2024-11-18
ジェンスン・フアン氏は
Blackwellプラットフォームをアピール
エヌビディア(同)は2024年11月12日(火),13日(水)の2日間,「NVIDIA AI Summit Japan」を開催した。会場はザ・プリンス パークタワー東京(東京都港区)。プログラムは12日がワークショップ,13日がカンファレンスとなっており,50を超えるセッションが設けられた。また,展示会場には60社以上が出展。参加者数は2日間で3500人以上となり,現在のAIブームを牽引し,時価総額で世界首位を競うNVIDIAの勢いを感じさせた。
2日目の13日には,今回のメインセッションと言えるNVIDIA CEOのジェンスン・フアン氏による特別講演と,ソフトバンクグループ(株)代表取締役会長兼社長執行役員の孫 正義氏によるファイヤーサイドチャットが行われた。参加者の盛大な拍手で迎えられて登壇したフアン氏は,(株)セガのゲーム機にグラフィックチップが採用されたことが今日の発展につながっているとして,NVIDIAにとって日本は大切な国であると述べた。また,今後,国・地域,産業などでAIによる産業革命が起こると強調。これからのAIについて,ロボティクスに応用されるフィジカルAIと,AIエージェントなどのデジタルAIに大別して展望した。フアン氏は,日本がロボティクスの分野において優れた技術を持っており,フィジカルAIの発展に重要な存在になると指摘した。さらに,AIエージェントについては,医療分野での応用事例を紹介。すでに,日本企業の医療機器にAIが搭載されていると述べた上で,AIエージェントが医療機器の中で機能することにより,医療者の業務を効率化して,医師の診断を支援するようになると説明した。また,フアン氏は,2024年3月に発表した次世代チップ「Blackwell」を披露した。Blackwellは,生成AIの開発・運用に最適化されており,従来のチップから大幅に高速化された演算処理能力と高効率のエネルギー消費を実現しており,AIによる産業革命を加速させるものである。フアン氏は,これらを説明した上で,AIを活用した産業革命を推進して日本をリセットすると訴えた。
NVIDIAは同日,ソフトバンクとの協業を発表。携帯電話基地局にBlackwell採用のGPU搭載サーバを整備してAI-RANによるAIグリッドを構築し,AIスーパーコンピュータとして機能させることでAIによる産業革命を加速していくとアナウンスした。特別講演後に行われたファイヤーサイドチャットでフアン氏と孫氏は,日本独自のAIの開発・活用に向けて連携していくことをアピールした。
日本におけるAIの現状については,13日に,東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻/人工物工学研究センター教授の松尾 豊氏が,「日本の生成 AI 現在地と未来 〜 今知っておくべきこととは 〜」をテーマに講演した。この中で松尾氏は,医療分野の生成AIの活用促進施策の方向性として,(1)電子カルテなどの医療関連データの形式や規格を自動で成形,(2)レセプト計算や文書作成の自動化および医療現場と研究開発などの横断的データ活用,の2つを挙げた。そして,医療の大規模言語モデル(LLM)について,工数を要する電子カルテのフォーマット変換を高速かつ正確に行えるようになると説明。異なるシステムやデータベースを簡単に接続できるようになることで医療情報の活用が進み,国を挙げて進められている医療DXにも貢献すると述べた。その上で,内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)として取り組まれているLLMなどの開発プロジェクトを紹介した。
NVIDIA AI Summit Japanでは,このほかにも医療にかかわるセッションが複数用意された。このうち,13日に,NVIDIAのヘルスケア,バイスプレジデント/ゼネラルマネージャーのキンバリー・パウエル氏が,「Generative AI and Robotics Are Accelerating Healthcare 4.0, From AI Assistants to Autonomous Agents」をテーマに講演した。パウエル氏は,AIによる産業革命の中でも,医療などのヘルスケアは最も重要な分野であると述べた上で,医療におけるAI活用は患者や医療者の負担を軽減するとし,生成AIによるデジタルデバイス,ロボティクス,創薬に対するNVIDIAのアプローチを紹介した。NVIDIAは,ヘルスケア分野向けに「NVIDIA Clara」プラットフォームを用意し医用画像処理のための「NVIDIA MONAI」や,医療機器にAIアプリケーションを搭載するための「NVIDIA Holoscan」などを提供していると説明。このような技術でロボティクス化などが進み,医療の質と効率性の向上に寄与してきたと述べた。そして,日本の医療機器メーカーはAIを搭載した製品開発を加速することで,さらに成長できるとの可能性を示唆した。さらに,今後は生成AIを活用していくことで,個別化医療を実現し,患者ごとに最適なケアが提供できるようになると強調した。
パウエル氏の紹介した日本の医療機器メーカーの取り組みについては,13日に,「AIが加速する医療イノベーションの軌跡と社会イノベーションの未来」と題して,富士フイルムビジネスイノベーション(株)取締役常務執行役員CTOの鍋田敏之氏が講演した。富士フイルムグループでは,医療機器,医療情報システムへのAI搭載を進めており,2025年度の売り上げ目標である7000億円のうち,AI搭載医療機器やIT関連の売り上げを5000億円にするという計画がある。そのための技術のベースにあるのが世界シェア1位のPACS「SYNAPSE」で,そこで培った画像技術をAIの開発に生かしている。鍋田氏は,今後の成長戦略として,AIなどを用いた高付加価値の製品により「モノ」から「モノ+コト」へ価値提供へ変換して,従来の延長線上にない製品の創出から疾患別新規事業を展開し,さらにパッケージサービスとして提供して,メンテナンスなどのネットワークサービスも行っていく「唯一無二の医療バリューチェーン」を形成すると述べた。その上で,AIを用いた手術支援ロボットとの連携,健診センター「NURA」の展開について説明。このような医療での展開を富士フイルムグループのほかの事業領域にも広げていく戦略を示した。
医療分野にAI活用が広がっていく中で,NVIDIAはこれまでその基盤となる技術を提供してきた。AIによって産業革命を起こすというNVIDIAの医療における存在感は,今後ますます高まっていくだろう。
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エヌビディア合同会社
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