高橋雅士准教授:最近、画像のみで難しい診断を列挙し、それで自己満足している若い先生が増えているように思います。画像の向こうには病気の患者さんがいて、その人の今後の治療方針などをどう進めていくかという、常に患者さんを念頭に置いた臨床的な画像診断の視点を持ち続けることが必要です。
高櫻竜太郎助教:ジェネラリストでありたいというのがポリシーです。ジェネラリストだからこそ力を発揮できるということが臨床の局面では数多くありますし、専門領域以外の症例もしっかりと見つけていくことが、われわれの役目だと考えています。
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滋賀医科大学医学部附属病院放射線科は、村田喜代史教授の下、約20人の放射線科医が診療を行っている。MDCT、MRI、ガンマカメラ、リニアック治療装置、小線源腔内照射装置などの最先端機器を有し、主な画像診断装置による年間の検査件数は、単純X線写真が約5万件、CTが約1万4000件、MRIが約7000件に上る。IVRでは、がんの血管塞栓療法や抗がん剤の動脈内注入療法、抗がん剤リザーバー留置術、血管拡張術などにも積極的に取り組むほか、放射線治療では、特に子宮頸がんの治療で、10MVライナック装置とマイクロセレクトロン装置による外部照射と腔内照射を組み合わせて治療効果の向上を図るなど、多くの診療実績を残している。また、CADによる肺結節のディテクションのリサーチをはじめとする基礎研究も活発に行われている。
“放射線科医は臨床医であれ”をモットーとする同放射線科では、IVRや放射線治療を通して患者さんとも積極的にかかわりながら、常に医師一人ひとりがジェネラリストとしての役割を果たすことを心がけて日常診療に取り組んでいる。MDCTの登場や機器の高機能化に伴って画像データ量が急激に増加し、それに対応するためにCTやMRIの読影のみが重要視される傾向もあるが、同院では単純X線写真の読影もすべて放射線科が行っている。このことについて村田教授は、「単純X線写真を読影することで、院内のほぼすべての症例を把握することができます。放射線科医がより多くの役割を果たすためにはとても大事なことです」と説明する。実際に、同院では放射線科医がカンファレンスなどで他科の医師から意見を求められることも多く、チーム医療の中心的存在になっていると言っても過言ではない。読影システムの発達や遠隔読影などによって、放射線科医のあり方が大きく変わってきている中、同放射線科はこうした基本姿勢を貫くことで、患者さんのための医療を実践している。
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