2024-3-19
瀧口登志夫氏(代表取締役社長)
キヤノンメディカルシステムズ(株)は,2024年3月12日(火)〜14日(木)の3日間,「Advanced Imaging Seminar 2024」をオンラインで開催した。例年春に開催される本セミナーでは,同社製品の最新技術と臨床応用が各分野のエキスパートから報告される。今回は,12日に企画講演とHealthcare IT,13日にMRI,14日にCTのセッションが行われ,計10名の演者が講演した。
冒頭の挨拶で,同社代表取締役社長の瀧口登志夫氏は,臨床価値の向上,オペレーションシステムの効率化,医療経済や病院経営の健全化などの実現に向けたイノベーションの創出に取り組んでいると言及。特に,臨床価値を向上するものとして,高解像・高精度な画質の実現を挙げた。また,今年4月から開始される医師の働き方改革に触れ,人工知能(AI)を活用したソリューションを提供することで診断や読影の効率化に貢献していくと述べた。
企画講演では,隈丸加奈子氏(順天堂大学医学部放射線診断学講座)が,「知っておきたい! 診療報酬改定の動向と医師の働き方改革」と題して講演した。診療報酬改定の流れや予算決定のプロセスを知ることは,医療現場の声を行政に届ける上で有益であるとし,診療報酬改定の基本構造や令和6(2024)年度の改定のポイントを概説した。また,働き方改革については,今年4月から始まる制度について概説した上で,地域に必要とされる医療を守り続けるためには,医療現場で働く全員が考え実践していくことが不可欠であると述べた。
Healthcare IT Sessionは,座長を小林泰之氏(聖マリアンナ医科大学大学院医療情報処理技術応用研究分野)が務め,2名の演者が講演した。
森本 毅氏(同大学放射線診断・IVR学講座)は,「CTの経時差分を用いた骨転移診断支援の使用経験」と題し,同社の骨の経時差分処理アプリケーションである「Temporal Subtraction For Bone(TSB)」の有用性を報告した。骨転移の診断においてTSBを利用することで,病変の見逃し防止や,初期段階で発見できる可能性,治療効果判定を含めた全体的な変化の把握,などを挙げ,読影業務の負担軽減への期待を示した。
真鍋徳子氏(自治医科大学総合医学第1講座放射線科)は,「心臓の多面的アプローチ:可視化して定量化する」と題して講演した。MRIによる心筋ストレイン解析は,従来,追加の撮像が必要となるため検査時間が延長することが課題となっていた。一方,同社の画像解析ワークステーション「Vitrea」ではFeature Tracking法の採用により,通常のシネMRIを用いたストレイン解析が短時間で容易に行えるとし,実際の活用例を多数提示した。
MRI Sessionは,座長を阿部 修氏(東京大学大学院医学系研究科生体物理医学専攻放射線医学講座放射線診断学分野)が務め,3名の演者が講演した。
植田高弘氏(藤田医科大学医学部放射線診断学)は,「超解像技術PIQEの臨床応用と女性骨盤領域における可能性」と題して,PIQEがもたらす高精細画像の女性骨盤領域における利点を述べた。PIQEを適用することで正常解剖や病変部がより詳細に評価可能となり,診断能が向上することや,撮像時間の短縮,アーチファクトの低減,ワークフローの改善などが得られることを多数の症例を踏まえて報告。検査の安定性向上が期待できるとまとめた。
大田英揮氏(東北大学病院メディカルITセンター/放射線診断科)は,「心血管領域における超解像技術PIQE初期経験」を報告した。PIQEを適用可能なシーケンスのうち,心血管系に用いるTrueSSFP2D(シネ),FFE2D(2D遅延造影,緩和マッピング),PS3D(4D-Flow)を取り上げ,それぞれの撮像における利点を詳述。PIQEを用いて低解像度画像を高解像度化することで,診断能の向上,撮像時間の短縮,定量値の改善などの効果が得られ,心臓検査ワークフローの改善が期待されると述べた。
山本麻子氏(帝京大学医学部放射線科学講座)は,「骨軟部領域における超解像技術PIQEの初期経験と将来性」と題して講演した。骨軟部領域は解剖が細かく,非ルーチンの撮像が求められることが多いなど特殊な領域であるが,PIQEを用いることで微小な解剖や病変部の詳細な描出が可能となったと述べた。その上で,PIQEをはじめとするディープラーニング再構成法の進歩によって,従来はトレードオフの関係にあった分解能,撮像時間,シーケンス数の三者いずれも諦めない時代が近づきつつあるとの見解を示した。
CT Sessionは,前半2演題の座長を木暮陽介氏(順天堂大学医学部附属順天堂医院放射線部)が,後半2演題の座長を吉満研吾氏(福岡大学医学部放射線医学教室)が務め,4名の演者が講演した。
山口 仰氏(北海道大学病院医療技術部放射線部門)は,「Aquilion ONE / INSIGHT Editionの初期使用経験」と題し,2023年11月に販売開始されたArea Detector CT(ADCT)の新フラッグシップモデルである「Aquilion ONE / INSIGHT Edition」の特長やファントムによる検討の結果などを,症例を踏まえて報告した。コンソールが一新され,AIを活用した自動化技術「INSTINX」が搭載されたほか,新型検出器・新型X線管の採用,ガントリ回転速度の向上(最速0.24秒),PIQEの適用領域の拡大(従来のPIQE Cardiacに加え,PIQE Bodyが使用できる)などを達成している。これらによって,シンプルかつ直感的な操作性や,ワークフローの効率化,撮影の高速化,画質向上,被ばく低減などを実現していると述べた。
芳賀喜裕氏(仙台厚生病院放射線部)は,「Aquilion ONE / INSIGHT Editionの循環器領域への技術進展」と題して講演した。INSTINXによる優れたワークフローや,最速0.24秒の高速なガントリ回転速度,PIQEによる画質改善など,Aquilion ONE / INSIGHT Editionの多くの利点が,心臓CT検査のワークフローの改善や画質改善に効果を発揮していると述べた。特に,PIQEを用いることで,3mm以下の細径ステントの内腔や高度石灰化の描出能も向上しており,今後,経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)術前のリスク管理などへの臨床応用の広がりも期待できると述べた。
鈴木耕次郎氏(愛知医科大学医学部放射線医学講座)は,「Aquilion ONE / INSIGHT Edition—超解像技術が導く腹部領域のCT画像診断」と題して講演した。Aquilion ONE / INSIGHT Editionでは,管電圧は70kV,管電流は最大1400mAまで出力可能なほか,PIQEが腹部領域に適用されたため,腎機能低下例に対する低管電圧・低造影剤量での造影CT検査に適した装置であると述べ,ファントム検証の結果や実際の症例を提示した。また,通常の造影剤量であれば,70kVでは120kVの2倍の造影効果が得られることから,造影効果の増強を目的とした使用も可能であると述べた。
大野良治氏(藤田医科大学医学部放射線診断学)は,「Aquilion ONE / INSIGHT Edition—胸部画像診断における高精細ADCTへの期待」と題し,胸部領域におけるPIQEを用いた高精細画像の有用性と,ディープラーニングを応用した最新のモーションアーチファクト低減技術「CLEAR Motion」について報告した。PIQEでは,新たに胸部領域用の「PIQE Lung」が使用可能となり,特に1024マトリックスの再構成では微細な構造を詳細に評価可能となった。また,CLEAR MotionはPIQEなどの画質改善技術とも併用可能であり,診断精度の向上や再撮像による無駄な被ばくの低減に寄与する技術であると述べた。
●問い合わせ先
キヤノンメディカルシステムズ株式会社
広報室
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