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日本マイクロソフトが生成AI活用による医療DXをアピール 
記者説明会でHITO病院の導入事例などを紹介

2024-8-13

HITO病院の生成AI導入事例などを紹介

HITO病院の生成AI導入事例などを紹介

日本マイクロソフト(株)は2024年7月24日(水),本社(東京都品川区)において,記者説明会を開催した。この中で,ヘルスケアにおける生成AIなどの事業展開について説明したほか,医療機関での導入事例などを紹介した。同社は近年,ヘルスケア領域おける事業を強化している。特に「Microsoft Azure」のクラウドビジネスの売り上げが堅調に伸びており,3年間で74%増。売り上げ比率は50%から75%へと拡大した。ほかの売り上げについても,AI関連が3倍,セキュリティ関連が2倍となっている。
記者説明会では,まず執行役員常務パブリックセクター事業本部長の佐藤亮太氏が,「地球上のすべての個人とすべての組織がより多くのことを達成できるようにする」というマイクロソフトのミッションを説明。さらに,パブリックセクター事業本部のミッションである「誰一人取り残されない日本のデジタル社会の実現を通じて,より豊かな未来につながる『かけはし』となる」を紹介した。このミッションに基づき,課題に合わせた最適なDXアプローチの提案,組織文化の変革支援,信頼して使える最新のテクノロジーの提供を進めているという。パブリックセクター事業本部にはヘルスケア統括本部が設けられており,医療機関や製薬企業などにソリューションを提供している。

佐藤亮太 氏(執行役員常務パブリックセクター事業本部長)

佐藤亮太 氏
(執行役員常務パブリックセクター事業本部長)

 

同部を率いる業務執行役員ヘルスケア統括本部長の大山訓弘氏も登壇し,事業内容を説明した。同社はヘルスケア領域において,「患者さんに寄り添い,AIトランスフォーメーションを通じて持続可能なヘルスケア社会の実現を目指します」をミッションに掲げている。このミッションの下に,早期発見,病気の予測,治療の個別化,薬の特定,遺伝子治療といったプレシジョン医療を進めるために,AIやPHR,ゲノミクスの統合的な連携/分析のプラットフォームを提供し,プレシジョン医療と医療の質の均てん化の実現に向けて取り組んでいる。大山氏はこれらを説明した上で,医療機関や製薬企業,医療情報システム企業などとのパートナーシップを紹介。さらに,米国で発表した医療に特化したAIモデル「GigaPath」を取り上げ,マルチモーダルのがん診断について解説した。また,大山氏は,医療における生成AIについて,記録補助,患者サービス,事務,研究での活用のシナリオを提示したほか,国内医療機関における「Azure Open AI Service」「Copilot for Microsoft 365」の導入例を取り上げ,Copilot for Microsoft 365による当直表の作成を見本として示した。さらに,大山氏は,生成AIが健康・医療データの相互運用性を実現させると説明。医師の診断メモを生成AIを用いてHL7 FHIRで扱えるように自動変換する事例を示した。

大山訓弘 氏(業務執行役員ヘルスケア統括本部長)

大山訓弘 氏
(業務執行役員ヘルスケア統括本部長)

 

医療機関や製薬企業などヘルスケア領域の導入実績は豊富

医療機関や製薬企業などヘルスケア領域の導入実績は豊富

 

ヘルスケア領域のパートナー企業も多数

ヘルスケア領域のパートナー企業も多数

 

診療記録など生成AIのシナリオ

診療記録など生成AIのシナリオ

 

Azure Open AI ServiceとCopilot for Microsoft 365の国内導入事例

Azure Open AI ServiceとCopilot for Microsoft 365の国内導入事例

 

さらに,同社のユーザー事例として,愛媛県にあるHITO病院の取り組みが紹介された。同院DX推進室CTO/脳神経外科部長の篠原直樹氏が「HITO病院における生成AI活用シナリオ」をテーマに発表した。篠原氏は,人材不足と変化が激しい予測不能な時代を乗り切るためには,連携と知能拡張が必要だと述べた。そして,連携を図るために「Microsoft Teams」を活用した院内コミュニケーションを充実させ,さらに知能拡張のために,生成AIを用いた「Microsoft Copilot」と「Copilot for Microsoft 365を」導入したと説明。活用事例として,患者対応チャットボットや外国人スタッフのための自動翻訳,サマリや議事録などの自動生成,医療教育支援などを挙げた。さらに,生成AIによる業務負担の可視化への取り組みとして,データ分析ツールである「Microsoft Fabric」による業務分析を開始したことを紹介した。その上で,篠原氏は,医療機関が生成AIを活用するための検討事項として,コストや用途,使用権限などを挙げた。また,生成AIの導入に当たっては,事務職や若手の医療職から先に進めるのが良いとし,活用することで心理的安全性が高まり,自分らしさを拡張すると説明。生成AIの導入の目的は業務の効率化ではなく,障壁を破壊し想像を超える未来をつくることだと述べた。まとめとして篠原氏は,医療機関には持続可能性を確保するために生成AI活用推進の戦略が求められていると強調した。

篠原直樹 氏(HITO院DX推進室CTO/脳神経外科部長)

篠原直樹 氏
(HITO院DX推進室CTO/脳神経外科部長)

 

HITO病院が導入したMicrosoft Fabric

HITO病院が導入したMicrosoft Fabric

 

マイクロソフトは2024年4月10日,生成AIの需要拡大などに対応するために,日本市場に2年間で4400億円を投資することを発表しており,医療などのヘルスケア領域でも積極的に事業を展開している。医療DXが進む中で,AIやクラウドといった重要な技術を持つマイクロソフトの存在感が高まっていくだろう。

 

●問い合わせ先
日本マイクロソフト株式会社
https://www.microsoft.com/ja-jp