Vol. 4 脳血管内治療医にとって最適な血管撮影装置とは?

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 当院における脳血管内治療の件数は増加傾向にあるが、装置の老朽化に伴い2007年8月、GE社製フラットパネル(以下、FPD)アンギオ装置「Innova3100IQ」を導入し、続けて、2008年5月より、同社FPDバイプレーン装置「Innova3131IQ」を導入した(図1)。現在は、脳動脈瘤のコイル塞栓をはじめ、頸動脈ステント留置(CAS)、動静脈奇形(AVM)や硬膜動静脈瘻(dAVF)のNBCA(n-butyl-cyanoacry late)塞栓、さらには頭蓋内ステント留置など、年間300件を超える脳血管内治療に活用している。2008年11月に名古屋で開催された日本脳神経血管内治療学会(JSNET2008)において講演する機会を得て、表題である、「脳血管内治療医にとって最適な血管撮影装置とは?」についての考察を行ったので、以下にまとめてみる。

財団法人広南会広南病院血管内脳神経外科(広南病院サイトへ)
松本康史

図1 FPD搭載バイプレーン型血管撮影装置Innova3131IQ
FPD搭載バイプレーン型血管撮影装置
Innova3131IQ
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s 術者の眼となる透視画質の良さ

 機種選定において、われわれが最も重視したのは、「術者の眼となる透視画質の良さ」である。特に、脳血管内治療において多用される、拡大透視(FOV12cm)時の画質の良さは重要であるが、X線装置にとって、これは非常に厳しい要求であり個々の装置性能の差が最も現れやすい。実際に、筆者自身が各社の最新鋭の装置を比較検討したが、その中でもGE社のInnovaは評価できるものがあった。その理由として、アンギオ装置に特化したFPDを自社開発し、X線を画像に変換する効率(DQE)の高いFPDを採用していること、FPDのノイズ低減技術や、拡大透視時の特殊な信号処理などが挙げられる。

  現在は、高画質の透視画像ならびにロードマップ画像を用いて、的確なカテーテル操作が行えるだけでなく、撮影画像においても、微細な穿通枝の描出や、コイルに付着した血栓等の早期発見が可能になり、日々の脳血管内治療において威力を発揮している。

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s 正面・側面にベストサイズなFPDであること

 各社からさまざまなタイプの装置がリリースされているが、特に脳血管内治療目的を考慮した場合、FPDが30cm(12インチ相当)というサイズはベストサイズと言える。シングルプレーンでは、長方形FPDのように一辺が多少大きくてもさほど問題にならないが、バイプレーン装置の場合は、無視できない問題となることがある。Innova3131IQは、正面・側面に30cmのFPDを搭載した世界で唯一の装置であり、特に、側面からの透視や撮影においては、頸動脈から頭頂までのすべてを1回の撮影でカバーできるだけでなく、X線被ばく量や造影剤量の低減にも寄与することができる。もちろん、脳血管内治療において必要とされる深いワーキングアングルに、ベストなサイズのFPDによって、しっかりポジショニングすることが可能である(図2)。

図2 30cm×30cmのFPDは、頸動脈から頭頂までの広範囲を一度にカバーできる。
30cm×30cmのFPDは、頸動脈から頭頂までの広範囲を一度にカバーできる。
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s 3Dの使い勝手と画質の良さ

 当院では、イメージインテンシファイア(I.I.)装置時代から、より的確な脳血管内治療を目指し、3D画像を活用して動脈瘤の形状の把握や瘤の定量解析、ネック部の詳細確認などに大いに活用してきた。約10年近くにわたる旧装置の使用経験を経て、今回の装置導入に至ったわけであるが、まず、3Dの画質そのものが飛躍的に向上したことは大いに評価できる。微細な穿通枝をも明瞭に描出できる高画質な3D画像を基に、適切なワーキングアングルを決めることができ、その角度をCアームに自動転送できるので、円滑に脳血管内治療を行うことができる。

  また、2つのモニタを用いて画面表示を自由にレイアウトし、異なる3D画像や各断面画像を表示できる機能も重宝している。例えば、1画面にVolume Renderingの3D画像を表示してワーキングアングルを決定し、もう1画面には透過モード(Transparency)の3D画像を表示して動脈瘤のネックの具合いを詳細に観察し、距離計測することができる。特に、透過モードの3D画像の画質はきわめて良好であることも、評価できるポイントである。

  さらに、ワークステーション(Advantage Workstation VS2)では、3D画像のみならずDSA画像も表示できるほか、院内のMR、CT装置とも接続されているため、必要に応じて他のモダリティ画像を迅速に見ることができるので非常に役立っている(図3、4)。学会発表に必要な静止画や動画が、USBメモリに簡単に保存できる機能もとても便利である。

図3 Advantage Workstation VS2のモニタ
Advantage Workstation VS2のモニタ
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図4 治療に役立つさまざまな画像。上2つが透過像、下2つがVolume Rendering像である。動脈瘤と血管の関係、動脈瘤の内側から見たネックの様子などがよくわかる。
治療に役立つさまざまな画像。上2つが透過像、下2つがVolume Rendering像である。動脈瘤と血管の関係、動脈瘤の内側から見たネックの様子などがよくわかる。
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s その他の便利な機能

 血管内治療全般において、術者は細心の注意を払って手技を行っているが、予期できないことが起こることもある。手術の反省および学会発表等において、これらの動画を提示する機会も多いが、Innovaの場合、動画を保存したいと思った時点から過去に30秒程さかのぼり、一連の透視画像をDICOM保存することができる。この画像は、通常のDVDで保存してある画像とは一線を画する高画質である。

  また、脳血管内治療は、鼠径部からのアプローチが大多数を占める。Innovaの正面アームには、オフセットCアーム構造が採用されており、バイプレーンセッティングされている状態であっても、長身の患者において寝台移動のみで鼠径部の観察を行えるため、便利である。さらには、麻酔科医や看護師が患者頭部の至近距離からアプローチできるため、コ・メディカルスタッフからの評価も高い(図5)。

図5 オフセットCアーム構造により、患者さんへのアプローチが容易である。
オフセットCアーム構造により、患者さんへのアプローチが容易である。
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s 症例提示

 72歳、女性。未破裂脳底動脈先端部動脈瘤(図6)に対して瘤内塞栓術を行った。3D-DAで穿通枝の分岐部を確認し(図7)、塞栓術中も穿通枝の状態を確認しながら塞栓を進め、良好な塞栓を得ることができた(図8)。

図6 未破裂脳底動脈先端部動脈瘤(72歳、女性)
未破裂脳底動脈先端部動脈瘤(72歳、女性)
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図7 図6の症例の3D-DA像
図6の症例の3D-DA像
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図8 図6の症例の術後画像
図6の症例の術後画像
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s おわりに

  当院では動脈瘤に対し、脳神経外科の医師と十分に協議し、クリッピングもしくは脳血管内治療のどちらで行うかについて、お互いの治療を尊重し合いながら、患者さんにとって最も適した治療法を検討している。近年では、クリッピング、脳血管内治療の件数はほぼ同等であり、バランスの取れた治療が行えているひとつの証と言える。

  2008年はCASが保険収載され、次世代コイルであるマトリックス2やセレサイトも使えるようになった。今後も、装置メーカー、デバイスメーカー双方による血管内治療へのさらなる貢献にも期待したい。

 これからも2台の装置を駆使して、より的確な脳血管内治療を鋭意行っていきたいと考えている。

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GE社の血管撮影装置についてはこちらをご参照ください。

●お問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
(2009年8月1日より社名が変更になりました)
〒191-8503 東京都日野市旭が丘4-7-127 TEL 0120-202-021(カスタマー・コールセンター)
http://www.gehealthcare.co.jp