Vol. 08 ヘルスケアITの効果的な活用に向けて − 院内IT化の成功の秘訣とは。院内情報の統合と連携により、コスト削減と業務の効率化を図る。

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PACS/HIS 連携と
地域医療連携システムについて
(演者:藤川光一氏)
藤川 光一 氏
JA 広島厚生連廣島総合病院副院長
藤川 光一 氏
根東 義明 氏
座長:
東北大学病院メディカルITセンター
部長 根東 義明 氏
ペーパーレスとフィルムレスを
実現する統合画像管理の有用性
(演者:近藤博史氏)
近藤 博史 氏
鳥取大学医学部附属病院
医療情報部部長/
鳥取大学総合メディア基盤センター
米子サブセンター長
近藤 博史 氏
会場風景
会場風景

第12回日本医療情報学会春季学術大会(シンポジウム2008 in 秋田)において5月30 日、ヘルスケアIT をテーマに GEYMS 共催のランチョンセミナーが行われた。

 

 




PACS/HIS 連携と地域医療連携システムについて(演者:藤川光一氏)

 JA広島厚生連廣島総合病院の藤川光一氏は、「PACS/HIS連携と地域医療連携システムについて〜厚生連廣島総合病院におけるIT化事例」と題して講演を行った。同院では2006年5月に電子カルテシステム、2007年4月に地域医療連携システムが稼働を開始した。講演では、運用の実際をスライドで示しながら、日常業務の効率化につながるポイントを紹介した。

 始めに藤川氏は、PACS/HIS連携において臨床医が最も重視することとして、画像参照が容易なこと、画像診断依頼票の作成が容易なこと、読影時にさまざまな情報が容易に得られることなどを挙げた。同院では、PACSサーバはCentricityを、画像配信サーバはCentricity Web HGを使用し、院内456台のHIS端末のほか、インターネットVPNを介して連携先の医療機関にも他の診療情報とともに配信して いる(図1)。画像はHIS端末の患者一覧、カルテ画面、オーダ画面、リンクを貼ったカルテの文字列などから3クリック以内で表示されるように設計し、またWebビューワの機能強化により、従来の画像表示・計測機能のほか、シネ表示、汎用コマンドの画像上右クリックメニューへの格納、画像単位のURL取得機能の搭載など、画像参照の能率化とHISとの連携機能の充実を追究したという(図2)。また、検査依頼票作成画面の感染症情報、禁忌薬剤、腎機能等を記入する欄へは、依頼書印刷のタイミングでHISから最新情報を取得して入力印字する構造としており(図3)、依頼医師の省力化が実現している。画像診断報告書作成システムには、対象患者さんの検体検査や病理検査の結果が1クリックで表示される構造や、次回受診日を一覧表示する構造が備わっており、読影医の業務を効率的なものとしている。

 次に、藤川氏は、同院の地域医療連携システムの特徴について述べた。院外医療機関の医師は、地区医師会が主体で運営する医療情報ネットワーク(VPN)を経由して同院の地域医療連携システムにアクセスし、患者さんが持参した認証用バーコードを読み取ることで当該患者さんの同院におけるカルテ、医用画像、諸種報告書、検体検査結果など、診療情報の大部分を閲覧することができる(図4)。藤川氏は同システムのメリットとして、ID gateway service を利用しているため初期費用やランニングコストが安価、患者自身が院外医療機関へバーコードを持参するためシステム参加への強いインセンティブが働く、情報漏洩の危険性が低い、個人情報開示に関する任意性、自己責任性が確保されており、個人情報保護に関するトラブルが発生しにくい、という4点を挙げ、結果として紹介率、逆紹介率が向上するなど、医療連携の効果は確実に向上していると述べた。

図1
図1 PACS・HISの概要
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図2
図2 画像Webビューワの機能強化
(Centricity Web HGの開発)
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図3
図3 画像診断依頼票・照射録作成支援
【画像をクリックすると拡大表示します 】


図4
図4 地域医療連携システム
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ペーパーレスとフィルムレスを実現する統合画像管理の有用性(演者:近藤博史氏)

 鳥取大学医学部附属病院医療情報部/鳥取大学総合メディア基盤センター米子サブセンターの近藤博史氏は、「ペーパーレスとフィルムレスを実現する統合画像管理の有用性」と題して講演を行った。同院では、2003年から電子カルテと画像系システムを稼働させていたが、内視鏡、超音波などのDICOM接続されていない画像系、および署名捺印の必要な文書関係は除かれていた。そこで、2007年に署名捺印のある書類と残っていた紙カルテ等をスキャナで取り込み患者さんごとに一元管理するCentricity CDSを導入して、電子認証とスキャン・オーダを開始した。さらにCentericity PACS、および画像・レポート統合参照ポータルCentricity iDIRを導入して、院内のほぼすべての情報の電子化を実現した(図5)。こうした経験から近藤氏は、電子カルテと画像系を統合する際の重要なポイントとして、非DICOMデータや紙文書類の扱いを挙げ、その仕組みについて詳述した。

 画像を含む検体検査や心電図、内視鏡検査等や、キー画像やグラフを含むレポートではJPEGやXML、HTMLなど種々の形式が使用され、運用には独自のWebサーバが必要になる。そこで同院では、DICOM画像、非DICOM画像、レポートとスキャン画像の共通の出口となるポータルを用意し、さまざまな種類の画像データを統合した。紙文書類のスキャンについては、総務省が施行したe-文書法に則り、病歴室がスキャン・オーダによって一括して行っている。電子署名とタイムスタンプも1日に1回まとめて行うことで業務の効率化が図られ(図6)、経費の抑制にもつながった。また、情報が電子化されたことで、同院に1000台あるすべての端末からの参照が可能となった。

 さらに、業務をより効率化するための重要なポイントとして、Single Sign Onや参照ログの統一管理があるが、同院では中間サーバベースで情報を一元的に処理し、端末をシンクライアントとするSBC (Server Based Computing)を導入して対応している(図7)。その結果、業務の効率化はもとより、データの流出防止、ウイルス感染対策、端末管理の効率化が図れるようになった。また、クライアント端末の半分はシンクライアントPCを導入したが、残り半分は更新前のものを継続使用している。さらに、同院では新機能として、ICカードを利用し、別の端末からログインしても元の作業画面に瞬時に復元できる“ユーザーローミング機能”の開発も行っており(図8)、近藤氏は、実際の業務の様子を動画で示しながら、こうした機能の有用性を紹介した。

図5
図5
【画像をクリックすると拡大表示します 】


図6
図6
【画像をクリックすると拡大表示します 】


図7
図7
【画像をクリックすると拡大表示します 】



図8
図8
【画像をクリックすると拡大表示します 】

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*第12 回日本医療情報学会 春季学術大会 GE 横河メディカルシステム ランチョンセミナー
(2008年5月30 日)より抜粋

●お問い合わせ先
GE横河メディカルシステム株式会社
〒191-8503 東京都日野市旭が丘4-7-127 TEL 0120-202-021(カスタマー・コールセンター)
http://www.gehealthcare.co.jp