非造影MRAのメリットには,造影剤の副作用がないこと,繰り返し撮像可能であること(描出が不十分でもパラメータを変えて再撮像できる),腎動脈など部位によっては造影よりも描出能が高いことなどがある。一方,デメリットとしては,撮像時間が長い,SNRが低い領域がある(最適なコイルの使い分けが必要),環流の評価が万能ではないということが挙げられ,特に環流の評価については動静脈分離に対する工夫が求められる。
非造影MRAのシーケンスは,(1)Flow Prep法,(2)IFIR(InFlow Inversion Recovery)法,(3)IR-IFIS(In-Flow-Iterative Spatial sat)法の3つが基本となる。Flow Prep法は,目的とする血管の最高血流速度に合わせてRFパルスを印加して目印をつけ,拡張期に撮像することで,動脈を選択的に描出する方法である。図1では,左の造影MRAの腎動脈では静脈が重なり合って評価しづらいが,右の非造影MRAでは末梢まで明瞭に描出されている。
IFIR法は,バックグラウンドと静脈の信号を落とすインバージョンパルスを印加し,その後にインフロー効果で動脈の血流を描出する方法である。選択性に優れ,撮像領域を限れば動脈,静脈を問わず描出できるほか,比較的高いSNRを得られることが特長である。血流が遅いと描出範囲がやや狭くなるという課題はあるが,図2ではFlow Prep法に比べて血管が末梢まで描出されている。また,右腎動脈起始部の狭窄も認められる。
IR-IFIS法は,IFIR法よりも描出範囲を広げる工夫がされている。間欠的にSpatial sat pulseを印加し,動脈血が飽和した状態でインバージョンパルスを与えると,バックグラウンドの組織や静脈は180°反転して信号が抑えられるが,動脈はその影響を受けずに信号が回復し始め,全体としては動脈の描出範囲が広がる。全体にやや信号が落ちるが,図3では,大動脈弓から鎖骨下動脈の形態は造影MRAと遜色なく,右腕頭動脈が若干拡張していることも確認できる。また,鎖骨下動脈から上腕動脈に移行する部分も造影,非造影ともに同様に描出されているなど,十分に臨床応用の可能性のある撮像法と言える。
非造影MRAは,さまざまな工夫をすることによって,ほぼ全身が評価できると考えられる(図4)。 |