Vol.10 婦人科腫瘍におけるPET/CTの有用性と問題点 - 再発診断に威力を発揮するPET/CT。真に役立つ検査にするためにも、臨床医と放射線科医のコミュニケーションを。

WEB REPORTインナービジョン誌掲載記事TOPに戻る  


JSAWI(The Japanese Society for the Advancement of Women's Imaging)2008・第9回シンポジウムが9月5日、6日の2日間、淡路夢舞台国際会議場で行われた。初日にはGEYMS共催のランチタイムセミナーとして、医療法人禎心会 セントラルCIクリニック院長の塚本江利子氏が、「婦人科腫瘍におけるPET/CTの有用性と問題点」をテーマに講演した。
塚本江利子 氏
医療法人禎心会
セントラルCIクリニック 院長
塚本江利子 氏
杉村 和朗 氏
座長:
神戸大学大学院
医学研究科放射線医学分野教授
杉村 和朗 氏
  会場風景
会場風景




婦人科腫瘍への適応と特徴

 婦人科腫瘍では、2006年4月からPET/CTが保険適応となった。他の検査で病期診断、転移・再発の確定診断に至らない場合での使用が認められており、子宮がん、卵巣がん疑い症例や、治療効果判定、経過観察目的は対象とならない。当クリニックでは、婦人科腫瘍の検査依頼が増加しており、全体の1割程度を占めている。また、検査目的は再発診断が最も多い。

 PET/CTは、PETとマルチスライスCTを組み合わせたもので、最新の装置では64スライスのCTを搭載している。当クリニックが使用しているGE社製のPET/CTでは、CTを撮影した後PETを撮像して、ソフトウエア上でフュージョンする。PET/CTの最大の特長は、CTによる形態情報が付加されるため、何がどこにあるかが非常によくわかることである。PETやCT単独の検査よりも、診断の確実性が大幅に向上する。さらにPET/CTでは、CTで吸収補正を行うことでノイズの少ない画像が得られるようになったほか、撮像時間も大幅に短縮されるようになった。

▲ページトップへ

婦人科腫瘍の症例提示

 子宮がん、卵巣がんのFDG-PETは、卵巣がんの病期診断では試験開腹よりも劣るというデータがある一方、再発診断には非常に有用であるとする文献も多い。また、原発腫瘍の鑑別が困難なことが多く、良性腫瘍や嚢胞性腫瘍への集積が低い場合もあり、広がりや臓器浸潤がわかりにくいことからMRIが必須となる。

 子宮頸がんのメタアナリシスでは、PANが84%、Pelvicが79%の感度で検出でき、子宮体がんのリンパ節診断では、70〜90%の感度を持つが、1cm以下の腫瘍は検出率が低い。また、子宮体がんや卵巣がんの再発診断では90%前後の感度がある。CA-125が陰性でも感度が54%あり、CA-125が陽性の場合は、他の検査で検出できない腫瘍をかなりの確率で検出できる。

 例えば図1の子宮頸がん症例では、原発巣のほかに骨盤内にリンパ節転移があることがわかる。PET/CTでは、このような微小なリンパ節転移も検出でき、診断がつきやすい。子宮体がんの骨転移もきれいに描出することができる(図2)。再発が疑われる場合に意外に多いのが骨転移であり、骨シンチを施行してもわからなかった病変がPET/CTを撮像すると検出できることがある。

 図3は、卵巣がんの腫瘍マーカー上昇例である。この症例はCA19-9が上昇し、CTとMRIを数回施行したが、異常が認められなかった。PET/CTを施行したところ、腹部に集積があったが、PET画像だけでは病変部を特定できず、CT画像との重ね合わせにより、腹壁に結節があり、転移していることが判明した。このように、腫瘍マーカーが上昇しても他検査で検出できなかった症例で、PET/CTで再発の診断がついたものは、当クリニックにおいて約5割あった(図4)。また、再発部位としては、リンパ節転移、腹膜播種などが多い。

図1
図1
【画像をクリックすると拡大表示します 】


図2
図2
【画像をクリックすると拡大表示します 】


図3
図3
【画像をクリックすると拡大表示します 】


図4
図4
【画像をクリックすると拡大表示します 】


▲ページトップへ

PET/CTのピットフォール

 婦人科腫瘍におけるPET/CTの有用性は高いが、注意すべき点がいくつかある。まず、尿管、膀胱、腎臓周囲の病変の場合、尿中排泄によるFDGの生理的集積があるため、鑑別がしにくいという問題がある。図5は、尿管周囲に再発巣があった症例で、2007年1月にPET/CTを施行したものの診断がつかなかった。その4か月後に再度施行したところ、再発巣が検出できた。1回目の検査では、尿管周囲の集積を生理的集積と思ってしまったが、見直すと水腎症があり、生理的集積ではないことは明らかである。このような副所見を重視しないと見落としにつながる。

 原発腫瘍の診断にも注意が必要である。図6は、子宮腺筋症と子宮筋腫の症例であるが、良性腫瘍にも集積があり、原発腫瘍との鑑別が難しい。また、変性の伴った子宮筋腫と子宮肉腫の鑑別診断も困難である。

 ホルモン周期による子宮内膜と卵巣への集積も注意すべきである。排卵期には 卵巣や子宮内膜に、月経時には子宮内膜にFDGが集積する。読影にあたっては、最終月経を知っておくことが重要である。図7はaとbともに子宮内膜への集積が認められるが、aが月経1日目で、bが子宮体がんの症例である。このような症例では、MRIで確認する必要がある。

 さらに、図8のように腎臓の下に卵巣を移植している場合がある。臨床医が施術していても、それを放射線科医が知らないことがあるので注意しなければならない。このほか、タモキシフェンを使用した乳がん症例で子宮がんが発生した例が報告されていること、CA19-9が上昇した症例で子宮がんや卵巣がんを原発とする場合があることに、注意を要する。

図5
図5
【画像をクリックすると拡大表示します 】


図6
図6
【画像をクリックすると拡大表示します 】


図7
図7
【画像をクリックすると拡大表示します 】


図8
図8
【画像をクリックすると拡大表示します 】


▲ページトップへ

コミュニケーションが重要

 ピットフォールに落ちないためにも、“正確な診断は詳細な臨床症状から”と心得ておくべきである。臨床医の常識は放射線科医の非常識であり、放射線科医の常識は臨床医の非常識であると言える。それだけに、お互いのコミュニケーションが重要である。“役に立つ検査はわかりやすい言葉と情報から”であり、“知っているだろうと思う落とし穴、関係ないだろう思う落とし穴”に落ちないようにしていただきたい。

▲ページトップへ

*JSAWI2008・第9回シンポジウム GE横河メディカルシステムランチタイムセミナー
(2008年9月5日)より抜粋

●お問い合わせ先
GE横河メディカルシステム株式会社
〒191-8503 東京都日野市旭が丘4-7-127 TEL 0120-202-021(カスタマー・コールセンター)
http://www.gehealthcare.co.jp