肝がんの治療は,外科手術のほか,肝動脈塞栓術(TAE)や肝動脈化学塞栓術(TACE),経皮的肝アルコール注入療法(PEIT),ラジオ波焼灼療法(RFA)などの局所治療が中心となるが,最近では冷凍療法や,陽子線治療および重粒子線治療なども注目を集めている。こうした中におけるHIFUの位置づけと,これから果たすべき役割について述べる。
1.肝がんのHIFU治療の実際
当院のFEP-BY02 HIFUは,2つのトランスデューサーを搭載した照射装置と,GE社製の超音波診断装置,治療のプランニングや照射の制御を行うワークステーションで構成されている(図1)。照射装置の中央に搭載された超音波プローブでターゲットを確認し,コントロールパネルで照射時間と照射回数を制御しながら治療を行う。照射方法には間歇照射と連続照射があり,照射時間が長くなれば組織の変化は広く,かつ強くなるため,ターゲット周辺の障害,特に皮膚のやけどなどを勘案し,患者さんに痛みの有無を確認しながら出力と時間を調整していく。HIFUはきわめて低侵襲で,数回に分けて治療可能なため,外来で通院治療を行うこともできる。
2.症例提示
症例1(図2)は,約5cmの比較的大きな肝細胞がん(HCC)で,寝台を3mmピッチで動かしながら,腫瘍全体を焼灼した。HIFU治療は病変の大きさにより,1〜3日に分割して治療する。その日の焼灼の評価および翌日の焼灼予定範囲をより正確に確認するために,HIFU治療後,ソナゾイド造影超音波を施行する。Kupffer image(図2 b)では,焼灼領域がdefect像として描出されるほか,vascular imageでは残存血流の有無を確認することができる。治療後の評価はCTで行うことも可能だが(図2 c,d),造影超音波を用いれば,治療から効果判定までを超音波だけですませることが可能となる。
このほかHIFUでは,腹水のある症例や,周辺に胃や腸がある肝がんやHCC門脈腫瘍栓の症例など,従来の局所治療や手術ではリスクの高い症例でも,安全に治療を行うことができる。 |