鳥取大学医学部附属病院医療情報部/鳥取大学総合メディア基盤センター米子サブセンターの近藤博史氏は、「ペーパーレスとフィルムレスを実現する統合画像管理の有用性」と題して講演を行った。同院では、2003年から電子カルテと画像系システムを稼働させていたが、内視鏡、超音波などのDICOM接続されていない画像系、および署名捺印の必要な文書関係は除かれていた。そこで、2007年に署名捺印のある書類と残っていた紙カルテ等をスキャナで取り込み患者さんごとに一元管理するCentricity CDSを導入して、電子認証とスキャン・オーダを開始した。さらにCentericity PACS、および画像・レポート統合参照ポータルCentricity iDIRを導入して、院内のほぼすべての情報の電子化を実現した(図5)。こうした経験から近藤氏は、電子カルテと画像系を統合する際の重要なポイントとして、非DICOMデータや紙文書類の扱いを挙げ、その仕組みについて詳述した。
画像を含む検体検査や心電図、内視鏡検査等や、キー画像やグラフを含むレポートではJPEGやXML、HTMLなど種々の形式が使用され、運用には独自のWebサーバが必要になる。そこで同院では、DICOM画像、非DICOM画像、レポートとスキャン画像の共通の出口となるポータルを用意し、さまざまな種類の画像データを統合した。紙文書類のスキャンについては、総務省が施行したe-文書法に則り、病歴室がスキャン・オーダによって一括して行っている。電子署名とタイムスタンプも1日に1回まとめて行うことで業務の効率化が図られ(図6)、経費の抑制にもつながった。また、情報が電子化されたことで、同院に1000台あるすべての端末からの参照が可能となった。
さらに、業務をより効率化するための重要なポイントとして、Single Sign Onや参照ログの統一管理があるが、同院では中間サーバベースで情報を一元的に処理し、端末をシンクライアントとするSBC (Server Based Computing)を導入して対応している(図7)。その結果、業務の効率化はもとより、データの流出防止、ウイルス感染対策、端末管理の効率化が図れるようになった。また、クライアント端末の半分はシンクライアントPCを導入したが、残り半分は更新前のものを継続使用している。さらに、同院では新機能として、ICカードを利用し、別の端末からログインしても元の作業画面に瞬時に復元できる“ユーザーローミング機能”の開発も行っており(図8)、近藤氏は、実際の業務の様子を動画で示しながら、こうした機能の有用性を紹介した。 |