●岩手医科大学附属病院 住所:〒020-8505 岩手県盛岡市内丸19-1 TEL 019-651-5111(代) URL http://www.iwate-med.ac.jp/
●超高磁場MRI研究センター 住所:〒020-0173 岩手県岩手郡滝沢村滝沢字留が森348 番地65 TEL 019−694−1117 URL http://anatomy.iwate-med.ac.jp/Hitech/Main.htm (先端医療研究センター)
超高磁場MRI研究センター
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●井上 敬先生(脳神経外科) 超高磁場MRI研究センターでは、3T MRI(開設当初はGE社の3T MRI「SIGNA HORIZONE LX VH/i 3T」、現在は「Signa EXCITE HD」にアップグレード)を活用し、「神経損傷および老化のメカニズム解明」という大きなテーマの下、神経再生・変性についての研究を行う画像解析部門、治療法を検討する病理部門、病態を解明する生理部門の3つが研究を行っています。すでに1期目が終了し、2期目の研究が継続中です。 私自身は7年前の開設当初から画像解析部門での研究に携わっており、具体的には、脳出血の患者の予後予測を早期に行うために、機能を画像化する手法を用いた撮像(fMRS,DTI,MRSなど)を行っています。3T MRIでは、手足の神経の走行、神経断裂や神経圧迫などの様子がより高解像度に見えますので、麻痺の原因を判断することも可能で、発症後約1週間で8割程度の患者の予後が予測できるというデータが得られました。これにより、患者ごとにより適したリハビリを行うことができますので、臨床的にも非常に有用であると言えます。脳梗塞については、一度回復した患者の再発の確率と、高リスク患者については手術によって再発の確率が低減されるかどうかを調べるための研究を行っています。これは現在も続けられており、手術によって予後が改善する患者をより早期に判定しようというものです。脳梗塞を予知するための研究では、超高磁場装置の利点を生かして造影剤を使わずに脳血流を測定しています。また、脳腫瘍については、術前の撮像で中心溝や言語野などを同定して、より安全な手術を行うための研究を行っています。これらは今後も研究の柱となっていきます。 3T MRIについては、導入当初はさまざまな課題がありましたが、GE社の装置は世界で最も早く臨床応用され始めたこともあり、たくさんのノウハウがあります。GE社の技術者とは何度もディスカッションを重ね、われわれの要望についてもかなり反映してもらいました。改良も進んでおり、現在の「Signa EXCITE HD」は非常に良い装置になっていると思います。
●藤原俊朗先生(先端医療研究センター) 私は画像工学が専門分野ですので、医師とはまた別の視点で医療に役立つ画像の研究をしています。現在はビジュアリゼーションに特化したアプリケーション開発と、統計解析の2点に絞って研究を進めています。なかでも拡散強調画像(DWI)は、MRIの撮像法の中ではいまのところ唯一、神経線維の描出が可能です。近年、ファイバートラッキングという、三次元で脳内の神経線維を可視化する手法が注目を集めていますが、より客観的な評価ができるソフトウエアが開発できれば、例えば脳腫瘍の術前の評価では、神経線維がどのように圧迫されているかを見る、あるいは、より安全な手術を行うために重要な神経を同定する、といったことに役立つと考えています。また、さまざまな病態の術前診断に、拡散強調画像の統計処理が応用できるのではないかと考えています。 すでに開発ずみのアプリケーションとしては、脳の解剖構造を三次元表示した上に脳内の神経線維を重ね合わせて色分けしたカラーマップを、さまざまな断面から観察可能な"異方性カラーマップ(Tractography with Volume Color-coded map:TACVOC)法"があります。病変部と正常組織との境界部が把握しやすいので、脳腫瘍の術前の評価に有用だと思われますが、あくまでも研究用として開発したものですので、現在、臨床的有用性については検証中です。また、GE社とわれわれが共同開発したアプリケーションとして、"Volume Diffusion Imaging"があります。佐々木真理先生が2006年のRSNAで「Whole-Brain Volume Diffusion-weighted and Diffusion Tensor Imaging:Technique and Clinical Applications(全脳容積拡散強調・拡散テンソル画像:技術と臨床応用)」の演題で発表し、"Certificate of Merit"を受賞していますが、拡散強調画像で初めて全脳を高分解能で撮像できるようになりました。通常は3mmスライス厚程度で撮像しますが、"Volume Diffusion Imaging"では約1.6mm等方性ボクセルで撮像できます。頭蓋底部の画像の歪みや磁化率アーチファクトが大幅に軽減でき、冠状断面の画質が改善されます。 GE社とは、互いに1つの目標に向かってディスカッションを重ねながら共同開発を行っています。「Signa EXCITE HD」はシンプルな発想で開発されており、得られる画像も作り込まれたものではない点が、非常に良いと評価しています。
●高橋純子先生(神経内科) 神経内科の研究としては、主にアルツハイマー型の認知症やパーキンソン病などの脳の変性疾患、脳梗塞をはじめとする脳の血管障害について、週に2回、2〜4人の患者さんの撮像を行っています。例えばパーキンソン病の患者さんでは、脳幹の一部である黒質の神経細胞が病気の進行とともに脱落していくことがわかっています。これは、以前は解剖によってわかったのですが、3T MRIの神経メラニンイメージングでは、黒質ドーパミン神経細胞などの脱落や機能異常を無侵襲にとらえることが可能で、いままさに神経線維の脱落が起きようとしている患者さんの状態がわかりますので、進行度などが予測できるようになるのではないかと考えています。できるだけ正確な結果を得るために、現在はデータを蓄積しているところです。また、アルツハイマー病も徐々にメカニズムが解明されつつありますが、こちらも神経メラニンイメージングを応用して、脳のどの部位で特に強く神経細胞の脱落が起こり、どのように進行するのかを見ようとしています。
世界で唯一のTwin Gradientを搭載した「SIGNA EXCITE 3.0T」 2005年に日本で初めて薬事承認された3.0T MR「SIGNA EXCITE 3.0T」。世界で唯一の2組(Twin)の傾斜磁場システムを搭載することで、高傾斜磁場強度・高S/Nで、局所精査だけでなく、全身広範囲撮影が可能となった。3.0T装置でありながら、最新型1.5T装置とほぼ同サイズを実現している。