA造影MRIをFusionさせることで,それぞれの長所が引き出せれば,より多くのHCCが検出可能になると考えている。そこで,実際の症例で検討してみた。
1.検討方法
方法は,超音波BモードとCT(単純CTと造影3相)を撮影し,所見のあった症例についてはGd-EOB-DTPA造影MRIの肝細胞相(T1強調像),およびT2強調像,拡散強調像を撮像した。次に, BモードとGd-EOB-DTPA造影MRIのFusion画像を作成し,Bモード,造影超音波,造影CTとそれぞれ対比させた。本検討では,多血性HCC以外の病変については,可能なかぎり生検を行った。
2.対象
上記の方法で検出し,米国肝臓病学会(American Association for the Study of Liver Diseases:AASLD)のガイドラインに則って診断したHCCは84結節であった。このうち,画像診断のみで検出できた1〜2cmのHCCは43結節,2cm以上のHCCは26結節で,画像診断のみではHCCと診断できなかった15結節は生検でHCCと診断した。平均腫瘍径は1.8cmであった。
3.症例提示
症例は,造影CTにてS6にhypervascularなHCCが認められたが,S7の病変が検出できなかった例である(図2)。超音波Bモード単独では,内部エコーが不均一であり,同定困難であった。そこで,別の角度のGd-EOB-DTPA造影MRIで描出された脈管を目安にして超音波の位置合わせを行い,じっくり観察すると,Gd-EOB-DTPA造影MRIで検出された病変に相当する位置に超音波でも病変が認められた(図3 ▼)。造影超音波の21秒後の早期相では,同病変は早期濃染像を呈し(図4 ▲),その後の晩期相でwashoutを呈した。造影超音波では小さいが典型的な肝がんと診断した。患者さんは,すぐには治療を希望しなかったため経過観察となった。その後,同病変が造影CTでの早期濃染像とwash outを呈したため,造影CTでも典型的な肝がんと診断され,ラジオ波熱焼灼療法(RFA)が施行された。造影超音波では,1つの病変を経時的に観察可能で,血流の有無を非常に明瞭にとらえることができる。 |