胸部〜上腹部、特に横隔膜近傍における呼吸性移動の問題を解決する方法として、GEでは、“Motion Free PET/CT”というコンセプトで呼吸同期収集を提案してきた。これは、呼吸同期PETと呼吸同期シネCTを用いて、呼吸位相ごとに吸収補正を行い、微小病変の確実な描出と定量精度を高める“Motion Match”技術である。今回、導入した最新のPET/CTは、このMotion Matchを自動化し、ルーチンでの検査を現実化できる装置となっている。
1.呼吸情報収集装置とデータ収集
呼吸情報は、バリアン社製の呼吸監視装置(Real-time Positioning Management System:RPM)を用いて、CTとPETを同時に収集している。具体的には、胸部または上腹部の上に置いたターゲットが上下する位置情報を、PETテーブルの末端に置いたカメラで収集し、専用パソコン上にサイン曲線として得る(図4)。CTの場合、X線照射情報をRPM波形データに書き込み、その波形データをコンソールに転送してCT画像の位相分割を行う。PETの場合は、RPMからトリガー信号を得てゲート収集を行うことにより位相分割を行う。最後に画像再構成を行うが、あらかじめCTおよびPETの分割数をそろえることにより、自動で位相ごとのフェーズマッチ(位相の合わせ込み=Motion Match)を行うことが可能となる。
2.PET/CTの追加PARC(PET Acquisition Reconstruction Computer)システム
呼吸同期の膨大なデータを短時間で処理するためのシステムである。
3.シネCT収集
CTはコンベンショナルでの連続撮影を行う。ヘリカル撮影と違ってテーブルが動かないので、より精度の高い呼吸同期CT撮影を行うことが可能である。16列CTでは2cmのスキャン範囲を1呼吸で収集する。PETの1スキャン範囲に相当する16cmをカバーする場合は8呼吸分(8スキャン)必要で、呼吸の長さによるが、30秒前後のCT撮影時間となる。
4.リストモードPET収集
PETはサイノグラムに時間データを付与できるリストモード収集を行う。1スキャン範囲を10分間程度でデータ収集を行う。CTとPETのデータ収集時間は合計で十数分である。2スキャンする場合には、20分程度で終了できるように、PET収集時間をやや短縮している。
5.Motion Match
PETをリストモードで収集しているため、呼吸位相はレトロスペクティブに任意に分割できるが、当施設では、呼気終末で横隔膜が動いていない位相をとらえるために奇数分割が望ましいと考え、5分割としている。CTとPETの5位相分の再構成画像を作成し、位相ごとに吸収補正を行い(Motion Match)、5セットのPET/CT画像ができることになる。従来、この処理は煩雑なワークフローで、また、画像再構成の時間がかかっていたことなどから研究利用レベルにとどまっていた。しかし、本装置ではコンソール上で位相分割とシリーズ化を自動で行えるようになったことで大幅にワークフローを改善したこと、上記のPARCにより、画像再構成時間が短縮(1フレームあたり最短40秒)されたことにより、トータルの処理時間は5分程度になっている。
6.同期画像表示
データ収集処理コンソール上では、融合画像の動画表示が可能である。診断用のワークステーション(Advantage WorkstationとXeleris)では、融合画像の動画表示が自動でないため、現時点ではマニュアルで作成する必要がある。この点、新しいバージョンのAdvantage Workstation(Volume Share4)では、自動化ソフトがオプション設定されるということである。 |